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[MOM4445]青森山田高DF山本虎(3年)_「2人分や3人分の役割を果たさないといけない」覚悟を定める絶対的キャプテンが大一番で先制弾!

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先制ゴールでチームに勢いを付けた青森山田高の絶対的キャプテン、DF山本虎(3年=青森山田中出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.8 高円宮杯プレミアリーグEAST第17節 青森山田高 2-1 川崎F U-18 青森山田高校グラウンド]

 託されているのは青森山田のキャプテンだ。プレッシャーがないわけがない。でも、もう引き受けたからには、やるしかない。誰よりも自らが奮い立ち、誰よりも周囲を奮い立たせ、目の前の勝利を確実に手にするための120パーセントを、いつだって迸らせてきた。

「うまく行っていない仲間の選手にどう声掛けするか、元気がない時にどうチームを盛り上げるか、苦しい状況でどう点を獲るかという、仲間を助けるような部分でも、1人分ではなくて、2人分や3人分の役割を果たさないといけないなと思っていたので、今日はチームを助ける1点が獲れましたし、ゴール前でも粘り強く守備ができたのかなと思います」。

 勝利を義務付けられている常勝軍団の頼れるリーダー。青森山田高(青森)のキャプテンを務めるDF山本虎(3年=青森山田中出身)が見せた攻守に渡る躍動が、大一番での白星を力強く引き寄せた。

 川崎フロンターレU-18(神奈川)をホームで迎え撃つ首位攻防戦。この試合の意味は山本も十分に理解していた。「この1週間はフロンターレに勝つために準備してきましたし、フロンターレは1試合少ないですけど、今日勝てば勝ち点が4離れるということで、優勝に向けても絶対に負けられない試合でした」。

 いきなり見せたのは得点感覚だ。前半4分。右サイドで青森山田が奪ったCK。MF芝田玲(3年)が蹴ったボールの軌道を、「芝田のボールは凄く良いところに上がってくる」と信じて飛び込んだ背番号4は柔らかく捻じ曲げる。

「もうちょっと前に来ると思っていたんですけど、思ったよりマイナス気味に低いボールが来たので、強いヘディングというよりは良いところに当てて、コースを狙えば入ると思いました」。

 ボールがゴールネットへ吸い込まれたのを見届けると、そのまま山本はゴール裏に陣取っていた応援の部員の元へと、笑顔で走り寄る。「相手がエンドを変えてくれて、前半はみんなが攻めるゴールの後ろにいたので、一緒に喜べて良かったです」。キャプテンの先制弾。ホームチームは早々に1点をリードする。



 26分にはDF菅澤凱(3年)が追加点をゲット。「点数は2点しか入らなかったですけど、前半は今までで一番良い前半だったかなと思います」と山本も胸を張る内容で、前半を2-0で折り返したが、川崎F U-18もこのまま終わるチームではない。後半11分にはセットプレーからゴールを奪われ、たちまち点差は1点に。ここでキャプテンの檄が飛ぶ。「1点返された時は、チーム的にも少し沈んでしまうところもあると思いましたけど、相手に何もさせないでこのまま行けば勝てるのは僕たちだったので、『焦れないで守備の強度を上げろ』とは話しました」。

 左右に揺さぶられても、連携や個人技で剥がされても、下がらない。ゴールを隠し、ボールへアタックし続ける。「相手は自分たちより技術が高いということはわかっていましたし、押し込まれる時間帯は絶対あると思ったので、そこで山田の守備の『ペナルティエリアの中で守備をしない』というところで、ラインを常に高く上げながらできたのは凄く良かったと思います」。山本が、DF小泉佳絃(3年)が、DF小沼蒼珠(2年)が、DF菅澤凱(3年)が、必死に高いラインを保ち、目の前の相手には気迫剝き出しで襲い掛かる。

 タイムアップのホイッスルが山本の耳に届く。スコアボードの数字は、2-1。「試合前から本当に全員の『勝つ!』という気持ちが凄かったので、相手より球際や1対1で勝つというメンタルの勝負で勝てたところが、一番の勝利の要因かなと思います」。

「先週の試合で(小林)拓斗と(津島)巧がケガをしてしまって、ケガ人も多い中で総力戦で戦うというところで、スタメンの選手も、サブの選手も、プリンスに出ている選手も、1人1人が責任を持って戦えたので、誰かがいないなんてことは関係ない試合ができたからこそ勝てたのかなと思いますし、後半も試合に出られない仲間が自分の後ろから応援してくれて、この青森山田ファミリー全員で勝てたのが凄く良かったと思います」。キャプテンは何より“ファミリー”全員の一体感が嬉しかったのだ。

 痺れる戦いはまだまだ続く。次節は暫定2位の尚志高と激突。気の抜けない試合が次々とやってくるが、山本の言葉に不安や慢心の類はまったく滲まない。「首位攻防戦で勝てたのは凄く自分たちの大きな自信に繋がったのかなと思います。でも、フロンターレ、尚志、市船と10月は強い相手ばかりとやることも覚悟して練習をやってきているので、ここでフロンターレに勝ったことで満足せずに、過信せずに、良い準備をして、尚志と市船も倒したいなと思います」。

 まだリーグ戦開幕前の3月。キャプテンに就任したばかりの山本が話していた言葉を思い出す。「もちろんチームが勝つためにやるのもそうですけど、試合や練習でも『自分がミスしたら失点する』ぐらいの気持ちでやっているので、『チームの中で自分が一番やるんだ』という覚悟を持ってやりたいです。高校に入ってからはずっとケガが多くて、去年も結果を出せなかった分、今年はキャプテンでもあるので、チームとしても結果を出さないといけない1年間だと思っています」。

 もう覚悟なんてとっくに定まっている。青森山田の絶対的キャプテン。山本虎は仲間と勝利を喜び合うためなら、2人分でも、3人分でも、自分にできる限りの役割をこれからも担い続ける。



(取材・文 土屋雅史) 
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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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