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[選手権]1か月前に手術した鵬翔のエース中濱、「恩返ししたい」

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[1.12 全国高校選手権準決勝 鵬翔2-2(PK4-3)星稜 国立]

 決死の覚悟でたどり着いた国立の舞台だった。後半25分から途中出場した鵬翔(宮崎)のMF中濱健太(3年)。エースの左膝にこれまで巻かれていたテーピングは、この日はなかった。

「『巻け』と言われたけど、『いいです』と断った」。中濱はトレーナーとのやり取りを明かした。昨年11月4日に行われた宮崎県大会決勝で左膝半月板を損傷。手術を受ければ全国大会への出場は厳しいが、手術せずにプレーを続けられるようなケガではなかった。「走れないし、ドリブルもできない。(全国大会に間に合う)ちょっとの可能性に賭けた」。12月7日に手術を受け、26日には練習を再開。28日に上京し、31日の1回戦を迎えた。

 練習試合などにも出場せず、ぶっつけ本番で臨んだ大会。それでも1回戦・東邦戦は後半26分から、2回戦・帝京大可児戦は後半22分から、3回戦の佐野日大戦は後半ロスタイムから、準々決勝の立正大淞南戦は後半21分から、この日を含めて全5試合でピッチに立った。佐野日大戦は3-0、立正大淞南戦は3-1とリードする展開だった。準々決勝まで6日間で4試合をこなす過密日程と左膝の状態のことを考えれば、無理して起用することはない。それでも松崎博美監督は「エースが出るだけでチームは変わるんだ」と、毎試合ピッチに送り出してきた。

「そういう一つひとつがうれしいし、監督のためにも勝ちたい」。中濱はそう言って感謝の言葉を口にする。準々決勝から準決勝までは中6日。「この1週間は大きかった」と話すが、一方で「ドリブルのときも相手との感覚がつかめてない」と、本来のプレーには戻っていない。それでも気持ちで、チームの勝利のために懸命にプレーを続けている。「ここまで仲間に連れてきてもらった。少しでも恩返ししたい」。監督のため、チームメイトのため。14日の決勝も途中出場が濃厚だが、背番号13を背負うエースはたとえ短い時間でもチームを助けるプレーを見せるつもりだ。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2012

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