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[選手権予選]桐光学園が激戦神奈川を制して連覇達成、昨年散った舞台で全国切符をつかむ

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[11.10 全国高校選手権神奈川県大会決勝 桐光学園1-0座間 ニッパ球]

 第91回全国高校サッカー選手権神奈川大会の決勝が10日、ニッパツ三ツ沢球技場で行われ、桐光学園が座間を1-0で下し、昨年に続く全国への切符を手にした。

 昨年の王者と一昨年の王者の対決。「選手権独特の歓声でプレー中もあまり声が通らなかった」と桐光学園のゲームキャプテンを務めたDF大田隼輔(3年)が振り返ったとおり、青と黄色の真っ二つに分かれた応援席からは、試合開始から選手たちに大声援が送られていた。

 立ち上がりは戦前の予想通り、プリンスリーグ関東1部で首位に立っている桐光学園が、ボールポゼッションを高めながらゲームを進めた。だが座間DFも高い集中力を保ち、なかなかいい形を作らせない。両チームともシュートまでも持ち込めない展開が続いたが、18分、桐光はスルーパスに抜け出したMF橋本裕貴(3年)が左足でシュートを放ち、ようやくファーストシュートが生まれた。

 その後も攻めたのは桐光学園だった。しかしスコアはなかなか動かない。前半最大のチャンスは33分、右サイドを駆け上がったMF菅本岳(3年)が前線のFW市森康平(3年)にスルーパス。市森は豪快に右足を振り抜くがGK相原尚稀(3年)が好セーブで弾く。こぼれ球に橋本が詰めるが、これもGKの正面を突いた。さらに同36分、菅本のパスを受けたMF松井修平(3年)が右サイドの深い位置まで持ち上がると、ファーサイドにクロス。ボールは流れるが、すかさず中島が折り返しのクロスを入れる。だがボレーで合わせた橋本のシュートはわずかに左に外れた。

 一方的に攻められた座間だったが、後半に入ると一転、ペースを握り返して試合を進める。「前半は自分たちのやるべきことが全く出来ていなかった。もっとゴール方向に仕掛けていこうと話していた」。座間のキャプテン、DF高木純(3年)はチームに喝を入れて後半に臨んでいた。だが、後半19分のMF小方脩平(3年)がPA内で粘って上げたクロスを、ニアに飛び込んだFW東剣大(2年)がヘディングシュートで合わせたが、サイドネットに外れるなど、最後の最後で押し込めない展開が続く。

 すると後半29分、耐えに耐えていた桐光にチャンスが生まれる。ゴール正面でFW野路貴之(3年)が倒されて得たFK。松井が直接狙うと、ボールは少し動いたGKの逆を突き、見事にゴールネットを揺らした。「右から巻いて蹴ろうとは思っていた。コースを狙えば入るかなという感覚はあったが、左の方が壁が低かったのでそっちを狙った」。昨年も決勝で決勝点を奪っている松井の値千金のゴールで、桐光が試合を動かした。

 もう攻めるしかない座間。後半27分、左CKからDF小森英明(3年)が直接頭で合わせるが、左に外れる。さらに直後にも再びCKを獲得し、今度はこぼれ球をMF清水一樹(2年)がボレーシュートで押し込むが、GKに弾かれた。ロスタイムにもGKを1人自陣に残しただけの全員攻撃で最後のCKのチャンスを迎えるが、生かし切れなかった。

 このまま逃げ切った桐光学園は神奈川予選2連覇を達成。準決勝の日大藤沢戦後には、「ここ数年で1番悪いゲームをしてしまった」と話した佐熊裕和監督だが、この試合後は「先週よりは良かった。1週間で出来ることは限られていたが、よくできていたと思う」と及第点の評価を与えていた。

 昨年の選手権大会では3回戦まで勝ち進んだ桐光学園だったが、尚志(福島)にPK戦の末、敗れた。場所は奇しくもきょうの決勝の舞台と同じ三ツ沢球技場だった。昨年散った舞台で、再び挑戦権を手にした。「きょうの結果はうれしいですが、目標は選手権に出ることではない。上を目指してやっているので、しっかり本番には合わせていきたい」。佐熊監督は気合を入れなおす。

 激戦神奈川を勝ち抜いた桐光学園には優勝候補としてのプレッシャーものしかかる。ただ大田が話すように「自分たちは挑戦者という気持ちを常に持ってやっている。そこは変えずに全国でも戦いたい。目標は優勝ですが、先を見すぎず、1戦1戦大事に戦っていきたい」と選手たちに慢心はない。さらにベスト8にとどまった今夏のインターハイで同じ神奈川の三浦学苑が優勝したことが選手たちを奮起させている。「不甲斐ない結果に終わって本当に悔しかった。悔しいだけでは終わらせない」。夏に示した神奈川の強さを再び全国に知らしめるべく、桐光学園の挑戦が始まる。

(取材・文 児玉幸洋)


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