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小学校3年生から憧れていたチームのキャプテンに。修徳DF木野将太郎が貫くチーム愛と覚悟の変化

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小さい頃から憧れていた修徳高のキャプテンを務めるDF木野将太郎

[9.12 高円宮杯東京2部リーグ第9節 東海大高輪台高 0-2 修徳高]

 小学校3年生から憧れ続けたチームのユニフォームに袖を通しているからには、やるべきこともおのずと決まってくる。「小さい頃からずっと見ていたチームで、“ファン”みたいな感じですし、修徳に対して僕はそういう想いがあるので。やはり修徳に関わっている方々への恩返しをしたいという想いは強いですね」。

 修徳高の熱烈な“ファン”であり、今年のキャプテン。DF木野将太郎(3年=守谷市守谷中出身)が抱えるチーム愛は、様々な経験を経た今だからこそ、きっとこのグループにポジティブな影響をもたらしていくはずだ。

 実は一度、キャプテンを“剥奪”された時期があったという。「今年のTリーグは最初から(三菱)養和のBチームに引き分けて、インターハイも負けていく中で、駒澤(大学高)のBチームに負けた後に、自分はチームが良くなればいいなと思った行動が、良い方向にならなくて、1回キャプテンを外された時がありました」。

 考える。とにかく考える。そして、自分なりの答えはまとまった。「改めて『キャプテンをやるってどういうことなんだろう?』『自分がチームにできることは何なんだろう?』と。その中で“やってる感”というのがあったんじゃないかなって。最後の最後に出てくる強い力というのは、ちゃんと自分たちで付けた自信だとか、練習からできていたことから出ると思うので、そこは自分が気付かされた部分でした」。

「自分たちもたとえばコロナ明けの練習の時は、『気持ちを前面に出そう』と言って凄く声を出したりしていて、それはもちろん必要なことですけど、『それだけでは上手くならないよね』と。『じゃあもう1回ちゃんと考えようよ』という話をして、みんなで少しずつそういう部分に気付いてきたという感じですね」。

 自主的に考えて、自主的に行動する。それは試合前のウォーミングアップにも反映されている。「アップで声を出して雰囲気を良くするということはもちろん大事なんですけど、アップ自体は自分の身体の調子や、その日のコンディションをしっかり高めて試合に向かうというのが本質なので、やっぱりキャプテンとしても声の出し方には工夫が必要かなと思ったんです」。

 練習中の雰囲気作りにも、少し発想の転換を図ってきた。「たとえば勇気を持ってドリブルにチャレンジして、それで失敗した選手に対しては、『何やってるんだよ』じゃなくて、『ナイスチャレンジ』と声を掛けるとか、そういう雰囲気作りは今年に入って意識していますし、そこはみんなも感じ取って、練習から良い雰囲気でやれている部分もあって、監督が締めるところは締めてくれますし、自分たちも気持ちを共有して試合に向かっている部分はあります」。ポジティブなチャレンジには、ポジティブな声掛けを。効果は確実に見え始めている。

 修徳のサッカーを初めて見たのは、小学校3年生の時。選手権で全国大会に出場したチームの選手たちが、キラキラと輝いて見えた。5歳年上の兄も修徳のサッカー部に入っており、当然その応援にも駆け付けていた。

「小さい頃からずっと見ていて、修徳のファンみたいな感じなので、修徳の特徴は本当にわかっていると思います。試合前に気持ちを高めるために都大会決勝の映像を見たりしています(笑)」。全国ベスト8まで躍進した第92回大会の高校選手権。都大会の決勝で成立学園高と激しく撃ち合い、延長の末に4-3で修徳が勝った“伝説の試合”はディテールまで思い出せる。

 だからこそ、自分が為すべきことも十分過ぎるほどに理解している。「まさか自分が本当に修徳に行って、キャプテンになるなんて思っていなかったので、その恩返しをしたいんです。修徳も今は古豪と呼ばれていますけど、『強い修徳を取り戻したい』というか、『強い修徳が帰ってきたな』というような想いをいろいろな人に感じてもらいたいですし、最後にしっかり爪痕を残せるように、チームとしてももう1つ、2つぐらい大きくなって、選手権で全国大会に行ければなと思います」。

 あるいは、その強い想いのままに突っ走っていたかもしれない。だが、一度立ち止まって考えたことは、間違いなくプラスに働いている。憧れ続けた修徳のキャプテンとして。大切な仲間たちと一歩ずつ進んできた木野の大いなる挑戦は、ここからいよいよ最後のフェーズへ突入していく。

(取材・文 土屋雅史)

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