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福岡はJ1勢3連破ならず。それでも来季J1へ永里は「通用した部分はあった」

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[12.25 天皇杯準々決勝 福岡2-3F東京 熊谷]

 J1勢3連破は、あとわずかのところで成らなかった。アビスパ福岡は3分の後半ロスタイム終了まで、あと1分を切ったあたりで1-1の同点に追いつかれると、延長戦で逆転され2-3で敗れた。来季からJ1の福岡はその実力通り3回戦では広島を、4回戦では大宮をPK戦の末に下してきたが、皮肉にも来季はJ2のFC東京に屈した。

 「最後のところで踏ん張りが利かなかった。J1にいたチームで、地力のあるチームとの差なんだと痛感した」

 今季J2得点ランク4位の15得点を挙げて昇格に導いたMF永里源気が悔しそうな表情を浮かべた。立ち上がり、F東京にボールをつながれて支配されたが、今季もJ2で発揮した粘り強い守備と縦に速い攻撃で対抗した。最終的にシュート数はF東京の19本に対して8本と苦戦はしたが、前半13分にFW大久保哲哉のゴールで先制した。その後はカウンターで追加点を目指しつつ、終盤は逃げ切り策を狙った。ほぼ想定通りの試合運びが出来ていた。

 「アビスパらしいサッカーができた時間もあった。内容的には、今年の試合でいい方のゲーム」と永里もまずまずの内容だったことを明かしたが、シナリオは最後の最後で崩れた。後半ロスタイムにハイボールのこぼれ球を拾われてMF石川直宏に同点弾を決められた。さらに延長戦前半にFW平山相太、石川に2失点を喫した。

 延長後半11分にCKからDF丹羽大輝がヘディングで1点を返したが、福岡にはミラクルが起きなかった。大久保は「99%勝てた試合だった。FC東京は力があるチームなので、あそこで同点に追いつかれたのが全てだったと思う」とうなだれた。

 来季はJ1での戦いが待っている。この日は運動量豊富に走り回り、カウンターを狙ったが、このサッカーがベースとなってくるだろう。相手は来季からJ2とはいえタレント軍団とあり、手ごたえをつかんだ部分もあるようだ。

 永里はチームの戦い方について「負けたけど、体を張って止めることができていた。最後の最後のところは抑えられていた。通用しないことはないと思った」と明かし、個人についても「自分の形とか、間合いになったら持ち込めた。できた部分があった。通用した部分はあるので、もう少し精度を高めていきたい」と前を向いた。

 篠田善之監督も「いい距離感で守備ができれば、ボールを握られていても背後を突いたり、手数をかけずに攻撃することはできた。我々が今年やってきたことは少し見せられたのではないかと思う」と手ごたえを口にしていた。もちろん、まだまだ良い時間帯は少ないため、今後は個の力を高めて90分間続けられるように成長する必要はあるが、来季の最低目標になるJ1残留に向けて一つの“試金石”になったようだ。

 ただ、少し不安になるコメントもあった。指揮官は「チームとしても、もう一度見つめ直して来季に向けて取り組んでいきたい」と会見で話したが、これについて問われると、「来季に向けてというのは個々の面です。来季の編成は決まっていませんし、私も含めて契約の問題などいろいろ抱えている。来季、チームがどうなるかということではなく、サッカーというスポーツをしているプロとして、自分たちを見つめ直さなければいけないということ。この負けをどう捉えていくのか。前を向いて、いつもやっていこうという意味で話した」と少し意味深な発言を残した。

 自身の去就のほか、今季リーグ戦36試合9得点と結果を残しながらFW大久保哲哉が戦力外となったり、外国人をはじめJ1を戦い抜く上での即戦力の獲得が進まないことへの思いなのか……。深層心理は分からないが、福岡が天皇杯で快進撃を続けたのは事実。来季はさらに厳しくなるJ1で飛躍を遂げるためにも、この日の敗戦を肥やしにしてさらなる成長を目指す。

[写真]福岡MF永里

(取材・文 近藤安弘)

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