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[MOM3509]FC東京U-18GK彼島優(3年)_帰ってきた青赤の絶対的守護神は、完全復活の“さらに上”を見据える

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FC東京U-18の絶対的守護神、GK彼島優

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.26 プレミアリーグEAST第8節 FC東京U-18 1-0 浦和ユース 武蔵野苑]

 不思議な安心感を漂わせる男だ。気持ちが前面にほとばしるタイプではないし、常に大声を張り上げるようなタイプでもないが、最後にボールはこのゴールキーパーの懐に収まっている。「正直復帰してから、自分の中では戻っていると思っていたんですけど、今から振り返ってみると、まだ開幕当初はパフォーマンスが上がり切ってなかったのかなと。最近ようやく自信を持ってプレーができ始めていますけど、去年の出来に戻ったぐらいじゃダメなので、さらに上を目指して頑張っていきたいです」。FC東京U-18(東京)の守護神、GK彼島優(3年=FC東京U-15深川出身)は完全復活の“さらに上”を、既に見据えている。

 なかなかリーグ戦の勝利が得られない中で、迎えた浦和レッズユース(埼玉)と対戦するホームゲーム。両者が慎重に立ち上がる中、彼島もほとんど守備機会のないまま、前半の45分間は終了する。それでも、「相手の決定機も少なかったですけど、前半はもうちょっと裏のボールの対応や、クロスの対応を意識してできたのかなとは思っていました」と課題を抽出したことが、後半の好パフォーマンスに繋がっていく。

 後半10分。浦和ユースの左右に揺さぶるアタックから、この日初めての枠内シュートが飛んでくる。弾いたボールを再び相手に収められたが、素早く寄せると完璧なシュートブロック。凄まじい反応でピンチを脱してみせる。

「1本目はキャッチミスだったんですけど、正直『終わった』と思った中で、いかに速くボールまでの距離を潰して、自分の身体に当てられるかを意識しました。ミスしてしまったのは仕方ないので、その次にいかに失点しないようにするかで、セカンドプレーのスピードは良かったと思うんですけど、1回でキャッチできるように、そこは反省していきたいと思います」。ある意味で“自作自演”ではあったものの、セカンドアクションの速さは、やはりこの世代屈指のゴールキーパーであることを証明していた。

 16分。味方のミスをきっかけにカウンターを食らい、自らの左サイドからグラウンダーのクロスを流し込まれると、彼島は果敢に飛び出し、相手と接触しながらボールを弾き出す。「前半はクロスに対してもうちょっと自分がギラギラしていた方が良かったなと考えていて、あそこのシーンはクロスが来るとわかっていたので、自分が出る準備をして、ボールを出された瞬間にはもう相手も飛び込んでくると思っていたんですけど、自分が出て守ることができて良かったです」。結果的にFC東京U-18の決勝ゴールが生まれたのは20分。彼島が披露した6分間での連続ファインセーブが、勝利の呼び水になったことは間違いない。

 最近は山崎倫(大宮アルディージャU18)や岸本悠将(帝京高)、宇田川瑛琉と宇田川侑潤(ともに堀越高)など、レジスタFC時代のチームメイトの活躍が目立っていることもあり、その姿も刺激になっているという。「嬉しいですし、自分ももっとみんなを焦らせるというか、そういう形での結果を残していきたいと思っています」。中でも同じポジションで切磋琢磨してきた岸本は、彼島にとっても意識する存在だ。

「普通にサッカー以外でも仲が良くて、去年の自粛期間中も一緒に練習していました。イギョラ杯の決勝でも、彼が出ていてスーパーセーブするのも見て『凄いな』と感じましたし、『もっと自分も頑張らなきゃな』と思いました。『負けてられないな』と」。戦うステージは違っても、さらなる飛躍を誓い合う仲間がいることは、日々の自分をより前進させるエネルギーになっている。

 昨年末のクラブユース選手権では、大会中に負ったケガの影響で、準決勝と決勝を欠場。チームも準優勝に終わったため、そのリベンジの気持ちももちろん携えている。「夏にはクラブユースがあるので、もう1個自分たちが成長して、チームで良い結果を残せるようにしていきたいと思います。個人としてはトップに昇格するのも目標ですし、自分の力でチームを勝たせることを目標にして、頑張っていきたいです」。

 試合中にも時折こぼす笑顔と、信じられないぐらい獰猛なゴールキーピングのギャップは、この男の凄味を増幅させる。彼島が最後尾から醸し出す存在感は、青赤が誇る最後の砦として、圧倒的に頼もしい。

(取材・文 土屋雅史)
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