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目標は「全冠」。個性活かした攻撃と我慢強さも見せた流経大柏が尚志を下し、プレミアEAST開幕戦勝利

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前半26分、流通経済大柏高が先制点。CKでオウンゴールを誘発した10番MF柚木創中心に喜ぶ

[4.7 プレミアリーグEAST第1節 流通経済大柏高 1-0 尚志高 流通経済大柏高G]

「全冠」を掲げる流経大柏が強豪校対決を制す――。7日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 EAST第1節で昨年度6位の流通経済大柏高(千葉)と同2位の尚志高(福島)が対戦。ホームの流経大柏が1-0で勝った。

 前半のシュート数は15対4だった。流経大柏はゲーム主将のCB奈須琉世(3年)とCB富樫龍暉(3年)の両DF、1ボランチのMF稲田斗毅(3年)を除くとアタッカーが並ぶようなメンバー構成。榎本雅大監督が「亀田、堀川、柚木……この辺はもう経験もあるし、やっぱ彼らの良さがボールを運べるところ。そこはもう最大限に活かしていきたい」というように、U-17日本高校選抜MF柚木創(3年)やMF亀田歩夢(3年)、左SB堀川由幹(3年)、MF昇純希(2年)という技巧派たちが、個でボールを運ぶ力を発揮する。

 指揮官が「うるさく言う」のは、攻撃から守備への切り替えスピードなどわずか。「(今年は)これだけ個が強い。やっぱり選手たちが思いっ切りやれる、そういう環境を提供していく」というように、攻撃に関しては形にハメることなく選手たちの発想に任せているのだという。

 前半は流経大柏がその個性を活かした攻撃や「エノさん(榎本監督)も言ってましたけど、やっぱり出足のスピードとか、ほんとに他のチームとかはないようなものがあって、そこが他と違うベースがある」(奈須)という強みを発揮する。開始直後にFW葛西亮太(3年)が抜け出しから右足ボレーシュート。その後もスキルの高い選手たちが個の力でボールを運び、右SB松本果成(3年)のダイナミックな攻め上がりも活用して相手にプレッシャーをかけた。

 対する尚志は、10番MF高橋響希(3年)がボランチの位置から相手DF間のスペースを巧みに突いて攻め上がる。積極的にボールに係る高橋やU-17日本高校選抜MF大内完介(3年)がボールを運び、セットプレーやU-17日本高校選抜候補FW矢崎レイス(3年)のDF背後を狙う動きでチャンスも。流経大柏は押し返される時間帯があったものの、GK加藤慶太(3年)の好セーブなどで凌ぎ、26分に先制点を奪った。

 柚木のシュートで左CKを獲得。これをキッカーの柚木が右足でゴールエリアへ蹴り込むと、相手DFに当たったボールがゴールに吸い込まれた。流経大柏は奈須が「密集させているところから柚木とか(稲田)斗毅が展開してくれて、上手く逃がせたっていうのが大きかったです」と語ったように、相手のプレスを受けても巧みに攻略。尚志は前半、なかなか取りどころが定まらず、またボールを奪っても相手の鋭い守備の前に精度を欠いてロストする回数が増えてしまう。

 流経大柏は両SBを含めて前掛かりになる中、運動量の多い稲田が広範囲をカバー。そして、ボールを保持すると、コンビでの崩しやセットプレーから柚木や亀田、FW和田哲平(3年)がシュートを打ち込んだ。だが、尚志はCB西館優真主将(3年)が声を発し続けるなど集中力を切らさず、相手のシュートをブロック。流経大柏は前半終了間際の奈須の決定的なヘッドが枠左へ外れるなど2点目を奪うことができなかった。

 後半、尚志は「相手に慣れてきて、(ボールを)逃がせるようになってきた」(仲村浩二監督)ことで巻き返す。前半途中に投入されたMF小笠原啓太(3年)や矢崎の縦へ抜け出す動きもあって攻撃が活性化。だが、流経大柏は奈須、富樫の両CBがチャレンジ&カバーを徹底するなど隙を見せない。

 11分、流経大柏は柚木の右足FK、亀田のシュートが立て続けにポストをヒット。チャンスをモノにできず、徐々に後ろへ重くなる中、足を攣らせる選手も出てしまう。そして、相手にポケットを狙われ、仕掛けられた。尚志は昨年度から先発全員が入れ替わっているものの、今年も自力のあるチーム。19分、右SB西丸由都(3年)の決定的なクロスに矢崎が飛び込み、直後にも矢崎が鋭いターンからシュートを打ち込むなど同点を狙う。だが、流経大柏はDF陣が最後の一歩まで足を出して枠へシュートを飛ばさなかった。

 流経大柏は近年、相手を仕留め切れずに追いつかれたり、競り負けたりすることが多かった。だが、この日は終盤も交代出場のCB佐藤夢真主将(3年)や富樫を中心に我慢強い守備を継続。決定打を打たせない。榎本監督も「これで勝ち切れないのがウチだった。結構打ち込まれて、これを勝ったのは、デカいなと思ってます」と頷く戦いで1点リードを守り抜いた。

 24年の流経大柏が掲げるのは勝ちながら成長すること、「全冠」獲得だ。榎本監督は「そこ(成長することは)は大事にしています。やっぱり目の前の勝負にこだわってるんですけど、そこで良しにならないっていう部分で、彼らがやっぱりこの上のカテゴリーにいって通用する、流経からワールドカップの選手を出すことを目標にやっている。苦しんでもやりたい」と語る。

 選手たちはFW大前元紀(現南葛SC)を擁して選手権初優勝を果たした07年度世代、2年連続で選手権決勝へ進出した17、18年度世代の映像を全体で見たという。選手たちは自分たちと何が違うのかを確認。奈須は「やっぱり日本一になるために、(先輩たちは)1人1人が高い意識を持ってやってるのもそうですし、何がなんでも勝ちたいって気持ちがまず大事なので、そこは自分から伝えれるようにしています。1人1人が負けず嫌いだと覚悟はさらに上がってきますね。そこが、(自分たちは)まだまだ足りないです」と求めた。

 今年の選手たちも“負けず嫌い”は多数。結果を残した先輩たちのように、練習からもっともっと高め合う意気込みだ。この日は昨年度のリーグ2位・尚志を撃破したが、満足感はない。稲田は「ほんとに今年の代は全国優勝を目指せる。今、チームで掲げているのは『全冠』達成ってところなんで、そこに向けて、今日の勝ちを一回忘れて、また一からやっていくしかないです。(次節も)自分たちは緩むことなく、やってきたことを出すだけです」。次節の対戦相手は昨年度2冠の青森山田高(青森)。自分たちのサッカーを表現し、王者に黒星をつける。



(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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