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福岡を戦力外の大久保が“就活弾”。「全国放送だったので持ってるかな」

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[12.25 天皇杯準々決勝 福岡2-3F東京 熊谷]

 意地の詰まったゴールだった。アビスパ福岡のFW大久保哲哉が前半13分、右からのボールに飛び込んだ。競り合いで流れたボールを拾い、左足で先制ゴール。チームのための一発であり、自身の未来を切り開くための一振りだった。

 「色んな思いもあって何とかこのチームと一緒にプレーし続けたいというのが最大のモチベーションだった。それを引き寄せられるゴールだったと思ったんですが……。試合に負けたのは悔しいですけど、FC東京から点を取れたことは自信にもなるし、今後にも繋がると思うので良かった」

 大久保は今季、リーグ戦36試合に出場し9得点を奪った。トップ下、時には1トップを務め、J1昇格の原動力の一人となった。しかし、来季の契約は更新されなかった。年齢が来季31歳になることもあるが、柏から2008年に加入して以来、結果は十分に残し、中心選手として活躍してきただけに、まさかの戦力外通告だった。

 天皇杯に懸けていた。14日、15日に行われたトライアウトは受けず、新天地を探す“就職活動”は公式戦に絞った。それだけに、この日のF東京戦はまさに“自己PR”の場だった。試合の模様はNHKのBS1で全国中継されたため、「今日は絶対に決めてやるんだという気持ちでしたし、全国放送だったので持ってるかなと。そういう意味も含めてアピールしたかったし、点を取ることが一番だと思っていました」とハンカチ王子こと斎藤佑樹投手(来季から日本ハム)ばりの語録を使い、ゴールを振り返った。

 まだ移籍先は決まっていないそうだが、3年間在籍した福岡でのことを振り返り「3年間は長いようで短かった。福岡ではそれなりの結果を残せたと思いますし、みなさんに支えられてサッカーができたことは感謝しています」と明かした。福岡へは2008年に柏からレンタル移籍し、2009年から完全移籍となったが、サポーターが後押ししてくれた面があったようで「特にサポーターのみなさんには自分が完全移籍するときも、意思表示をしてもらってそれが一番の決め手になった。感謝の気持ちでいっぱい」と目を細めた。

 「チームメイトには感謝したい。自分が点を取れたのも、チームメイトのおかげです。福岡は離れるけど、まだサッカーは続けていきたいので、次のチームが決まって、そのチームがJ1であればまたレベスタでプレーできる。それをモチベーションにしたい。そのときは大きいブーイングを浴びたいですね」と大久保はしみじみと語った。たしかにサッカー人生は続く。“ジャンボ”の愛称で愛された男は、必ずや新天地をつかみ、またファンに愛されるプレイヤーになるつもりだ。

[写真]先制点を決めた福岡FW大久保

(取材・文 近藤安弘)

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