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[ぎふ清流国体]計18人がキッカー務めたPK戦制す!兵庫県が30年ぶりの全国制覇王手!少年男子準決勝

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[10.3 岐阜国体少年男子準決勝 兵庫2-2(PK8-7)大阪 飛騨古川WB]

 兵庫県が30年ぶりの全国制覇に王手をかけた。第67回国民体育大会「ぎふ清流国体」サッカー競技少年男子の部は3日、準決勝を行い、関西勢対決となった兵庫県対大阪府戦は2-2でもつれ込んだPK戦の末、8-7で兵庫が勝利。兵庫は静岡県と同点優勝だった1982年大会(島根)以来、30年ぶりの優勝を懸けて決勝で福岡県と対戦する。

 9人目までもつれ込み、両チーム計18人がキッカーを務めたPK戦。兵庫の執念が大阪をわずかに上回った。PK戦は後攻・兵庫の3人目、FW中村菜月(神戸U-18、1年)の左足シュートを大阪GK齋藤和希(C大阪U-18、1年)が右へ跳んでストップ。だが大阪は4人目の右SB吉村弦(G大阪ユース、1年)が放った右足シュートがゴール左上へ外れてしまう。この後、ともに全キッカーが決めて迎えた9人目、先攻・大阪の左SB阿部勇輝(G大阪ユース、1年)の右足シュートを「逆に跳んでばかりで焦りましたけれど、最後止められてうれしかった」という兵庫GK吉丸絢梓(2年)が左へ跳んで左手ワンハンドでセーブ。直後、プレッシャーのかかるキックをCB棟久佳弘(1年)が冷静に左隅へ流し込むと、満面の笑顔で走りだした兵庫イレブンが吉丸と棟久の下へ駆け寄り、歓喜を爆発させた。

 死闘を制した兵庫の菊池彰人監督(ヴィッセル神戸U-18)は「選手が良くやってくれました。(控え)GK以外はみんな出ましたし、みんなで勝ち取った舞台」とホッとした表情で決勝進出を喜んだ。試合は両チームが高い攻撃力を活かして再三決定機をつくり出す、非常にスリリングな展開。先制したのは立ち上がり勢いのあった兵庫だった。前半6分、中盤でのボールの奪い合いをMF中井英人(神戸U-18、1年)が制すると、すぐさま右前方のFW藤本裕豪(神戸U-18、1年)へつなぐ。藤本がPAへ走りこんだ中井へ出したスルーパスは通らなかったが、こぼれ球を拾った藤本が「チャンスだと思って思い切り振りぬいた。無駄な力が抜けて打てた」とPA外側から右足を振りぬくと、抑えのきいた一撃はゴール左隅へ突き刺さるファインゴール。先制した後も主導権を握る兵庫はポゼッションからの分厚い攻撃でさらに2点目を狙っていく。

 ただ15分を過ぎると、前日千葉県とPK戦まで戦った影響か、兵庫の運動量が激減してしまう。大阪はFW平尾壮(G大阪ユース、1年)と阿部の左サイドがスピードに乗ったドリブルで再三兵庫DFを振り切って大きく前進。パスの精度も高く、テンポ良くボールを動かすと、MF嫁阪翔太(G大阪ユース、1年)やMF高田和弥(C大阪U-18、1年)らがフィニッシュにまで持ち込んでいく。得点には結びつかなかったものの、前半35分に嫁阪の展開から吉村が右クロスを放り込み、最後はMF山崎拓海(G大阪ユース、1年)がヘディングシュートを放つなど決定機をつくった。

 兵庫はエースFW表原玄太(神戸U-18、2年)や左サイドで存在感を放つMF米澤令衣(神戸U-18、1年)を軸に決定機をつくるものの、本来目指している形の多くの人数が関わる分厚い攻撃ではなく、2、3人の個の力によってDFを破ったもの。運動量が少なく、狙った攻撃のできない兵庫に対して、兵庫SB山口真司(1年)が「中盤の回しが上手くて、前半走らされてイライラした。(3-1で勝った)ミニ国体よりもいいチームになっていた」と評した大阪が試合を振り出しに戻す。15分、大阪は左サイドから仕掛けた平尾がPAでDFに足をかけられてPKを獲得。これをキッカーの山崎が左隅へ沈めて同点に追いついた。

 互いが高い技術を見せ合い、ミスも少ない好ゲーム。ともに正確な攻撃からPAまでボールを運んでくる展開の中で再び先手を取ったのは兵庫だった。29分、右サイドから崩して表原が放った決定的な右足シュートはGK齋藤に足で止められてしまったが34分、5人が絡んでのスーパーゴールで勝ち越しに成功する。兵庫は自陣の深い位置で相手ボールを奪ったCB加古晴也(1年)が楔に入った藤本に縦パスを入れると、藤本はダイレクトで右前方へはたく。これを拾った表原からMF高橋醇(1年)を経由して逆サイドへボールを動かすと、スペースを逃さずにドリブルで突いた山口がバイタルエリアに侵入してスルーパス。これに走りこんだ藤本が左足で劇的な勝ち越しゴールを叩き込んだ。
 
 直後に掲示されたロスタイムは2分。兵庫は選手交代を上手く使いながら時間を消していく。ロスタイムは表示の2分を超えて4分台に突入。誰も兵庫の勝利を確信しかけていたが、大阪はまだあきらめていなかった。右サイドでFKを獲得すると、兵庫のディフェンスが揃う前に吉村がクロスボールを放り込む。これを中央のFW妹尾直哉(C大阪U-18、1年)が右足ダイレクトボレーで合わせると、弾丸ライナーとなった一撃がゴール左隅へ突き刺さった。会場中から感嘆の声が上がった奇跡的なゴールで延長戦突入。表原が交代してしまっていた兵庫は攻め手が減り、厳しい状況へと追い込まれた。そして勝利目前で喫した失点のショックによる落胆の色も。それでも吉丸が「自分たちの失点はこれまでセットプレーだけ。流れの中で決められる感じはしない。もう失点はしないと思っていた」というように、延長戦の20分間、勢いに乗って襲いかかってきた大阪の攻撃をシャットアウトすると、PK戦で決勝進出の権利を獲得した。

 北海道との初戦、開催県の岐阜県との2回戦が1点差で千葉県との準々決勝、そしてこの日はPK戦勝利。兵庫は試合終了間際に隙を突かれて追いつかれるなど若さも見られ、個人戦術も向上の余地はまだまだあるが、それでも非常にまとまりが良く、たくましい戦いぶりで勝ち上がってきた。30年ぶりとなる優勝まであと1勝。単独優勝となれば史上初だ。吉丸は「絶対優勝して兵庫へ帰りたい」と意気込み、山口は「兵庫の歴史を変えたい」と誓った。PK戦のない決勝では70分間、最悪でも延長戦で試合を決めて単独で頂点に立つ。

[写真]PK戦を制して決勝進出を決めた兵庫イレブンが歓喜のダッシュ
(取材・文 吉田太郎)
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