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「もう一度、広島へ」「プレミアに上がる」。富士市立に逆転勝ちの浜松開誠館がプリンスリーグ東海2位浮上

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後半34分、浜松開誠館高FW田中脩が決勝点

[9.2 高円宮杯プリンスリーグ東海第10節 富士市立高 1-2 浜松開誠館高 富士市立高校G]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2023 東海は2日、第10節を行い、浜松開誠館高(静岡)が2-1で富士市立高(静岡)に逆転勝ちした。

 プレミアリーグ初昇格を狙う浜松開誠館が、2位へ浮上した。U-17日本高校選抜のDF八巻涼真主将(3年)は、「今回の試合に向けて、試合に入る前の準備の段階が負ける雰囲気で試合に臨んでいた」と首を振る。前半はやるべきことが曖昧になってしまい、空いたスペースを活用されてしまうシーンも。序盤のチャンスで決められなかったこともあり、主導権を握られてしまった。

 富士市立は、攻守両面で存在感を放つMF内木璃斗主将(3年)や4人に囲まれてもボールをキープするCB高橋伊吹(3年)、MF栗田勘太郎(3年)らが距離感良くボールを繋ぎ、抜群のスピードと推進力を見せるFW山崎絢心(1年)やFW佐々木英貴(3年)が相手の背後を狙った。

 浜松開誠館は1年生MF川合亜門の左足CKから得点ランキング首位タイのFW菅原太一(3年)が決定的なヘッド。また、高精度のフィードが光る八巻の縦パスで菅原が抜け出し、右足シュートが右ポストをかすめた。

 そして、前線のアタッカーたちが鋭いドリブルを連発。だが、富士市立はともに落ち着いて守る高橋、CB望月優誠(3年)の両DFが最後の局面で相手を封じ、その配球で押し返す。29分には縦パスを受けた内木が、展開を警戒した相手の意表を突くスルーパス。これで佐々木が右中間を抜け出し、左足シュートをニアへ決めて先制した。

 浜松開誠館は、青嶋文明監督が「今年どうしてもブレイクさせたい子なので。タフに走れるし、凄く素直で良い子なので活躍させたいですね」と期待するFW田中脩(2年)がドリブル、クロスでチャンスメーク。富士市立も敵陣での奪い返しから佐々木のミドルシュートが枠を捉えたが、浜松開誠館の1年生GK吉田壮馬が反応し、追加点を許さない。

 浜松開誠館は前半のうちにピッチ内で修正することができなかった。それでもハーフタイムに改善。青嶋監督が「秋のことを考えると、きちっと圧力をかける戦い方をしなければいけない」というように後半は1タッチでの縦パス、クロスなどダイナミックな攻撃で相手にプレッシャーをかける。

 迫力のある攻撃でチャンスを作るも、1点が遠かった。それでも、19分、川合のキープからMF森下太陽(2年)が左サイド後方からストレートのクロスボール。これを菅原が頭で合わせて同点に追いついた。

 浜松開誠館はこの日、成長株の森下が随所で守備能力の高さを発揮するなど存在感。中盤で相手の前に立ちはだかり、精度も示して見せる。また、パートナーの1年生MF川合も今夏磨いたという強度の高さで幾度もマイボールに変えていた。富士市立は21分、山崎が強引にゴール前へ潜り込み、決定的な右足シュート。だが、浜松開誠館GK吉田がわずかに触れて阻止する。

 富士市立は、杉山秀幸監督も「久々の試合でしたけれど、面白かったですね。(攻撃で特長を出し、後ろの選手も)良く我慢してやっていたと思う」という好内容のゲームに。いずれもテクニカルな10番MF渡邉奈那斗(3年)、MF伊藤隼磨(2年)が加わった後半も技術力を活かした攻撃で相手ゴールに迫っていた。だが、粘り強く守ることを強化ポイントの一つとして取り組んできた浜松開誠館は、DF陣のゴールを隠す守りやシュートブロックで決定打を打たせない。

 迎えた後半34分、浜松開誠館は中盤での奪い返しから速攻。左サイドからドリブルで仕掛けた田中がPKを獲得する。これを自ら右足で決めて2-1。川合がクロスバー直撃のヘッドを放つなど攻め続けていた浜松開誠館が逆転に成功した。

 富士市立もセットプレーなどからゴールへ迫り、45+1分には佐々木が左サイドを突破。ラストパスに山崎が飛び込んだが、枠を捉えることができない。対して、終盤に八巻が抜群の高さを発揮し、交代選手たちも良く走り続けていた浜松開誠館がそのまま逃げ切り、2-1で勝利。苦しい展開だったことは確かだが、プレミアリーグ昇格へ向けて大きな勝点3獲得となった。

 八巻は「去年、(プレミアリーグプレーオフ)1回戦勝って昌平に0-2で負けて、『もう一回、(プレミアリーグプレーオフ開催地の)広島に行こう』と、そういう方針でやっているので、とにかく結果を出してプレミアに行けるようにしたいです」という。

 浜松開誠館は12年に参入したプリンスリーグ東海で2度の2位、2度の3位など安定した成績を続け、昨年に初優勝を果たした。“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグへ昇格することは、今年の大目標になっている。今季は前半戦で苦戦。インターハイ予選は準々決勝で敗れ、昨冬の選手権に続く全国大会出場を逃した。

 それでも、この日は「春は力尽きていた」(青嶋監督)という展開で我慢強く戦い、逆転勝利。攻撃の時間、決定機を増やすこと、失点を減らすことに取り組んできた成果も発揮した。ただし、満足感はない。八巻は「参入戦というよりもプレミアに上がることを目標にして、今日の試合が終わってまた今から来週の試合へスタートしているので、もうひとつふたつ日常を見直して、良い流れで次の試合に臨めたらなと思います」。今年は広島で勝ち抜くことが目標。そのために毎試合の準備、日常からこだわって勝ち続ける。

(取材・文 吉田太郎)
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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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