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勝利にも気を引き締める大分・石神「連敗した危機感がある」

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[6.13 J2第19節 横浜FC 0-1 大分 ニッパ球]

「今日の敗戦を次につなげたいと思います」。これは試合に負けたチームが口にする常套句だ。この試合、横浜FCに押しこまれながらも敵地で勝ち点3を挙げた大分トリニータは、敗戦の記憶をしっかりと勝利につなげている。

 17節で東京Vに1-3で敗れ、今季初の連敗を喫した試合後、田坂和昭監督は選手たちを集め、緊急ミーティングを行ったという。経営難に陥っているクラブに、続々と昇格支援金が寄せられている状況で、あってはならない試合をしたと指揮官は振り返る。

「支援をしてもらっている気持ちは分かるか?と。それなのに、走らないとか、球際で戦わないとか、このような試合内容で納得するのか? という話を、東京V戦の後にしました。他のチームに支援金を出して昇格をサポートしてくれるところがあるのか。自分たちには使命があるのだから、やるべきことを問い詰めて、ピッチ内で戦おうと話しました」

 翌18節で松本山雅に2-0で完封勝利したチームは、連敗を喫した際の悔しさや不甲斐なさを忘れていなかった。「連敗した危機感、ああいうゲームを二度としないという共通意識が今のチームにはある」とキャプテンマークを巻いたMF石神直哉は語る。

 実際、6連勝中と好調の横浜FCに攻め込まれる時間が続く。それでも、ゴール前では懸命に体を投げ出し、相手のクロスやフィニッシュをブロックした。90分間、横浜FCに得点を与えずMF三平和司が65分に挙げた虎の子の1点を守り切り、勝ち点3を手にした。

 09年にC大阪の一員としてJ1昇格を果たした石神は「勝負強さが付いたというより、運の部分もあったと思う」と試合を振り返る。「0-0でおかしくないゲームだったし、相手にチャンスは多かった。そういう試合で勝ち点ゼロではなく、勝ち点1でもなく、勝ち点3を取れたのは大きい。勝ちたい気持ちが全員にあるから、最後に三平のところにボールがこぼれるんだと思う。みんなの気持ちが結果につながった試合だった」と言い「J1に昇格するチームは、こういうゲームで勝つもの」と、力を込めた。

 2連勝を飾った大分は、J1昇格プレーオフに出場できる6位をキープした。だが、肝心なのはここからだ、と石神は気を引き締める。

「今の気持ちを持ち続けることが大事。連敗したことを糧にしないと意味がない」

 忘れられない悔しさが、ある。果たさなければならない使命が、ある。今季初の連敗を、シーズン唯一の連敗とするためにも、大分の選手たちは走り続ける。

(取材・文 河合拓)

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