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「どちらのチーム」にもアピールしたいストライカーの気合。日本高校選抜FW宮下拓弥(桐光学園)は真摯にゴールを狙い続ける

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日本高校選抜の9番を背負うFW宮下拓弥(桐光学園高3年)

[2.15 練習試合 日本高校選抜 1-2 桐蔭横浜大]

「この試合でしっかりプレーすることで、どちらのチームにも評価されたいと思っていたんですけど、あまり自分の良さが出せなかったですね」。

 気になる『どちらのチームにも』という表現には理由がある。その言葉の主であり、日本高校選抜の9番を背負うFW宮下拓弥(桐光学園高3年)がこの日のトレーニングマッチで対峙したのは、4月から入学することが決まっている桐蔭横浜大。それを知れば試合前からみなぎっていた気合にもうなずけるだろう。


 積極性は打ち出した。フォワードの位置に入ると、ボールを持って縦へと運ぶドリブルも披露しながら、ペナルティエリアの中に潜ってフィニッシュまで持ち込む場面も。ただ、なかなかゴールまでは至らない。

「フォワードは得点という結果を残すことが一番大事だと思いますし、“先輩”に自分を印象付けたいなと考えていたので、点を獲りたかったんですけど、昨日も今日も点を獲れていないので、そういうところは自分の課題かなと思います」。言葉の端に悔しさも滲ませる。

 さらに試合途中ではサイドハーフでプレーする時間もあったが、「普段はフォワードしかやっていなくて、特にサイドハーフは高校に入ってからやっていないので、『できるかな?』とは思ったんですけど、『やれることはあるな』と思いましたし、自分なりに動き方を考えながら、『サイドハーフでも自分の色が出せたらな』と思ってやりました」と慣れない役割にもポジティブに取り組んでいく。

 “ホットライン”が開通しかけるシーンもあった。普段のチームメイトでもあるMF松田悠世(桐光学園高3年)のパスに抜け出し、あわやシュートという一連を構築。「悠世が持った時にはスペースに抜けて、走り出すことは意識してきたので、あそこは合わせたかったですね」とは振り返るものの、息の合った連携でチャンスの芽までは生み出してみせた。

 数か月後からはチームメイトになる“先輩”たちとの対戦が、いろいろな意味で難しくなかったはずがない。だが、「それを言い訳にはしたくないです」と言い切る姿勢からは、ストライカーとしてのメンタリティも垣間見える。日本高校選抜で共闘しているMF太田隼剛(市立船橋高3年)やMF杉本英誉(青森山田高3年)とともに進学する桐蔭横浜大での4年間にも、大いに期待したい。


 最高学年となった3年時のインターハイと高校選手権には、大きな落差があった。前者で桐光学園は決勝まで進出。最後は明秀日立高に敗れ、日本一にはあと一歩で及ばなかったものの、宮下は大会得点王を獲得。「インターハイは正直あそこまで行けると思っていなかったですし、決勝まで勝ち上がったことで自分の自信に繋がったので、良い大会になったと思います」と本人も振り返る。

 ところが、夏に届かなかった全国優勝を明確に目指して挑んだ選手権は、神奈川県予選準決勝で桐蔭学園高に競り負け、無念の敗退。宮下も試合の中では貴重な同点ゴールを挙げたが、PK戦では渾身のキックを相手GKにストップされ、チームを勝利に導くことは叶わなかった。

「選手権に関しては、自分がインターハイからあまり成長することができなかったですし、自分がチームを勝たせられる選手になれなかったなと。それこそインターハイの決勝でも自分がゴールを決めていれば勝てたので、そういったところで自分の力不足を感じました」。桐光学園での3年間は悔しさを突き付けられる形で、終焉を迎えることとなる。


 ゆえに日本高校選抜の“候補入り”は意外だったという。「高3の初めから『高校選抜に入りたい』と思っていましたけど、選手権に出られなかったので『入れないかな……』と。でも、候補に呼んでもらえたので、選考会の時から凄く気持ちも入っていましたし、選ばれたいという想いも強くて、自分の持ち味を出そうと強い気持ちを持ってやってきました」。

 ハイレベルな同世代と過ごす時間は、間違いなく刺激的だ。「同じポジションの選手だと、網代(陽勇)くん(尚志高3年)はパスの受け方とか守備の仕方が上手いので、そういうところは参考になりましたね。チーム全体としても守備の強度が高いので、そこはボランチの隼剛もハッキリと指示してくれますし、行くところは強く行くようにしています」。チームメイトのクオリティを間近で感じながら、自身の中へ新たに吸収するべきポイントも、きっちりと見定めている。

 だからこそ、ここからもこのチームでプレーしたい。まずは国立競技場で行われる大舞台でも、その先に控えている数々の大会でも、巡ってきたチャンスではきっちり結果を残してみせる。

「NEXT GENERATION MATCHは国立という舞台でやれますし、『たくさんの観客の前でプレーしてみたい』という想いもあるので、メンバーに選ばれたら得点は獲りたいと思っています。その後にあるデンソーカップでも大学生相手にどれぐらいできるかという自分の力も知りたいですし、そこで良いプレーができれば自信を持って大学での活動にも繋げられると思うので、自分が成長できるようにプレーして、ドイツにも繋げていきたいと思います」。

 愚直にゴールを狙い続ける日本高校選抜のナンバー9。真っ向勝負がよく似合う無骨なストライカー。宮下拓弥の真摯なプレーがチームを助けるタイミングは、この先も必ずやってくるはずだ。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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