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[選手権]「絶対に監督を喜ばせます」初V王手の鵬翔、墓前での誓い

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[1.12 全国高校選手権準決勝 鵬翔2-2(PK4-3)星稜 国立]

 “約束”の決勝進出だった。2度のビハインドをそのたびに追いつき、最後はPK戦の末、競り勝った鵬翔(宮崎)。松崎博美監督は「最初は硬かったけど、1点取られて逆にリラックスしていた。負けない魂を持っている。『お前ら、持ってんな』と。最後まであきらめない、いい子たちです」と、教え子たちの奮闘に目を潤ませた。

 星稜(石川)の情報は皆無に近かった。「映像を準備しようとしたけど、手違いで、星稜の試合を1試合も見れなくて」。そう明かすと、「メンバー表を見て(星稜の)2トップはデカいなと。高いボールで来るなというのは警戒していた」という程度だった。今大会はこれまでPKによる1失点のみだったが、前半14分に初めて流れの中から失点。それでも同31分にMF小原裕哉(2年)の直接FKで追いつくと、後半36分に再び勝ち越されても、その2分後にハーフウェーライン付近のFKから最後はMF東聖二(3年)が同点ゴールを奪った。

 2-2のままもつれ込んだPK戦でも、後攻2人目を務めた東のキックがGKのセーブに阻まれ、星稜に先行を許したが、星稜が4人目から3人連続の失敗。2人はクロスバーに当て、一人はゴール上に外した。「神がかりという言葉を何度も使わせてもらっているが、何かそういうものを子供たちが持っているような気がする。早い時間に初めて流れの中から失点して、ツキがなくなったかなと一瞬思ったけど、子供たちが力を出して追いついてくれた」と、選手たちをねぎらった。

 監督も選手も、特別な思いを持って臨む選手権だった。昨年1月、松崎監督の一人息子である康博さんが34歳の若さで急逝した。5日の準々決勝・立正大淞南戦(3-1)後、チームは宮崎に戻り、6日には一周忌の法要が営まれた。そして10日、準決勝のために再び上京する際、宮崎空港に向かう途中にチーム全員で墓参りをしたのだという。DF矢野大樹主将ら3選手がチームを代表し、手を合わせて線香をあげた。「絶対に監督を喜ばせますので、見守っていてください」。墓前でそう誓った矢野は「去年、監督はつらい思いをたくさんしている。今年は絶対に喜ばせてあげたいという気持ちがあった」と力を込めた。

 83年のサッカー部創設とともに監督に就任し、30年目で初めて国立競技場にたどり着いた松崎監督。「最初は11人からのスタートだった。バスに乗って、いろんなところに遠征した。最初の一期生から思い出はたくさんあるし、思い出せば切りがない。長いことやれば、いいこともあるのかな、神様が見てくれているのかなと」。感無量の表情を浮かべた62歳の指揮官は、京都橘(京都)と対戦する14日の決勝に向け「何もかもが初めて尽くし。国立も初めてなら、決勝も初めて。今までやってきたことをやるしかない」と意気込み、「優勝したいです」と静かに決意を語った。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2012

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