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[プレミアリーグEAST]“街クラブの雄”三菱養和SCユース、らしさ欠いた静学を“パーフェクト”な守りで完封!

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[4.22 プレミアリーグEAST第2節 静岡学園高0-1三菱養和SCユース 静岡学園高G]

 高校年代の全国リーグ、高円宮杯U-18サッカーリーグ2012 プレミアリーグEAST第2節の静岡学園高(静岡)対三菱養和SCユース(東京)戦が22日に行われ、後半26分にDF横山道一(2年)が決めた決勝ヘッドにより三菱養和が1-0で勝利。唯一2連勝の三菱養和が首位に立った。

 生方修司監督が「パーフェクトな試合。立ち上がりからどんどんやって最後まで落ちなかったのは嬉しい」と喜んだ90分間の徹底した走りと堅守。技巧派軍団・静岡学園に足技を発揮させなかった三菱養和が被シュート4本でアウェー戦勝利を掴んだ。

「タメを作られたら間違いなく左右どっからでもやられちゃう。(静学対策として)ラインを下げないことと、縦パスのところを徹底してやってきた」と指揮官は振り返ったが、1トップのFW黒木周(2年)とトップ下のMF秋本和希(2年)、右MF山下由都(3年)ら前線から鋭いプレッシャーをかける三菱養和は静学のパスコースを完全に限定。ディフェンスラインからサイドハーフやFWへ入れてくる縦パスをことごとく弾き返して相手アタッカー陣に前を向かせない。

 開幕戦で浦和ユースに逆転勝ちしている静学だが、目指しているスタイルには程遠いサッカー。攻撃にアイディアがほとんど見られず、パスの精度も欠いた。浦和ユース戦での課題だった楔のパスを厳しいチェックで通させず、相手をPAへ近づけなかったが、川口修監督が「学園の良さはプレッシングの厳しい中でもドリブルで局面を打開していくところ。きょうは安全運転ばかり。守備は良かったけれど、“学園らしさ”はなかった。ユニフォームを変えたらどっちが養和か分からない。相手に合わせてしまっていたし、(ドリブルでのチャレンジを)やっていなかった」と厳しく指摘したように、攻撃面での良さを全く出すことができない。
 
 ドリブルで仕掛けてシュートまで持ち込んだのは、前半39分にMF米田隼也(2年)が右サイドから中央へ切れ込んで放った左足シュートと、後半19分にFW木部未嵐(3年)が強引なドリブルでDFを外して右足シュートを放ったわずか2回だけ。MF大村颯士(3年)が中盤を落ち着かせて公式戦初先発のMF須藤駿介(2年)もまずまずのプレーを見せていたものの、崩して決定機をつくることができない。三菱養和の厳しいプレスから逃れるようにトップ下の位置から注目レフティーMF渡辺隼主将(3年)が降りてきて一発を狙っていたが、CB原島玄太(3年)が「思っていたよりゴール前でもFWに怖さを感じなかった」と振り返ったように、意外性も迫力もない攻撃では“パーフェクト”だった三菱養和の堅守をこじ開けることはできなかった。

 J注目GK永井堅梧主将(3年)も「きょうは一人ひとりが戦う姿勢を出してくれた。最後の最後まで身体を張って戦えた。それが最後の1点になった」と讃えた三菱養和は隙を見せない。そしてエースMF清水貴明(3年)と秋本の高いキープ力でボールを守りつつ、相手の背後を狙った“嫌らしい”攻撃の連続。シュートは清水のミドルシュート中心で相手を崩しての決定機はなかったものの後半26分、セットプレーから値千金の決勝点を奪う。秋本の右CKで中央へ飛び込んだのは交代出場で3分前にピッチへ入ったばかりの横山。現在のディフェンスラインの構成が安定しているため、先発を外れていた主力候補の2年生DFが「多分ファーストタッチでした。プレミア初ゴール。(先発を)外れている悔しい部分もありますし、何か残さないといけないと思った」と決勝のヘディングシュートをねじ込んだ。

 90分間を走りぬいた走力とセカンドボールの攻防戦も制して見せた三菱養和だが、首位浮上にも驕りは見られない。永井は「自信になった。でもこれから。他のチームに比べて個人個人ではかなわない。でもチームひとつになれば上回ることができると思う」。J1上位の仙台や鳥栖のように相手の嫌がることを徹底。現在怪我から回復中のFW木村陸人(2年)や“秘密兵器”の1年生が加われば攻撃力の向上も期待することができる。09年と10年の全日本ユース選手権で4強へ進出した“街クラブの雄”は今後もJユース、高校チームたちを苦しめていくつもりだ。

 一方の静学は先週までの3バックから急遽4バックへ変更したことも攻撃のリズムを欠いた原因になったようだが、本来どちらを採用しても対応するのが静学の良さ。渡辺は「連動性のある攻撃が昨年に比べると少ない。きょうは守備は良かったけれど、もっと観客を楽しませるようなプレーで静学らしさを出していかないといけない」。例年に比べるとドリブラーの少ない印象だが、渡辺や木部、米田と個で違いをつくることのできる選手はいる。また昨年の全国高校総体で4ゴールをたたき出しているFW深瀬健也(3年)もこの日復帰した。この日の内容を反省して必ず前へ進む。

[写真]後半26分、三菱養和SCユースDF横山が決勝点となるヘディングシュート
(取材・文 吉田太郎)

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