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[船橋招待]背番号9とチームの未来を託されたレフティモンスター。仙台ユースFW齋藤俊輔は纏ったベガルタゴールドをより輝かせる躍動を期す!

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ベガルタ仙台ユースの9番を託されたレフティ、FW齋藤俊輔(新3年=1FC川越水上公園出身)

[3.31 船橋招待U-18大会 市立船橋高 0-2 仙台ユース グラスポ]

 もう迷いはない。ボールを持ったら、前へ。走り出したら、前へ。余計なことなんて考えず、目の前のやるべきことに100パーセントの力を注いで、今この瞬間のピッチで誰よりも眩いぐらいに輝いてやる。

「まずは1日1日、1試合1試合を大切にして、目の前の相手に勝つことを目指していますけど、大きな目標としてはプレミア昇格があって、プリンスも優勝したいですし、みんなでいろいろなものを積み上げて、みんなで高い目標をクリアできればいいなと思います」。

 悲願のプレミアリーグ昇格に再チャレンジする、東北の雄のナンバー9。ベガルタ仙台ユース(宮城)を前線で牽引するレフティモンスター。FW齋藤俊輔(新3年=1FC川越水上公園出身)は自分が叩き出す結果で、チームに確かな熱量を伝染させていく。


「競り合いの部分では相手の方が全然大きかったですけど、『足元に入ったらやれるかな』とは思っていたので、どう足元に入れてもらうかというところで、最初に8番(MF里頼都)から縦パスが入ったんですけど、そのシチュエーションを自分で作れるようにとは考えていました」。

 昨シーズンの高校選手権では全国4強。プレミアリーグに在籍する市立船橋高(千葉)と対峙した、『第29回船橋招待U-18サッカー大会』の最終日。齋藤は屈強な相手のセンターバックを前に、ボールのもらいどころに頭を巡らせていた。

「後ろから縦パスをもらってから、ターンしてドリブルするのが得意です」。スペースを探り当て、ボールを受けたらすかさず反転。相手が寄せてきてもお構いなし。「ドリブルの部分はチームで一番じゃないといけないなと思います」。グイグイと縦へ勝負していく積極性が頼もしい。

 参考にしているのは、同じ左足を利き足に持つ日本代表のアタッカーだ。「久保建英選手は間で受けて、ターンして、スルーパスを出したり、自分で仕掛けもできますし、自分とプレーが似ているなと。スパイクもちょっと同じものを意識して履いていますね(笑)」。憧れのレフティに自身のスタイルを重ね合わせている。

 傍目には悪くなかったように映るこの試合後には、反省点ばかりが口を衝いた。「収めてもその2,3秒後ぐらいに取られるシーンもありましたし、ちゃんと前に繋げるのが自分の仕事なので、そういう部分ではちょっと物足りなかったかなと思います」。MF永守大宙(新2年)とFW古屋歩夢(新2年)がゴールを挙げ、チームは2-0で勝ったものの、自身が数字を出せなかったことも納得のいかない要素だったようだ。



 2年生だった昨シーズンは、少しずつ自信を纏っていく時間だったという。「1年生の時はちょくちょく試合にも出させてもらっていたんですけど、2年生の新チームの時は全然試合に出ていなくて、スタートは一番下ぐらいのイメージでした。でも、夏のクラブユース前ぐらいから使ってもらえるようになって、そこからはプリンスでも8点獲れたので、だんだん調子が上がっていったかなと思います」。

 好調に転じたきっかけは、先輩たちから寄せられた小さくない期待だ。「1年生から試合に出させてもらっていたことで、先輩も自分に期待してくれていましたし、そういう声掛けが自分に響いて、『もう後のことは考えないで、前だけを見て、今をしっかりやらないといけないんだな』って。そこは自分次第なので、『変わらなきゃいけないな』と思いました」。周囲が信頼してくれていることを感じたからこそ、意識の変化を自身に課し、結果を手繰り寄せたのだ。

 それだけにみんなで掴んだプレミアリーグプレーオフには、苦い思い出が残っている。「自分はインフルエンザに罹ってしまって、広島に行くこともできなくて、映像で見ていました。みんなで1年間そこを目標にやってきたので、その時はもうメチャメチャ悔しかったです」(齋藤)。

 複数の主力を欠いたチームは、初戦こそ清水エスパルスユース(静岡)に快勝を収めたが、昇格を懸けた鹿島アントラーズユース(茨城)との決戦に0-7で完敗。届かなかったあと1つの勝利を、今年こそは。2024年の仙台ユースが携えているモチベーションがこの上なく高いことは、あえて言うまでもないだろう。


 中学時代の齋藤は埼玉の強豪として知られる1FC川越水上公園でプレー。チームの1つ上の先輩に当たる、昨年の仙台ユースの10番を背負ったMF河野和真(新潟医療福祉大に進学予定)が進路に選んでいたことも知っていた中で、「練習参加した時にポゼッションサッカーをやっていましたし、『自分を大事にしてくれそうだな』と思って」、杜の都で勝負する決断を下す。

 1FC川越水上公園の同期には、“ライバル”だと意識している選手がいる。「矢田龍之介(清水エスパルスユース)とはちょくちょく電話もしますね。向こうは海外でプレーすることが夢だと言っていて、自分の夢はまずはプロサッカー選手になりたいということなので、そこの部分の違いが今はありますけど、いつかまた一緒にプレーできたらいいなって。もちろん負けたいとは思っていないので、同じピッチに立ちたいなと思っています」。U-17ワールドカップも経験している友人の存在も刺激に変え、成長への意欲をたぎらせている。

 今季になって託された背番号は、少し意外だったという。「(木谷公亮)監督からは『フォワードの中心となってほしい』と言われました。番号が決まる前はちょっと『10番がいいな』と思っていて(笑)、最初はしっくり来なかったですけど、そこからはもう9番も好きになって、今は『9番の方がいいな』と思っています」。役割はより明確になった。とにかくゴールに関わること。9番を背負うからには、もうその一択だ。

 最高学年。ストライカーナンバー。先輩から託された希望。今季の1年間でやるべきことは、十分すぎるほど理解している。「得点の部分では、チームで一番結果を出すことを目標にしています。その中でどれだけ全力で頑張れるか、どれだけ熱量を持って戦えるかは自分の課題でもありますし、今年は副キャプテンもやっているので、チームに良い影響を与えられるように、プレーで引っ張っていかなくてはと思っています」。

ベガルタゴールドに彩られたユニフォームに、さらなる輝きをもたらせるか否かは自分の結果次第。仙台ユースの勝敗を担う覚悟を定めた、背番号9のレフティモンスター。齋藤俊輔がしなやかに振るい続ける左足が、このグループを約束の場所へと導けるか、要注目。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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