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[選手権]PK戦3勝で決勝進出は史上初、“元FW”鵬翔GK浅田がミス誘発

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[1.12 全国高校選手権準決勝 鵬翔2-2(PK4-3)星稜 国立]

 PK3-3で迎えた後攻6人目、MF川崎皓章(2年)のキックがゴール右に吸い込まれた瞬間、鵬翔(宮崎)の初の決勝進出が決まった。1回戦・東邦戦(0-0、PK5-3)、2回戦・帝京大可児戦(0-0、PK4-3)に続くPK戦勝利。5試合中3試合をPK戦で制し、初優勝に王手をかけた。

 全国高校選手権が首都圏開催となって以降、PK戦で3勝を挙げたのは過去に93年度の熊本商大付(熊本)、96年度の徳島商(徳島)、97年度と06年度の丸岡(福井)、06年度の広島皆実(広島)と5チームあるが、決勝まで駒を進めたのは今回の鵬翔が史上初の快挙となった(熊本商大付と06年度の丸岡、広島皆実は準々決勝敗退、徳島商と97年度の丸岡は準決勝敗退)。

 ゴールを守るGK浅田卓人(3年)にこの日はPKストップこそなかったが、星稜(石川)が4人目から3連続失敗。2人はクロスバーに当て、一人はゴール上に外した。相手のミスとはいえ、浅田もコースは読んでいた。「3人目が終わって、全員が同じ方向に蹴っていた。ボールを置いて下がったときの角度も浅かったので、確信した」。4人目以降はすべて右方向に飛んだ。そのとおりにボールは来たが、クロスバーに当たるか、その上を越えていった。「自分が読んでいたので、相手が焦って外したというのもあると思う」。守護神は胸を張った。

 PK戦では5人目のキッカーを務め、決めればその時点で勝利が決まっていたが、ゴール上に外してしまい、サドンデスにもつれ込んだ。それでも「切り替えて自分が止めるしかないと思った」と引きずることなく、6人目の相手キッカーにプレッシャーを与え、ミスを誘った。

 中学2年生のときに4か月間、FWに“転向”した異色の経歴を持つ。「人数の問題で紅白戦にフィールド選手で出たときに、『なかなかいいじゃないか』となって」。松崎博美監督が「攻撃的なセンスを持っているし、攻撃的なGKだと思う」と評するように、スローイングやパントキックでも正確なフィードで速攻につなげ、攻撃の起点となった。さらに言えば、FWをやっていた当時の経験が、相手キッカーの癖や心理を読み取る“武器”となり、3度のPK戦勝利に導いているのかもしれない。

 もしも京都橘(京都)との決勝もPK戦となり、そのうえで日本一に輝けば、PK戦で4勝を挙げた史上初のチームとなる。「去年は1点取られるとズルズルいってしまったけど、今年のチームには粘り強さがある。国立という目標は達成できた。残り1試合も勝って、全国制覇の目標を達成したい」と浅田。どんな形でも勝利をもぎ取り、鵬翔の歴史を、宮崎県の歴史を塗り替えるつもりだ。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2012

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