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飛躍の一年を経て3月に岡山内定。飯塚DF藤井葉大は「海外で戦っていける」左SBへ

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ファジアーノ岡山への加入が内定した飯塚高DF藤井葉大

 飯塚高(福岡)のDF藤井葉大(3年)が過ごしたこの一年間は、まさにシンデレラストーリーだ。高校入学時はアタッカーだったが、昨年のチームが立ち上がったタイミングで身体能力の高さを買われて、左サイドバックにコンバート。転向直後に日本サッカー協会関係者の目に留まり、3月にU-16日本代表候補に初めて選ばれると、10月にはヨルダンで開催されたAFC U17アジアカップバーレーン2023予選のピッチにも立った。

 12月には自身初の全国大会となる選手権にも出場し、一気に注目度が高まった彼をプロが見逃すわけもなく、今年3月20日、早くから追いかけていたファジアーノ岡山への加入が内定した。転機となったコンバートから1年弱でのプロ入りとあり、「ある程度はプロになれるのかなとは思っていたけど、正直こんな早くなるとは思わなかった」と笑う。

 内定後、初の公式戦となったプリンスリーグ九州2部の開幕戦(4月2日)・佐賀東高(佐賀)との一戦でも随所でプロ内定選手としての違いを感じさせた。「ここ2年、飯塚は開幕戦で勝てずにいた。プリンスリーグに上がった大事な年の開幕戦というのもあって正直、チーム全体が硬かった」と本人は振り返るが、守備では持ち味である対人の強さを発揮。その強さは、マッチアップした佐賀東のMF宮川昇太(3年)が「藤井選手に何もさせて貰えなかった」と舌を巻くほどだった。

 守備を重視した前半はオーバーラップを控えていたが、後半は「チャンスがあったら、どんどん上がっていきたいなと思っていた」。タイミングを見て、左を駆け上がってクロスを入れつつ、試合終盤には相手ゴール前まで駆け上がったシュートを放つなど、もう一つの売りであるアタッカー出身ならではの攻撃力を見せた。

「チームの事を一番に考えている子なので、今日は自分を発揮する所がまだまだだったけど、徐々に良くなっていくんじゃないかと思います」。飯塚・中辻喜敬監督が口にする通り、良さを存分に出し切れたとは言えないが、潜在能力の高さを改めて感じさせる一戦だった。

 いち早くプロを経験したのは良い刺激になっている。2月には岡山のキャンプに参加し、練習試合にも出場。本職である左SBではなく、3バックの左としてもプレーした際に、DFラインを一緒に組んだのは、DF濱田水輝だった。「水輝さんには後ろたくさんコーチングしてもらい、自分にも『どんどん要求して欲しい』と言って貰えた。それに応えようとしっかり声を出せたし、コーチングも一つの武器だと学べたので、凄く良い経験になりました。これまでも声は大事だと思いながら、大事な所で出せば良いでしょ?ぐらいの感覚だったけど、プロの世界で十何年やっていくには、そういうのも必要なんだと気付けた」。

 最初は初めてのプロの世界に緊張していた藤井を、多くの選手が温かく迎え入れてくれたのも嬉しかったという。「自分自身、しっかり良いプレーができたと思えたし、周りからの評価も高かった。比較的若い選手を起用するのがチームコンセプトなのも惹かれ、ここなら自分が活躍できる環境があると思った」。J1の複数クラブも獲得に興味を示し、練習参加の予定もあったが、「早く進路を決めれば、より高い所を目指してやれる」と早期のプロ入りを決断したという。

 コンバートから異例の早さでプロまで駆け上がったが、「今年はもっとハングリーにやっていきたい。自分の中ではまだまだ足りない」とギラギラしているのも、彼の良さである。「内田(篤人)選手や長友(佑都)選手みたいに日本人でも、SBでしっかり海外で戦っていけるような選手になりたい」と意気込む藤井のストーリーはまだ序章にすぎない。

(取材・文 森田将義)

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