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同僚、師弟から好敵手となった山口監督に、課題を突き付けた松本・反町監督

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[9.17 J2第34節 横浜FC 1-1 松本 ニッパ球]

 横浜FC松本山雅FCの一戦は、両指揮官の采配にも注目が集まった。横浜FC山口素弘監督と松本の反町康治監督は、現役時代に横浜フリューゲルスでともにプレーしており、新潟時代には師弟関係にもあった。現役時代の思い出の地である三ツ沢競技場で行われた試合を1-1で終え、横浜FC戦を「レアル・マドリーとの対戦」と位置付けていた松本の反町監督は、してやったり、の表情を浮かべた。

「9月は第2週からデーゲーム開催がOKになるのですが、今日は本当に選手にお疲れ様と言いたいですね。選手たちには帰りのサービスエリアで、かき氷でも奢ってあげたい。われわれは最初から最後まで、ペース配分なんてできませんでした。先制したことで横浜FCは、ある程度ペース配分しましたが、我々はギアをアップしなければ、そのまま終わってしまいました。前半の途中から見ていて、後半からシステムを変えました。奏功したと思います。後半はほとんど我々のペースでやれたと思います」

 後半、MF渡辺匠をアンカーにした4-3-3に布陣を変更した松本は、試合の主導権を掌握した。公式記録上では前半のシュート数はゼロだったが、後半は横浜FCを上回る6本のシュートを放っている。「(布陣を)チェンジすることで自分たちの良さと相手のウィークな部分をぶつけること。そのためのシステムチェンジ」と語ったが、具体的なウィークポイントについては「山口素弘監督が好きだし、そこは内緒です」と煙に巻いた。それでも、饒舌な指揮官はいくつかのヒントを、15分以上に渡った記者会見で語っている。

 この日の試合を反町監督は「徹也デーだった」と語っている。「中盤で簡単に前を向けるような相手なら『徹也デー』です。だから、1点だったのは残念」と1ゴールを挙げた木島徹也の長所が出やすい試合だったことを説明した。ボールを動かすことの得意なMF寺田紳一、MF佐藤謙介をボランチに並べた横浜FCだったが、後半は起点になる2人にマンツーマンの形でトップ下のMFユン・ソンヨル、MF喜山康平に見張られて、思うようにボールを前に運べなかった。また、守備的な選手ではない彼らの位置で、木島らが前を向くことができ、松本は速攻を仕掛けることもできている。

「我々とは強化費が違いますし、整った環境で良い選手に恵まれ、個のタレントを生かすような良いサッカーをしていると思います。これからも頑張ってもらいたい」と、山口監督について語ったが、対戦相手に応じた戦い方の選択の必要性を、やんわりと語っている。

「(横浜FC)は大きい選手が2人いるので、力付くでも(ボールを前線に)持って行けちゃうんですよ。そこは目をつぶりましたが、相手が早い時間に大久保選手を代えてくれた。これはラッキーでした。また野崎を左にしてくれたのもラッキーでした。(本来MFの)楠瀬の方を抜かれたら終わりでしたよ」

 山口監督は、この試合に向けて個で仕掛けることのできるMF小野瀬康介やFWカイオを起用している。パスカットから速攻を狙う相手の長所を消す策が、前半は奏功していたともいえるが、試合展開に応じた対策については、反町監督が上回った印象だ。

「後半、後ろを4枚にするとは思いませんでした。そこの驚きは多少ありました。まぁ、ウィークポイントを突かれたんじゃないでしょうか。ボールを失ったのは、うちの技術的なミスもあると思いますけれどね」と、悔しさを滲ませた山口監督。J1昇格を目指すチーム、そして1年生指揮官にとっては、新たな課題を突き付けられた一戦となった。

(取材・文 河合拓)

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