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2戦連続の「忘れられないゴール」、太田「仙台は負けちゃいけない」

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[4.29 J1第8節 仙台1-0浦和 ユアスタ]

 高い打点から放たれたヘディングシュートが美しい弧を描いてゴール左隅に吸い込まれた。ボールの軌道を見守るかのような一瞬の静寂のあと、1万8456人の観衆で埋め尽くされたスタンドから大歓声が沸き起こった。

 MF梁勇基の右クロスにMF太田吉彰が頭で合わせる決勝点。起死回生の同点ゴールを決めた23日の川崎F戦(2-1)に続く太田の2戦連発弾がベガルタ仙台を再開後2連勝に導いた。

「内容より勝ちだけを意識して戦った。負けたら東北のみんながガッカリする。そういう試合で自分が点を取れて勝ててよかった」

 川崎F戦は4-2-3-1の右MFで先発した太田だったが、この日は2トップの一角に入った。先発11人は川崎F戦と同じながら、システムは4-4-2へと変わっていた。

「フェイントですね」。手倉森誠監督はしてやったりの表情だ。「メンバーが同じなら、向こうは4-2-3-1だと思う。最初から2トップと決めていた」。相手の裏をかくだけではない。2トップが相手の最終ラインにプレッシャーをかけ、ビルドアップのミスを誘い、DF4人、MF4人でブロックを形成。ボールを奪えば、スピードのある太田が裏のスペースに飛び出し、浦和守備陣をかく乱した。

 川崎F戦後は「一生忘れられない」と気迫の同点ゴールを振り返った太田。「今日のゴールは?」と聞かれると「これもまた忘れられないですね」と笑った。

「これだけ期待されていて、ホーム開幕戦で。しかも今回は決勝ゴール。ヘディングで決めること自体、めずらしいので。これも忘れられないゴールです」

 J1通算23得点目となった太田だが、ヘディングでのゴールは2得点目だという。「前に決めたのは磐田時代のアウェーのC大阪戦。そのときも決勝点だった」。06年11月11日のC大阪対磐田戦。2-2の後半31分、太田のヘディングシュートが決勝点となり、磐田が3-2で競り勝った。5年前の記憶がすらすら出てくるほど、本人にとっても頭で決めるゴールはめずらしかった。

 09年7月、下部組織から育った磐田を退団し、海外移籍を目指して単身、欧州へ渡った。ドイツやフランスなど4ヵ国6チームの練習に参加したが、契約には至らず。“空白”の半年間をへて、手倉森監督の熱烈なラブコールも受け、昨季から仙台に加入した。しかし、ナビスコ杯では2得点を決めたものの、リーグ戦は21試合に出場し無得点。移籍1年目は不本意なシーズンになった。

「去年はなかなか活躍できず、残念なシーズンだった。もともと点を取らないといけない選手なのに、去年はリーグ戦ゼロに終わった。その悔しさを忘れずにやっている」

 巻き返しを誓った2年目。リーグ再開から2戦連発という最高の結果にも「たかが3試合が終わっただけ。1年が終わったときに笑えるシーズンにしたいし、もっともっと上を目指したい」と満足はしていない。「勝ててよかったけど、すぐに福岡戦がある。気持ちを引き締めてやりたい」。次節は中3日の5月3日。次もホームに福岡を迎える。

「今は勢いと気持ちが一つになっている。でも、1回負けたら途切れてしまうと思う。ベガルタ仙台は絶対に負けちゃいけないチーム。これからも負けずにいきたい」。今季はいまだ2勝1分の無敗。3連勝の柏をぴったりと追走している。「最後は首位にいけるようにしたい」。この快進撃を奇跡とは言わせない。2011年、仙台がJリーグの主役に躍り出る。

(取材・文 西山紘平)

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