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後半45分からの2得点で昌平とドロー。重圧の中で勝つこと、プレミアの難しさを実感した青森山田は最終節でEAST制覇に再挑戦

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後半45+2分、青森山田高左SB小沼蒼珠が左足で同点ゴール

[11.26 高円宮杯プレミアリーグEAST第21節 昌平高 2-2 青森山田高 昌平高G]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 EASTは26日、第21節2日目を行い、勝てば優勝の決まる首位・青森山田高(青森)がアウェーで昌平高(埼玉)と対戦。0-2の後半45分から交代出場MF後藤礼智(3年)と左SB小沼蒼珠(2年)が連続ゴールを決め、2-2で引き分けた。青森山田と2位・川崎F U-18(神奈川)、3位・尚志高(福島)との勝点差は2。12月3日の最終節・FC東京U-18戦で勝てば、自力での優勝が決まる。

青森山田高の先発イレブン

昌平高の先発イレブン

「このリーグで優勝するのが簡単じゃないと選手も十分理解したし、まだ我々にはもう一回チャンスがあるので、同じような失敗をしないようにしたい」。試合後、控室でミーティングを終えた青森山田の正木昌宣監督はそう語った。

 青森山田は2016年以降のプレミアリーグEASTで3度優勝。だが、勝てば優勝の決まる今節へ向けた一週間は、これまでの日常と違ったようだ。指揮官は事あるごとに選手たちに言葉を掛けていたというが、非常にマジメな世代の選手たちは見えない重圧を払拭できないままキックオフを迎えていた。

「硬かったですね。前半の45分なんて何をしていたのか。シーンとしていた」(正木監督)という状況。U-17日本代表CB山本虎主将(3年)やMF菅澤凱(3年)の声に他の選手がなかなか呼応せず、自分のプレーで精一杯になってしまっていた。

 菅澤は「元気ないというのは確かですし、みんな優勝したいという気持ちはあると思うんですけれども、そこで自分がやってやるという自分の方になってしまってチームのために戦えていなかったのは事実だと思う」と振り返る。

 昌平を押し込んではいたものの、試合開始から攻守で相手を飲み込む青森山田らしさが十分に発揮できないまま時間は経過。サイドを崩してチャンスを作っていたものの、シュートシーンで力みすぎてヒットせず、また相手GK佐々木智太郎(2年)のファインセーブに阻まれるなど1点が遠い。

 MF谷川勇獅(2年)の怪我に伴い、これまでの左SBからボランチに入っている菅澤が守備範囲広くプレー。MF大谷湊斗(2年)とMF 長準喜(3年)の技巧派2人をボランチに並べる昌平にボールを繋がれ、スルーパスまで持ち込まれていたが、菅澤や小沼のカバーリングで阻止していた。

 昌平も目の前で優勝させる訳にはいかない。大谷が守備面でもセンスを発揮し、ゲーム主将のCB佐怒賀大門(3年)が再三インターセプト。安易なクリアを選択せずにボールを繋いで主導権を握り返そうとする。26分には、右サイドから仕掛け、MF工藤聖太郎(3年)のラストパスがゴール前のMF土谷飛雅(3年)へ通る。また44分には長、工藤と繋ぎ、FW小田晄平(3年)が左足でフィニッシュ。球際でも怯まず、首位チームと渡り合って見せた。

青森山田の10番MF芝田玲は特別な思いを持ってピッチに

 後半、「元気の無さが気になった」という正木監督から檄を受けた青森山田がギアを上げる。かつて昌平の育成組織であるFC LAVIDAでプレーし、この日気合十分だった10番MF芝田玲(3年)のFKや小沼のロングスロー、サイド攻撃からゴールへ迫る。13分には、昌平にとって嫌な存在になり続けていたMF杉本英誉(3年)の右クロスに得点ランキング2位のFW米谷壮史(3年)が反応。だが、決定機な右足ボレーは昌平GK佐々木に阻まれた。

 青森山田は米谷のヘッドなどゴール前のシーンを連発。一方の昌平は後半、シュートを全く打てないまま30分以上を過ごしていた。だが、ゴール前でのカバーリング、シュートブロックなど守備意識高く戦い続けたホームチームが先制に成功する。

 後半38分、昌平は土谷が青森山田CBの背後を狙った浮き球パス。これは相手に対応されたものの、交代出場MF三浦悠代(2年)が小さなクリアを拾って中央へ繋ぐ。すると、絶妙なファーストタッチでPAへ潜り込んだ土谷がGKのファウルを受けてPKを獲得。これを自ら右足で決め、1-0とした。

後半38分、昌平MF土谷飛雅が先制PK

 さらに42分、昌平は敵陣右サイドでのインターセプトからパス交換で崩し、PAへ侵入した土谷が右足を振り抜く。これをファーの三浦が1タッチで押し込み、2-0。勝利を決定づけるようなゴールだったが、自分たちを信じて戦う青森山田は驚異的な粘りを見せる。

後半42分にはMF三浦悠代が追加点
 
 45分、相手DFライン背後へのボールに対し、FW津島巧(3年)が猛然とプレス。こぼれ球を前線へ上がっていたCB小泉佳絃(3年)が右へさばくと、米谷のラストパスを交代出場の後藤が右足で押し込んで1点差とした。

青森山田は後半45分、MF後藤礼智のゴールで1点差に

 45+1分には右クロスから後藤がクロスバー直撃のヘッド。勢いの止まらない青森山田に対し、昌平は苦しいクリアが続いてしまう。そして45+2分、PA左へのロビングを山本が頭で折り返す。これを菅澤が回収して右前方へラストパス。最後は小沼が左足ダイレクトで決めて同点に追いついた。

 昌平は勝利目前で2失点。佐怒賀は「残り少ない時間の中で自分らも受け身にならないようにと話をしていたんですけれども、どうしてもロングボールの対応など甘くなった部分が多かったので相手に劣ったかなと思います」。3点目は許さず、目の前での優勝は阻止したものの、選手たちは悔しさを滲ませていた。

 一方、青森山田は終盤の迫力ある攻守で勝点1を奪取。正木監督は試合後のミーティングで「(ここからの一週間、)山田らしく日常を取り戻してやろうよと。ここで勝点1取れたことが必ずポジティブな要素になると思うから、自分たちの良さが出せたラストだったから次は立ち上がりからいけるように準備していこう」と選手たちに伝えたという。執念のドロー。これで川崎F U-18と尚志は逆転優勝するために、最終節で勝つしかない状況になった。

 青森山田にとって、最終節で対戦するFC東京U-18は前期の11試合で唯一の敗戦を喫している難敵だ。難しい試合になることは間違いないが、アウェーでリベンジして優勝へ。菅澤は「まずは来週の試合にしっかり目を向けたい。勝つために厳しい目を持ってやることは山田の伝統であるので、みんなが厳しい目を持って勝つための取り組みをしていきたいと思っています」。昌平戦の経験も糧に準備し、最終節は立ち上がりから青森山田らしく戦うこと。そして、勝って自力で優勝を決める。

(取材・文 吉田太郎)

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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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