beacon

[MOM4220]東京VユースFW白井亮丞(2年)_圧巻の2ゴール1アシスト!緑のストライカーが東京制覇を力強く引き寄せる

このエントリーをはてなブックマークに追加

力強く先制ゴールを奪った東京ヴェルディユースFW白井亮丞

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[2.23 東京都CY U-17選手権決勝 三菱養和ユース 1-3 東京Vユース 西が丘]

 それはまるで決意表明のような90分間だった。右足で1点。ヘディングで1点。さらに、スーパーな胸トラップから華麗なアシスト。チームの全得点に絡み、勝利と優勝を引き寄せたストライカーは、もう今シーズンの主役を張る気満々だ。

「去年は3年生がチームを引っ張ってくれて、僕はフォワードとして自分にできることを一生懸命やろうと思っていたんですけど、今年は自分が3年になるので、チームを引っ張ることもやりつつ、もっと成長していきたいと思っています」。

 東京ヴェルディユースの9番を背負う新エース。FW白井亮丞(2年=東京ヴェルディジュニアユース出身)にとって勝負の1年は、最高の形で幕を開けている。

 チームは立ち上がりから苦しんでいた。東京都クラブユースサッカーU-17選手権大会決勝。三菱養和SCユースと対峙した東京Vユースは、相手の勢いに押しこまれる時間が続く。「ヴェルディとしてはボールを保持したかったんですけど、ミスが多くて、パスがズレたり浮いたりして、相手のプレッシャーも速かったですし、そこで全然前に行けなかったです」と口にした最前線の白井にも、ほとんどボールは届かない。

 だが、一瞬の隙を見逃さないのがストライカー。前半17分。予測はできていた。「大久保があの角度で持ったらあそこに走るということは練習からやっていたので、何回かそれでチャンスができると思っていました」。後方からのパスがMF大久保祐希(2年)へ入る前に走り出すと、その大久保からDFラインの裏へ絶妙なダイレクトパスが放たれる。

「ちょっとヘディングでのワンタッチ目が大きくなってしまって、『ヤバいな』と思ったんですけど、結果的には良い感じの距離感でした」。飛び出したGKの鼻先で、右足でつついたボールはゴールネットへ転がり込む。まずは1ゴール。

 前半のうちに追い付かれたチームは、後半もなかなか流れを掴めない。それでも、何度も迎えたピンチを守備陣が身体を張って防ぐと、延長突入の気配も漂い始めた終盤に、再び9番が輝く。

 後半41分。中央をMF仲山獅恩(中学3年)がドリブルで切り裂き、右サイドへ展開。MF川村楽人(1年)がパスを受けると、白井の頭の中には“ターゲット”への道筋が明確に浮かび上がる。「楽人が縦は突破してくれるなと思っていたので、ニアに走る味方も見えて、自分はファーで浮いた球を待とうと考えました」。

 すべてはイメージ通り。川村が縦へと突破を図り、そのまま右足でクロス。ファーサイドで宙を舞い、高い打点から頭で打ち下ろしたボールは、左スミのゴールネットへ弾み込む。軌道を見届けた白井は、そのままピッチサイドで待つチームメイトの元へ。エースのこの試合2点目で、東京Vユースは勝ち越しに成功する。

 それだけでは終わらなかった。45+1分。DF栗原大(2年)が自陣から蹴り込んだFKを呼び込んだ白井には、瞬時にチャレンジしたいプレーが思い付く。「あれは胸トラがしたくて(笑)、やってやろうと思って。前に酒井宏樹選手の胸トラップを見たことがあって、『凄い胸トラがあるんだな』と思ってやりたかったのと(笑)、選手権で福田師王選手の胸トラもテレビで見て、自分もできたらいいなって」。

 高めのボールを完璧な胸トラップで収めると、DFラインの裏に潜ったMF千葉サニー大生(1年)へチップキックでラストパスを通す。「真ん中にサニーが入ってくるのが見えましたし、パスコースが空いていたので、浮かそうと思ったらうまくいって良かったです。アレは良いプレーでしたね(笑)」。

 千葉がきっちり沈め、白井にはアシストが付く。終わってみれば2ゴール1アシストと、チームが奪った全得点に絡む大車輪の活躍。「少ないチャンスで点が獲れて良かったです」と笑ったストライカーは、チームの優勝という栄冠に加えて、大会MVPも獲得。エースの重責をパーフェクトに果たしてみせた。

 既に去年から9番を背負い、最前線で存在感を発揮してきたが、アカデミーでのラストイヤーとなる2023年には、今まで以上に強い決意と覚悟を持って臨んでいる。だからこそ、まずはチームの結果が出たことが重要。「FC東京とか三菱養和もいる大会で優勝できたので、自信を持ってこれからプレーできると思います」と胸を張る姿が頼もしい。

 参考にしているのは、「何でもできて、点も獲れる選手になりたいから」という理由でバルセロナのレバンドフスキ。そのプレースタイルを見れば納得の人選。成し遂げたい目標も、シンプルで、明確だ。「今年はもう個人としてもとにかく成長して、チームとしてタイトルを獲りたいと思っています」。

 今シーズンからチームを率いる薮田光教監督も、エースへの期待を隠さない。「チームのどこで個人の優位性があるかというところで、亮丞は前で勝てる1つのポイントだと思うので、よりそこを自分たちは生かしていくという部分で彼を使っているところもありますし、どんどんボールをよこして、難しいボールでもトラップしなくてはいけないとか、難しい状況でもターンしてシュートまで持っていくとか、そういうところにはもちろん僕も期待しています」。

 東京Vユースの最前線にそびえ立つ、しなやかなストライカー。さらなる復権を期す緑の名門の未来は、白井が自らのゴールで切り拓く。



(取材・文 土屋雅史)

TOP