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指揮官にとっても特別なものとなった、柏・増嶋が古巣から挙げた決勝弾

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[6.27 J1第9節 F東京 0-1 柏 国立]

 特別な思いのあるゴールだった。「これまでに何回か(F東京に)勝ったことはありましたが、自分が決めて勝つことはなかったので。ゴールすることができて、良かったです」と、柏レイソルのDF増嶋竜也は笑顔を見せた。市立船橋高を卒業後、04年から06年まで3シーズンを過ごした古巣との試合で、初めて決勝点を挙げたのだ。

 加えて前節の鹿島戦(1-1)で増嶋は、累積警告で出場停止だった。DFクォン・ハンジンが公式戦初出場を果たし、最少失点に貢献していた。柏に加入してから「初めて上から試合を見た」という増嶋は、「自分だったらこうしていたかな、というのもありましたし、試合の流れとか試合の組み立て方とか、こうした方がいいな、とか。そういうのは上から見ていて思った」と発見があったと言う。

 だが、それ以上に定位置を失うのではないかという恐怖心が強かった。実際、昨シーズン、ネルシーニョ監督はシーズン中に多くの選手を起用しながら、初のリーグタイトルを獲得した。

「ネルシーニョ監督は今回に限らず、僕が入った昨シーズンから、すべての選手を平等に競争させてきています。前回の試合にハンジンが出たことで、さらに引き締めなければなという思いがありました」と増嶋は、心情を明かした。

 今季リーグ戦で12試合にスタメン出場し、外からは定位置を確保しているように見える。だが、本人にその自覚はない。だからこそ、古巣との一戦で、よりゴールという結果を求めていた。

 前半ロスタイム、MFレアンドロ・ドミンゲスが蹴ったFKがPA内に落ちる。そのボールをDF近藤直也がシュート。GK権田修一が弾いたところを逃さなかった。

「こぼれ球だけを意識して待っていたところに、たまたま来たので詰めるだけでした。DFはそういうところでしかゴールのチャンスがないので、前の選手より集中していると思います」と振り返ったゴールが、決勝点になった。

 前節の鹿島戦(1-1)に続き、DFがセットプレーからゴールを挙げて、勝ち点を獲得した。この試合の決勝点も、セットプレーからCBの2人が連続でシュートを打った結果のもの。キックオフ前、F東京のポポヴィッチ監督は「柏は昨年のチャンピオンになったときの状態に戻ってきた」と警戒していたが、増嶋は昨年以上と強調した。

「強いチームというのは、良くない試合でもセットプレーからゴールを挙げて1-0で勝っています。うちは、昨年よりもセットプレーは明らかに強さを増していると思います」

 明日からは再び週末の試合に向けて、ポジション争いが待っている。再びネルシーニョ監督にアピールしなければならないが、一つの事実が、増嶋を笑顔にした。この勝利が指揮官にとって記念すべきJ1通算100勝目となったのだ。

「全然、知らなかったです。でも、良かった。これで僕のことを忘れないでしょ。ほとんどいつも忘れられているので(笑)。これでちょっとは覚えてくれたと思います」

 増嶋の特別な思いのこもったゴールは、指揮官にとっても忘れられないものとなった。

(取材・文 河合拓)

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