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「いい攻撃がいい守備を生む」スタイル貫徹の柏U-18が千葉ダービーを3発快勝!!:千葉県クラブユース新人戦

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[3.4 千葉県クラブユース新人戦 柏U-18 3-1千葉U-18 日立柏総合G]

 4日に行われた平成23年度第10回千葉県クラブユース新人戦最終節で柏レイソルU-18とジェフユナイテッド千葉U-18が激突。ユースチームによる「千葉ダービー」は、柏が中学3年生FW大島康樹の先制ゴールなどによって3-1で快勝した。4戦全勝で優勝した柏は、17日に開催される予定の第16回千葉県ユースサッカー選手権大会(秋津)で天皇杯千葉県代表決定戦への出場権を懸けて、全国高校選手権優勝の市立船橋高と対戦する。

 U-18日本代表のMF小林祐介や昨年のクラブユース選手権得点王のFW平久将土ら主力5人を欠いた柏が、ライバル相手に自分達のサッカーを貫徹。強さを見せ付けて勝利した。立ち上がりこそ、昨年と違ってゾーンディフェンスを敷き、両ワイドから中央へ切れ込んでくるFW佐藤遵樹とFW和田凌を起点としたサイド攻撃を繰り出す千葉の戦い方にやや戸惑った。相手のプレッシャーにはまって後退する場面もあったが、今年の有力な日本一候補・柏は揺るがない。

 攻撃を急ぐことなく、ポゼッションでゲームの主導権を掴んだ柏はチーム全体で押し上げて敵陣へ攻め込んでいく。そして絶妙な間とポジショニングでボールを受けるU-18日本代表MF中川寛斗とMF伊藤光輝の2列目の存在と、両CBやU-18日本代表MF秋野央樹主将らの正確な縦パスによって、警戒心高く守る千葉守備陣を切り崩した。常に相手の先手を取る素速い判断と正確なパスの連続。13分には伊藤の左CKに決定的な形で大島が飛び込み、19分にはカウンターから秋野が左サイドへ展開すると、中学3年生FW麦倉捺木のクロスを再び決定的な形で大島が合わせた。

 千葉も集中力の高い守りを見せていたが28分、柏は中央の秋野が左サイドから斜めにバイタルエリアへ走り込んだ麦倉へ絶妙なループパス。麦倉から伊藤へのスルーパスは通らなかったが、こぼれ球に反応した大島が左足で先制ゴールを決めた。柏はさらに後半4分にも、秋野を起点とした攻撃から左中間でボールを受けた伊藤がGKの頭上を射抜く圧巻の右足ミドル。柏・下平隆宏監督も「素晴らしいシュートだった」と絶賛する一撃で千葉を突き放した。

 千葉は11分に佐藤のスルーパスで交代出場のFW今関耕平が抜け出すが、柏の守護神、U-18日本代表GK中村航輔が1対1をストップ。逆に柏は直後の15分、右サイドをパスワークで攻略し、最後は麦倉が左足シュートをゴール左隅へ流し込んだ。中学生2人にゴールを許してしまった千葉は、4点目を狙ってゼロトップへ移行した相手からカウンターでチャンスをつくったが、鋭い突破を見せていた佐藤のドリブルシュートや、CB豊川功治の左足FKが柏の中村に阻まれるなど追撃することができない。後半ロスタイムに右アーリークロスにオフサイドギリギリで飛び出したCB鳥海晃司が意地のゴールを決めたものの、柏が3-1で快勝した。秋野は「千葉ダービーでいい試合ができて良かった。昨年はプリンス2部で『勝って当然』という試合が多かった。今年は1部でいいチームとできるのが楽しみ」と力強かった。

 昨日行われたFUJI XEROX SUPER CUP2012 NEXT GENERATION MATCHのU-18Jリーグ選抜に秋野、中村、中川が出場するなどタレント揃う柏だが、ピッチ上で表現しているサッカーは明らかに異質だ。特に攻撃面。他のチームならば間違いなくスピードアップしてクロスを上げるような場面でも、なかなかギアを上げない。ポゼッションを続けてなかなか「動かない」。ただこれには理由があった。

 下平監督は「ちゃんとした攻撃を作り出すことがいい守備につながる」と説明する。一般的には「いい守備からいい攻撃を」という言葉が多用されるが、柏はその逆で「いい攻撃がいい守備を生む」という考え方。柏特有の「ビハインド・サポート」を大事にし、どんな状況でもサポートの選手を置くことにこだわっている。攻撃のスピードがなかなか上がらず、ゴールへの意欲が低いような印象も受けるが、一方でサポートをしながら全体で押し上げた攻撃をしているため、間延びした攻撃でボールを失って中盤のスペースを突かれるようなことがない。常にポゼッションして、優位に試合を進め、守りのリスクを減らして勝つ。指揮官は「見慣れない人には何でここ行かないの? と思われると思う。でもボクらは常に(ポゼッションで)主導権を握ることを目指している」。下部組織で一貫しているスタイルのため、主力2、3人を欠いてもその質が大きく下がることはない。加えて下平監督が「近年で一番いいサッカーをすると思う」という期待の世代は高いレベルで柏のスタイルを表現できるだけに今年は例年以上に楽しみな一年になりそう。目の前に立ちはだかるライバルは他にも多数あるが、この日千葉ダービーを快勝したように、柏は独自のスタイルで全タイトル奪取という結果を残すつもりだ。

 2月26日にはプレミアリーグ(全国リーグ)勢の三菱養和SCユースと練習試合を行い、4-0で快勝。三菱養和のハイプレッシャーにも動じずにボールを繋ぎ続けたという。今年柏はプリンスリーグ関東1部に属しているため、全国リーグで披露されないことが残念だが、日本クラブユース選手権などそのサッカーを全国に示すチャンスはある。秋野は「自分達はタイトルを取らないといけないチームだと思っている。タイトルを全部取っても悪いことではないので(微笑)。一日一日を努力して頑張りたい」。プリンスリーグ開幕前にも柏は天皇杯予選を兼ねた市立船橋戦やエバートン(イングランド)、コリチーバ(ブラジル)などと戦うダラスカップ(アメリカ、4月)など注目マッチ多数。「ハイレベル」なチームは、次にどのような結果を残すか。

[写真]前半28分、大島のゴールを喜ぶ柏U-18イレブン
(取材・文 吉田太郎)

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