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[MOM4443]横浜FMユースGK鈴木魁(1年)_この16歳、只者ではない。冷静沈着な1年生守護神が好守連発で勝ち点獲得に貢献!

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横浜F・マリノスユースの新守護神、GK鈴木魁(1年=横浜F・マリノスジュニアユース出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.7 高円宮杯プレミアリーグEAST第17節 横浜FMユース 1-1 大宮U18 横浜国立大学フットボール場]

 まさに冷静沈着。足元へ出されたバックパスを、事も無げに浮き球でサイドに開いたチームメイトへ通してみせたかと思えば、1対1の決定的なピンチも躊躇なく飛び出して、確実にファインセーブで凌いでしまう。そのプレーぶりは、とても16歳の高校1年生とは思えない。

「試合に出られていない人たちの分も責任感を持って、軽いプレーをしないで、自分ができることを全力でやって、毎試合毎試合悔いが残らないようにしたいですし、とりあえず先のことは考えずに、1試合1試合全力でやって、勝ち点を積み上げたいと思います」。

 ハイクオリティな守護神の輩出に定評のある、横浜F・マリノスユース(神奈川)の最新モデル。GK鈴木魁(1年=横浜F・マリノスジュニアユース出身)はプレミアリーグの舞台で経験を積み重ねることで、自身を進化させ続けている。

「もう前半の20分過ぎに『今日はキツい試合になるな』と思っていました」という大熊裕司監督の予感は的中する。大宮アルディージャU18(埼玉)を迎え撃つホームゲームに臨んだ横浜FMユースは、セットプレーから先制こそしたものの、それを良い流れに繋げ切れない。そんな中で躍動したのが、31番を背負った1年生守護神だ。

 まずは先制直後の11分。最終ラインでのボールロストから、右サイドを抜け出されたものの、鈴木は鋭い読みで飛び出すと、ドリブルが大きくなった瞬間に相手の足元へ飛び込み、ボールを奪い取ってしまう。「あの時は味方の持ち方的に『ちょっと失う可能性もあるんじゃないかな』という予測があって、相手のタッチがちょっと大きくなったのを見て、ボールを取れたので良かったと思います」。つまりは起き得る“未来”を予測していたというわけだ。

 31分にも左サイドからドリブルで仕掛けた相手と1対1の局面を迎えたが、周囲の状況はしっかりと把握できていたという。「アレは相手が右利きで、あまり角度もなかったので、とりあえず正対して、しっかり構えて対応できたので、冷静に止められたのかなと思います」。打たれたシュートをきっちりと弾き出し、ピンチを回避してみせる。

 以降も攻め込まれる時間が続く中で、光ったのはハイボールへの正確な対応だ。「試合前に大宮が結構蹴ってくるとか、クロスが多いということは聞いていて、僕も練習からクロスの対応も練習してきたので、キーパーコーチとも『自分の強みを出せたらいいね』と話していましたし、そこは自信を持って出たいなと思っていて、実際に結構出られたのは良かったです」。広い守備範囲で、相手のフィードやクロスの軌道を1つずつ丁寧に折っていく姿がとにかく頼もしい。

 後半に入って1点は奪われたものの、鈴木は以降の相手のラッシュも、ディフェンス陣と協力して1つ1つ凌いでいく。「個人的には本当は勝ちたかったですけど、どうにかディフェンス全員で守り切れましたし、後半の流れを考えるとギリギリで耐えられたんじゃないかなと思います」。ファイナルスコアは1-1。最低限ではあるものの、勝ち点1を手にしたトリコロールの中でも、1年生守護神が果たした役割は絶大だったと言っていいだろう。

 とにかく落ち着いている。その印象はプレミアデビュー戦となった、5月の第8節・流通経済大柏高戦から一貫して変わっていない。「昔はメッチャ緊張するタイプで、ジュニアユースの頃は普通に試合前も緊張していたんですけどね」と話しながら、「たぶん自分のプレーに少し自信が付いてきてから、落ち着いてできるようになりました。だから、流経戦も周りからは『緊張してるだろ』とか言われたんですけど、自分的には今まで通りのプレーができましたし、そんなに緊張しなかったですね」と続けるあたりに大物感も滲む。

 だからと言って、過信のようなものが漂う雰囲気は微塵もない。「先輩のみんなからは『試合中は上下関係はないから、コーチングの時も“くん”付けとかしないで、強く言っていいよ』みたいな感じで言われているので、そこは先輩のおかげでやりやすいですね」と笑う表情は、ごくごく普通の16歳のそれで微笑ましい。

 そんなGKの先輩たちと切磋琢磨する日々が、自身の成長をより促してくれることも、よく理解している。「みんなそれぞれ特徴があって、ダイビングや横っ飛びのセービングが上手い選手にはコツを聞いたりしますし、どっちかがプレーしているときは、それを後ろから見てアドバイスしたりしているので、それで結構改善できたり、上手くなったりしている感じがします」。それゆえにGK陣を代表して試合に出ている自覚は、試合を追うごとに高まっている。

 ここからの個人としての目標も明確。静かな口調ながら、言葉に込めた想いは力強い。「個人としてはまずはチームのためにやることと、そういう経験を自分の成長に繋げたいと思っています。だから、自分で行くと決めたら迷わずに行けるように、どんどんチャレンジしていきたいと思います」。

 若きトリコロールのゴールマウスを1年生で託される選手が、只者であるはずがない。鈴木魁がここからさらに伸ばしていく成長曲線、要注目。



(取材・文 土屋雅史) 
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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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