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90分走り切った永井、ドーピング検査に3時間要し「試合より疲れた」

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[7.26 ロンドン五輪D組 日本1-0スペイン グラスゴー]

 スペイン撃破の喜びも吹き飛んでしまったようだった。大金星を挙げた試合後、ドーピング検査に当たったFW永井謙佑は試合終了から約3時間が経過して、ようやくミックスゾーンに姿を見せた。500mlのペットボトルを3本以上飲んでも「全然下りてこなかった」と苦笑い。「試合より疲れました」と疲労困憊だった。

 とはいえ、疲労の理由はドーピング検査のせいだけではないだろう。1トップで先発した永井は最前線からプレッシングに走り回り、ボールを奪うやカウンターの先陣を切った。その運動量とスピードが圧倒的だったのはだれの目にも明らか。時間がたつにつれ、スタンドからは永井にボールが渡るたびに大きな歓声が沸くようになった。

「みんな走っていたので、走らないとダメでしょ」。初の五輪。相手はスペイン。それでも「緊張もしなかったし、『当たって砕けろ』ぐらいの気持ちだった。スペインの方がプレッシャーがあったと思う」と冷静だった。「きつくなったら気持ちかなと。行けるところまで行こうと思った」と言いながら90分間走り切った。

 前線からの激しいチェイシングに、スペインは明らかに戸惑っていた。ガムシャラに駆け回ったわけではない。「パスミスだったり、トラップしてからが遅かったり、映像を見てそういうの感じていた。トラップした瞬間を狙っていた」。ハッキリとした意図を持ったディフェンス。それが功を奏したのが前半42分のプレーだった。

 相手のバックパスに永井が猛然と詰めると、DFイニゴ・マルティネスのトラップが流れる。すかさずボールを奪い、ゴール前に抜け出そうとしたところで後方から倒された。ファウル。そしてイニゴ・マルティネスにはレッドカード。「ボールが浮いて、ミスるかなと思った」という永井のファインプレーでスペインを数的不利に追い込んだ。

 永井をスイッチにした連動したディフェンスは21日のメキシコ戦(2-1)で手応えをつかんだものだった。左サイドはMF宇佐美貴史からFW大津祐樹に代わったが、1トップの永井、トップ下のMF東慶悟というプレスの起点ともなるコンビは継続。この2人が完封勝利の立役者だったと言ってもいい。

「メキシコといい間合いでできて、その感覚でスペインとやって、怖いシーンもなかったし、守備の面では自信を持ってやれた」。永井がそう言えば、東も「我慢する時間に関しては、メキシコ戦がいい練習試合になったと思う。いいイメージで90分やれた」と胸を張った。

 課題はやはり決定力だろう。10人のスペインに対し、試合を決めるチャンスは何度もあった。しかし、相手GKの好セーブもあり、シュートが枠を外れるなどフィニッシュの精度を欠いた。「決定的な場面が2、3回あったのに、最後の体力が残ってなくて……。冷静さがなかった」。そう悔やんだ永井は「試合をやっていく中で、冷静にできるようにしていきたい」と前を向く。

「楽しかったですね。きつかったけど、励まし合ってやっていたので。一戦一戦戦って、18人でメダルを取れるようにやっていきたい」。スペインを破っても目の前の試合に集中するスタンスは変わらない。「次が大事。一戦一戦が勝負なので、しっかり戦っていきたい」と、29日のモロッコ戦へ気持ちを切り替えていた。

(取材・文 西山紘平)

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