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大宮が首位!藤本「塚本に勝利を捧げたかった」

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[3.7 J1第1節 大宮3-0C大阪 NACK]
 大宮アルディージャが最高の形で開幕戦勝利をつかんだ。攻守でC大阪を圧倒し3-0快勝。得失点差で首位にも立った。何より、癌を公表し手術を行うことになっているDF塚本泰史を勇気づける1勝となった。試合後、大宮イレブンは出迎えた塚本とピッチ上で何度も抱き合い、涙を流した。いろいろな思いが詰まった大きな大きな1勝だった。
 「ずっと、泰史のために開幕戦をやろうと話していた。勝利を捧げたかったんで、泰史に。泰史を勇気づけたいと思っていた。でも逆に、泰史に力をもらった。そんないい方はよくないかもしれないけど、泰史のおかげで逆にチームが一つになれた。泰史もチームの一員だと証明できました」
 主将の藤本主税が目を赤くはらし、試合を振り返った。仲間が癌で手術する。サッカーもできなくなるかもしれない・・・。「俺たちに何ができるのか」。選手たちは千羽鶴を折るなどして塚本に送ったが、サッカーチームである以上、勝利を贈ることが、最高の支えになるとみんなで話し合ったという。手術に向かう前に、開幕戦勝利に勇気づき、少しでも力に変えてくれれば-。そんな強い思いを胸に、結束していた。
 結果だけでなく、試合内容も最高だった。前線から積極的にプレスをかけ、C大阪の香川&乾ら攻撃陣を封じた。攻撃に迫力があった。前半14分、橋本早十のCKが直接ゴールを割り先制。前半44分にはエースラファエルのラストパスからFW石原直樹が追加点を決めた。「頑張る姿を見せたかった。勇気、希望を少しでも与えられればと思っていた」と石原は振り返る。
 このゴールの直後、藤本が天に向かってピースサインを作った。これに皆が反応し、ピッチ上で“ピースの輪”ができた。単なる喜びではない。塚本の背番号「2」を表すポーズだった。「泰史に捧げたかった。ほんとは自分で決めてやろうと思ったけど、人がとってもやろうって。みんなもやってくれた。よかったです」と藤本。昨年までなら、この後に息切れし、反撃を食らう試合も多かったが、今年は違った。後半も集中力は切れず、運動量も落ちない。そして後半37分、ラファエルが3点目を奪った。助っ人エースは「泰史に力を与えたいとゲームに臨んでいた。でも逆に、我々が泰史に力をもらった」と感謝のコメントを残した。
 サポーターも塚本のためにと、一緒になって戦った。試合開始直前、塚本はピッチに現れてサポーターに一礼した。言葉は発しなかったが、涙を流す塚本の姿に、誰もが涙した。「共に戦おう」「ガンに負けるな」などの複数の横断幕のほか、塚本の背番号「2」のユニホームを模した幕などが掲げられ、『塚本コール』が送られた。C大阪サポーターも一緒になって塚本に大声援を送った。
 「ほんと、今日の試合は、一生忘れられない、最高の一日になりました。(試合後)みんなから『頑張れ!』といわれました。『俺たちはやったぞ』と。ほんと、頑張らないといけないと思いました」
 試合後、塚本はスタンド近辺を一周し、サポーターに握手したり、挨拶をして回った。会見も開き、仲間への感謝を口にした。日時や場所は公表されないが、入院し、手術を受ける予定だ。勝利は何よりの“良薬”になったに違いない。もちろん、大宮イレブンは、この日の勝利だけでは満足しない。「塚本の分も」。塚本が完治し、ピッチに戻ってくることを祈って、闘い続ける決意だ。
<写真>塚本へ向けてピースサインをかざす大宮の選手達
(取材・文 近藤安弘)

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