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FC多摩JYが日本一! 「元気と野性」+「技術と戦術」。ハイブリッドなサッカーで夏を制す

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FC多摩ジュニアユースが初の日本一

[8.24 日本クラブユース選手権(U-15)決勝 FC多摩JY 2-1 ソレッソ熊本 帯広の森陸上競技場]

 24日、第38回日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会決勝が帯広の森陸上競技場で開催され、FC多摩ジュニアユース(関東2)とソレッソ熊本(九州3)が対戦。Jリーグ開幕以降初となる“街クラブ決勝”を2-1で制したのは、FC多摩だった。

「明らかに力みがあった」と多摩の平林清志監督が苦笑いを浮かべたように、決勝の舞台は独特のムードとの戦いという一面がある。多摩は序盤から相手ゴールに迫る場面は作ったものの、単独得点王を走るMF吉田湊海(3年)のシュートが熊本GK枝川航大(2年)の素晴らしいセービングに阻まれるなど得点を奪い切れない。

 逆に熊本は18分、枝川のゴールキックをMF梶原夢月(2年)が頭で後方にそらすシンプルな攻撃からディフェンスライン裏へと抜け出したFW菊山璃皇(3年)がGKとの1対1シュートを冷静に流し込んで、先制に成功。やや劣勢だった流れを跳ね返し、貴重な先制ゴールを奪ってみせた。

 ただ、多摩にとって1失点は想定内。「ウチはそもそも守って勝つようなチームではないので、やることは変わらなかった。攻め続けるだけ、それしかない」(平林監督)。2回戦では名古屋グランパスU-15に4-3、準々決勝ではヴィッセル神戸U-15に2-1、そして準決勝では鹿島アントラーズジュニアユースに4-3と、強豪相手に点を取り合う展開で勝ち切ってここまできた自信もあった。キーマンのMF松本瑛太(3年)も「焦りは全然なかった。点は取れると思ってた」と振り返る。

 ただ、ソレッソもここまで「ずっとみんなで粘り強く戦ってきた」(広川龍介監督)チームである。追い掛けられるプレッシャーの掛かる展開に加え、連戦の疲労と異例の暑さの影響もあって苦しい流れとなるが、一丸の戦いぶりを見せて対抗。FW菊山の単独突破からのシュートなどチャンスも作りつつ、1-0のリードを保って終盤を迎えた。

 どちらに転んでもおかしくない試合展開ではあったが、最終的に日本一を引き寄せたのは、ゴールを目指す姿勢を全員が共有していた多摩だった。

 試合終了も見えてきた後半38分、逆サイドから流れてきたボールをゴールからやや遠い位置で受けたのはDF有山弾(2年)。平林監督が「3年生の試合で点を取ったのは、たぶんこれまで1回だけ」というSBは、思い切っての右足シュートを選択。これが見事にゴールネットを揺らし、多摩が同点に追い付く。

 こうなると試合のペースは一気に多摩へ傾く。そしてアディショナルタイムも5分を経過したところで最後のゴールが生まれた。こぼれ球を拾ったDF土岐桂音(3年)が力強いドリブルで右サイドを破って送り込んだクロスに頭で合わせたのは途中出場のMF伊達煌将(3年)。負傷で出遅れ、今大会はベンチスタートとなっていた男が、最後の最後で試合を決めるゴールを叩き込み、これが決勝点となった。

 平林監督は「6、7年前、MF大関友翔(現・川崎F)たちの代くらいからサッカーを変えた。子どもたちに合わせて僕ら指導者も変わっていかないといけないと思ったので。どういう方向性にしても、指導者が『こうやりたい』と押し付けたところで、子どもにはストレスにしかならない。そうではなくて、集まってくるいまの子どもに合わせて、何が良いかを考えた」

 チームみんなで元気よくタフに戦い、攻撃では野性味あふれる個の仕掛けを重視してきた従来の“多摩らしさ”は残しつつ、全員でパスを繋いでゲームを作っていく技術・戦術的な要素も「逆算して1年生から積み上げる」(平林監督)ことにこだわった結果、日本一のクラブチームに仕上がった。

(取材・文 川端暁彦)
第38回日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会特集
川端暁彦
Text by 川端暁彦

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