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遅れてきた新・左サイドバックはチーム屈指のムードメーカー。青森山田MF小野暉がチームの行く先を明るく照らす

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青森山田高の新・左サイドバック、MF小野暉

[12.12 プレミアリーグEAST第12節 横浜FCユース 0-4 青森山田高 横浜FC・LEOCトレーニングセンター]

 複雑な想いがないと言ったら、嘘になる。チームメイトの負傷離脱を受けて、巡ってきた試合出場の機会。本職ではないポジションでのプレーに、まだ正解を探りながらピッチに立っていることも否めない。でも、もう覚悟は定まった。自分にできることを、自分の色を出しながら、全力で。

「本来であればサイドハーフで出たかった気持ちはありますけど、3年目でやっと来た試合に出るチャンスなので、そこに対する想いはありますね。慣れないポジションをやっていて、多久島(良紀)も(大戸)太陽も活動できていない中で、自分と中山(竜之介)がうまくチームにフィットできるようにやることが第一ですし、別にあの2人と同じことをするわけではないので、自分たちの色を出して、チームにどう貢献できるかを考えてプレーしています」。

 笑顔でそう語れる、その明るさも大きな武器。青森山田高(青森)の新・左サイドバック。MF小野暉(3年=青森山田中出身)は極めて前向きに、置かれている状況と真摯に向き合っている。

「もともとサイドハーフなので前への推進力はあるし、『ここは出る』という場面と、抑えなくてはいけない場面の使い分けと、出た時に仕事をして帰ってくれないと、裏返しでやられる可能性もあるので、最初の1試合2試合はそこが目立ったんだけど、だいぶ自分の中でコントロールできるようになったかなと思います」。

 黒田剛監督はこの日の左サイドバックについて、こう言及した。不動のレギュラーだった右のDF大戸太陽(3年)、左のDF多久島良紀(2年)と両サイドバックが負傷離脱。以降は一貫して小野がスタメンに起用されている。リーグ優勝が懸かった横浜FCユース(神奈川)とのアウェイゲーム。この一戦もスタメンリストには小野の名前が書き込まれた。

「サイドハーフとサイドバックは全然違うので、それが少しずつわかってきましたね」。もともとは得意の左足を生かした、アグレッシブな左サイドハーフが本職。だが、これで5試合続けて左サイドバックとして公式戦のピッチに送り込まれた小野は、徐々にではあるものの自分の中で攻守の折り合いを付けつつある。

「自分はサイドハーフの時にクリアというものをほとんどしていなくて、その難しさはありますけど、後ろから自分のスピードを生かした攻撃参加はやれてきていると思います」。自身の右から来るボールに対して、左利きだけにクリアの体勢が取りにくいという面はあったが、試合を重ねるにつれて割り切ったプレーも増えてきた。

 イメージしている左サイドバック像は、プロへと進んだ“先輩”だ。「去年のサイドバックは速すぎたので(笑)、同じことはできないですけど、自分は左利きなのでピンポイントのクロスはポールさんより上手く上げられると思いますし、そういう結果でチームに貢献できたらなと思います」。タビナス・ポール・ビスマルク(現・いわてグルージャ盛岡)の名前を出しつつ、自身の特徴をサラッとアピールするあたりも頼もしい。

 チームメイトも小野へ要求するが、もちろん小野もチームメイトに要求する。そこに妥協は一切ない。「このチームの良いところは言い合えることで、自分たちの意見をぶつけ合って、お互いに良くしていこうという中で、最終的にみんなの勝ちたい気持ちが強いからそうなってしまうので、だからこそ強さが出てくるんだと思います。やんちゃなヤツが多いですし、みんな結構私生活では抜けているんですけど(笑)、勝負になったらやっぱり1つの芯があるので、そこはやりやすいですね」。

 青森県出身の小野にとって、青森山田でプレーすることの意味は誰よりもよく理解している。中学時代から緑のユニフォームに袖を通してきた6年間の集大成。試合に出られるかどうかとか、ポジションがどこかとか、そういうことよりも、もっと大事な目標がある。

「山田中の1年の頃から、自分は選手権が一番の目標だったので、今は自分がスタメンで出ているのは凄く光栄ですし、今後もスタメンかどうかはまだ不安定ではありますけど、自分たちの代は力があるので、全力を出し切って、プレミア以上に選手権では点差を付けて圧倒して、最終的には優勝して終われたらなと思っています」。

 遅れてきた新・左サイドバック。チーム屈指のムードメーカーが、その持ち前のポジティブさで、青森山田の進むべき道を明るく照らし始めている。



(取材・文 土屋雅史)
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