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横浜FCに合流5日目で勝利に貢献したMF寺田「違和感なくやれた」

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[8.5 J2第27節 横浜FC 1-0 湘南 ニッパ球]

 0-0で迎えた後半11分に、横浜FC山口素弘監督が動く。FW難波宏明に代えて投入したのは、わずか4日前にG大阪から合流したばかりのMF寺田紳一だった。山口監督は「流れが来かかっていたので、思い切って寺田選手を入れるのと同時に、武岡選手を前に置きたかった」と交代理由を説明した。

 前半は風下に立った横浜FCは、ロングボールを入れても最終ラインの背後に落とせず、縦を使うことができていなかった。湘南のプレッシングにボールをつなげない局面もあり、主導権を握られてしまう。それでも、後半に入り風上に立つと、相手の最終ラインの裏に何本かロングボールを蹴り込み、そこに機動力のある難波を走らせ、湘南を全体的に間延びさせた。山口監督が寺田を起用したのは、そんな時間帯だった。

 中盤に多少のスペースができるようになっていたとはいえ、寺田の技術は際立っていた。MF高地系治、MF八角剛史と連動してショートパスをつなぎ、左右のスペースが空いたと見れば、ロングボールを放り込む。寺田の獲得が決まった際、奥大介強化部長は「パサーっていうタイプは、高地選手くらいだったから」と説明していたが、高地は彼の加入で恩恵を受けたといえるだろう。この試合、高地はチームで最多となる4本のシュートを放っている。これまでも高地は意識的にゴールを狙っていたが、出し手が増えたことでゴールを狙える回数が増えた。

 湘南の選手は「セットプレー1本にやられた」と悔しがったが、寺田が入ってからの時間帯は横浜FCが主導権を握っていた。このCKも、枠内に飛んだ高地のシュートをGK松本拓也が弾いた結果のものだ。

 試合の流れを大きく引き寄せた寺田は「ベンチから見ていてボールが回っていないな、相手にペースがあるなと分かっていたので、僕が入ったらボールを落ち着かせようと心がけていました」と振り返った。

 周囲との連係が上手くいったことについては「半年しか(横浜FCを)離れていませんからね」と前置きをした上で、「チームがやろうとしていることがはっきりしているので、試合までの練習で、みんながやろうとしたことがわかりましたし、違和感なくやれました。ダービーということで、内容よりも勝ちにこだわっていたので本当に勝てて良かったです」と再加入後の初勝利を喜んだ。

 山口監督は寺田の補強について「もう1ランク、チーム全体をアップさせるために良い補強」と話していたが、早くもレベルの高さを示した。GKシュナイダー潤之介も「常に前を向ける。ターンしてから前線にパスを付けられるので、攻撃のアクセントになる」と語ったが、実際に彼が出場したことでピッチに立てなかった選手も、気を引き締めており、ピッチ内外でチームを活性している。

「まだ90分できるかは不安」と本人は話すが、頼れる男が復帰したことを、強く印象付ける初戦となった。

(取材・文 河合拓)

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