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大宮・鈴木監督、初陣勝利で降格圏脱出も「喜んでられる内容じゃない」

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[5.1 J1第9節 大宮2-1京都 NACK]

 大宮アルディージャが長いトンネルから抜け出した。開幕のC大阪戦の勝利以来、リーグ戦7試合、ナビスコ杯を含めて9試合連続で未勝利が続いていたが、京都を下してようやく2勝目をつかんだ。17位から一気に残留圏内の14位に浮上した。

 「サポーターに勝利を見せられてよかった。勝ち点3を取れてホッとしてます。私だけでなくクラブもホッとしてると思います」

 試合後の会見で鈴木淳新監督もひとまず安堵の表情をみせた。監督交代という“ショック療法”がプラスに作用した。

 張外龍監督が電撃辞任し、28日に前新潟の鈴木淳監督が就任。わずか3日の準備で京都戦に備える非常事態だった。そんな“カンフル剤”には2つの効果があった。

 一つは選手の意識だ。「張監督が辞任されて、すべて責任をかぶってくれた。しかし、やっていたのは選手。みんなでいろいろと話し合って臨んだ」とMFアン・ヨンハが明かした通り、選手はもう一度、気持ちを入れ直し、強い闘志を胸に試合に臨んだ。

 積極的にプレスをかけ、標榜しているサイドからの攻撃を仕掛けようとした。それが現れた。前半11分、DF村上和弘の左クロスを、FW石原直樹が華麗な左足シュートを決めて先制した。

 前半39分に郭泰輝にヘディングを決められ同点とされたが、後半4分に再び石原が橋本早十の左クロスを右足で合わせて勝ち越しに成功。「監督が変わったけど0からじゃない。積み上げてきたものの+αが出た」(村上)と張監督時代から目指していたサッカーができたと明かした。

 2つ目は鈴木監督の細かい指示にあった。この日、何度もテクニカルエリアに出て、細かい修正を行った。特に前半途中から京都が4-5-1からよりサイドをワイドにつかう4-3-3気味にシステムを変更。SBの杉山新やCBの坪内秀介、MF橋本早十らを呼び、細かい修正を図った。ハーフタイムでも細かく修正したという。

 指揮官は「修正内容はいえません」としたが、坪内は「相手の1トップをマトと2人でどう挟むかとか、いい形で話ができた。的確な指示があった」といい、村上も「ミーティングで言っていたことをもう一度、繰り返し言ってくれた。もうちょっとこうしよう、ああしようと。いい雰囲気で90分できたと思う」と“鈴木監督効果”を口にした。

 ただまだ、完全にチームが立ち直ったわけではない。鈴木監督は「きょうは勝ち点3が取れたが、まだ何も成し遂げていない。サッカーの質を上げていかないといけない」と話し、課題として「技術的なことより、ポジショングとかを修正しないといけない。基本的な事ですね。しっかりとポジションがとれていれば、いいボール回しができるし、しっかりと周りが見えて、体の向きを整えてボールを受けることができる」と基本動作の徹底を掲げた。

 「勝って確かにうれしいが、喜んでばかりいられるような試合内容じゃない。また明日の練習から、いろいろやっていきたい」

 鈴木監督はさらなる質の向上を口にした。“鈴木改革”はまだ始まったばかり。目指す先は、大宮を上位クラブにすることだ。“基本からやり直す”と話しているように、その道のりは平坦ではなさそうだが、新潟のように必ず大宮を上位に押し上げるつもりだ。

<写真>初陣を飾った大宮の鈴木監督
(取材・文 近藤安弘)

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