[10.10 プレミアリーグEAST第14節 大宮U18 0-1 青森山田高 所沢航空記念公園運動場(人工芝)]

　懐かしい顔ぶれが居並ぶ相手を前にして、絶対に負けたくないという想いが心の中で大きく燃える。自分の決断の正しさを証明するためにも、今日ばかりはみなぎる気合を隠せない。「もっと成長するために青森を選んだので、そこで技術はもちろんですけど、メンタル面やフィジカル面は今日もアピールできたんじゃないかなと思います」。

　全国レベルのタレントを擁する青森山田高(青森)にあって、唯一の2年生レギュラー。DF多久島良紀(2年=大宮アルディージャU15出身)は“古巣対決”に勝利した瞬間、気付けば両手を高々と突き上げていた。

　大宮アルディージャU18(埼玉)と対峙する、プレミアリーグEAST第14節のアウェイゲーム。多久島はスケジュールが決まった時から、このゲームを楽しみにしていた。小学生時代はアルディージャジュニアでキャプテンを務め、そのまま昇格したジュニアユースで3年間プレー。相手には昔からの顔なじみが揃っている。

「センターバックの小澤とか、フォワードの前澤とか、ボランチの阿部とか、ほぼみんなと仲が良いですね」と笑顔で語る多久島にとって、とりわけMF阿部来誠(2年)とFW前澤拓城(2年)はジュニア時代から同じグラウンドで切磋琢磨してきた仲間。意識しない方が難しい。

「ホームもギリギリで勝って、今日も1点ゲームになるということは自分としても予測していました」と語ったように、ホームで戦った第5節の試合は1-0で青森山田が辛勝。それまで圧倒的な攻撃力を誇ってきたチームが、大宮U18の徹底した対策に苦しみ、何とか勝ち点3を奪い取ったゲームであり、そのイメージはもちろん頭の中に残っていた。

　この日も大宮U18は、やはりいつもの試合よりも長いボールを交えながら、青森山田に向かってくる。だが、前期の試合を経験していたこともあって、相手の戦い方もある程度は予測済み。「試合前からアップダウンを徹底するというところは出ていましたし、前半から相手も背後に蹴ってくる形が多かったので、そこで良い対応ができたんじゃないかなと思います」。1つずつ、丁寧に、攻撃を跳ね返していく。

　終盤はセットプレーの脅威にさらされながらも、終わってみればホームと同様に1-0で勝ち点3を獲得。「キツかったですね。90分ゲームをあまりしていなかったので、体力的にキツかったですけど、そこでチームとして何ができるかというのが山田として求められていることなので、最後にゼロで終われたということは良かったと思います」。試合終了の瞬間。満面の笑みを浮かべながら、自身にとって特別な一戦に勝利した歓喜を、チームメイトと共有した。

　事前に少しだけ、“元チームメイト”たちとは連絡を取っていたという。「お互いに『負けねえぞ』みたいな連絡は取りました。あとは戦略みたいなことを聞いて、『オマエら何してくるんだ?』って。向こうは嘘をついていました(笑)」。試合後は観戦に訪れた大宮U18の保護者の方々からも声を掛けられ、選手たちとは談笑しながら記念撮影に興じる一幕も。高校生らしい笑顔で、旧友たちと親交を深めていた。

　ここからはタイトルの懸かった、よりシビアな試合が続く。それでも、もう不動のレギュラーとして、そのプレッシャーをかい潜りながら、戦い抜く決意は固まっている。「インターハイ、プレミア、選手権と自分たちは三冠を目指していて、インターハイは優勝したので、次はプレミアということで、プレミアは本当にレベルが高いと思いますし、そんな中でチーム一丸となって勝ちたいと思っています。選手権はインターハイよりもっと相手から分析もされてきて、厳しい戦いになると思うので、その中で自分たちがどれだけ崩せるかを目指して、これから頑張っていきたいです」。

　自らが選んだ道で出会ってきた、数多くの戦友が自分を支えてくれる。多久島の大いなる挑戦は、これからも大切な仲間に見守られながら、一歩ずつ、確実に前へと進んでいく。

(取材・文　土屋雅史)

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