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[MOM4122]名古屋U-18FW遠山湧斗(3年)_チームを象徴する献身のストライカーが6年分の想いを乗せた魂の決勝弾!

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劇的な決勝ゴールを叩き出した名古屋グランパスU-18FW遠山湧斗

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.26 高円宮杯プレミアリーグWEST第21節 神戸U-18 1-2 名古屋U-18 いぶきの森球技場 Cグラウンド(人工芝)]

 とにかく必死だった。時間がもうほとんどないのはわかっている。チャンスはあと1回あるかないか。その瞬間を逃さないように、神経を最大限に研ぎ澄ませる。その瞬間が来ることを、信じて、願って。

「もう『頼むから入ってくれ』と思っていて、強く振ったからああやって前に転がりましたし、強気なプレーがゴールに結び付いたので、決まった瞬間はメチャメチャ嬉しかったです」。

 そのゴールが決まった瞬間。今シーズンの名古屋グランパスU-18(愛知)を象徴するハードワーカー、FW遠山湧斗(3年=名古屋グランパスU-15出身)は気付けばサポーターの元へと走り出していた。

 残り2試合となった今シーズンのプレミアリーグ。名古屋U-18は13戦無敗の2位・ヴィッセル神戸U-18とのアウェイゲームに挑む。好調の続く相手との対戦だが、彼らも後半戦は十分に調子を上げてきていた。「ちょうど今日のミーティングで話していたのは、後半戦の順位を直近10試合で計算して出していったら、神戸さんが7勝3分けの1位で、僕らが6勝2分け2敗の2位なんですよね」(古賀聡監督)。

 遠山もチームが前進している確かな手応えを感じていた。「前期のあの苦しい夏の時期だったり、連敗して勝てなかった時期に、あれだけオールコートでオールタイムで、アクションとプレスという、本当に走ることを諦めずに信じ続けて、やり続けた結果、この涼しくなってきた終盤の時期に、そういう力を全員が出せていることが、今のチームの強みだと思うので、そこで自分たちのストロングが出せていることが勝てている要因かなと思います」。

 この試合も前半8分に先制されたものの、後半が進むにつれて全体のエネルギーとパワーが、ベンチの的確な交代策にも後押しされてどんどん膨れ上がっていく。DF小嶋健聖(3年)の果敢な攻撃参加で奪ったPKを、DF西凜誓(3年)が確実に沈めて同点に。そして、その時は後半のアディショナルタイムに訪れる。

 45+1分。セカンドボールの奪い合いから、巧みに前を向いた遠山は冷静に状況を見極める。「最初はターンした時にサイドの健聖に散らそうと思ったんですけど、駿吾に出して自分で行けるなと思ったので」、FW杉浦駿吾(1年)に当てたボールを自ら呼び込むと右足一閃。必死に伸ばしたマーカーの足に当たったボールは、少し軌道を変えながらゴールへゆっくりと飛び込んでいく。

「今シーズンは点を獲ってもベンチに行くことが多くて、サポーターのところに初めて行ったので、それもメチャメチャ気持ち良かったです」。少なくない数が詰めかけたピッチサイドの赤いサポーターに届けた歓喜。献身のストライカーがチームの勝ち点3獲得に、ゴールという最高の結果で貢献してみせた。



 試合後。古賀監督は遠山に対して、こう言及している。「彼は今年のチームの象徴なんです。本当にオールコートで、オールタイムで、プレスとアクションすることを体現していて、彼がいるからこそ説得力を持つというか、周りの選手もやらなきゃいけないと感化されていると。下級生と面談をやっても、影響を受けている選手を聞くと、『自分もああなりたい』と遠山の名前が必ず出てきますので、なかなか前半戦は点が獲れなかったんですけど、後半戦はどんどん大事なところで彼が決められるようになって、本当に逞しさを感じます」。

 その言葉を伝え聞いた遠山の言葉も印象深い。「常に高い基準を示し続けて、自分の成長のために、チームを前進させるために頑張っているだけなので、それが少しでも響いてくれたらメチャメチャ嬉しいです。自分にとっては去年の(真鍋)隼虎くんの存在が本当に大きくて、まだ全然及んでいないんですけど、『自分もあれぐらいの選手にならないといけないな』ということはずっと思っていますし、神谷(悠介)がケガをしたことで、アイツの分まで自分が頑張らないといけないので、そういう強い気持ちが自分を前進させているのかなと思います」。シーズン前に掲げた『All court all time ACTION, All court all time PRESS』。このスローガンをあらゆる意味で最も体現しているのが、この9番のストライカーだ。

 ジュニアユースから6年間、このエンブレムを胸に戦ってきた時間のかけがえのなさに、今だからこそ気付いたこともある。「自分の目標をブラさずに、本当に信じ続けて、やり続けるという気持ちの部分も、それに見合う努力の大切さも、古賀さんがいろいろな形で示してくれているので、そこから学ぶことが凄く多くて、そういうことに自分で気付いてやっていけば、チームに良い影響を及ぼせるということを学びました。人としても選手としても、このグランパスというクラブで過ごした6年間で凄く成長できたなと思います」。

「自分たちは頂点を目指すことを掲げてきて、それは叶わなくなりましたけど、少しでも上の順位を狙い続けることと、後輩たちに少しでも良い実績を残してあげることが使命だと思うので、来週が最終節ですけど、全員で勝って終わりたいです。それにやっぱり自分もあの豊田スタジアムの満員の観客の中でプレーすることが夢なので、それを叶えるためにも大学で努力をしっかり4年間積んで、このクラブに戻って来たいと思います」。

 愛と献身のストライカー。遠山のひたむきな姿勢がもたらしてきたエネルギーは、間違いなくこのクラブのアカデミーに、これからもポジティブな影響を与え続けていくはずだ。



(取材・文 土屋雅史)
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