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プレミアEAST覇者・東京Vユース、1年生9人先発の町田ユースに薄氷の勝利:東京クラブユースU-17選手権

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[2.3 東京都クラブユースU-17選手権2次予選リーグ 東京Vユース1-0町田ユース ヴェルディG]

 2012年度 第14回 東京都クラブユースサッカーU-17選手権大会2次予選リーグAブロック最終戦で東京ヴェルディユースと町田ゼルビアユースU-18が激突。MF澤井直人(2年)の決勝ゴールによって東京Vが1-0で勝った。予選リーグ3戦全勝の東京Vは2月10日の決勝でBブロック1位の横河武蔵野FCユースと対戦する。

 ともに新シーズン始まって公式戦3試合目。先週はFCトリプレッタ戦前日に市立船橋高(千葉)と練習試合を行い、今週も浦和ユース(埼玉)との練習試合4本を前日に行なうなど、体力的に厳しい状況の中で公式戦にトライしている東京V。試合前、冨樫剛一監督は今年もかなり強いという周囲の評判に対して「そんなことはないですよ。昨年の同じ時期と比べて考えるベースと基本技術が落ちる」と説明していたが、この日見せた顔は、前半と後半で全く別物だった。昨年6-1で快勝した相手に今回は1-0。町田・楠瀬直木監督が「ゼルビアはまだ全然トップオブトップじゃないので集中して、ひたむきに頑張るというチームスタイルにするしかない。それはよくやってくれていたかなと思います」と表現した町田の集中力の高い攻守と健闘によって、この日は現時点での課題が表面に出る結果となった。

 昨年プレミアリーグEASTを無敗で制した東京Vは、トップチーム合流中のFW高木大輔(2年)が不在でFW菅嶋弘希(2年)らも欠場。だが昨年からの主力である司令塔のMF山口陽一朗(2年)や新10番の右MF澤井、CB畠中槙之輔(2年)らが先発し、澤井やFW安在達弥(1年)のダイナミックなドリブルなど立ち上がりから町田ゴールへ襲い掛かってくる。2分に山口が左足ミドルを放つと、5分には澤井の右クロスに安在が飛び込み、6分には右クロスを山口が左足で合わせた。

 一方、町田は2年生がキャプテンマークを巻いたFW辻川樹と左SB中川颯樹の2人だけ。1年生9人が先発したが、ゴール前で守りを固めるのではなく、球際の厳しい、非常にアグレッシブな守りで対抗する。ドリブルで持ち込まれても最後まで食い下がり、強引に身体を相手の前にねじ込んで東京Vの攻撃をわずかに乱した。そして決して回数は多くなかったものの、攻撃では中央からのドリブル突破や好パスを連発するなど中盤でセンスの高いプレーを見せていたMF橋本拓哉(1年)や辻川、MF宮下峻輔(1年)を中心としたカウンターでチャンスをうかがう。だが、ボールを支配する東京Vは右DF小田島怜、左DF渡辺太貴(ともに1年)が再三PA付近まで攻め上がってくるなど、相手の厳しい守りを分厚い攻めでねじ伏せようとする。

 0-0で迎えた25分、東京Vは敵陣中央で相手のパスをインターセプトした澤井が、そのままスピードに乗ったドリブルでPAへ侵入。両側から町田DFが阻止しようとするが、背番号10は一瞬早く右足を振りぬき、先制点を叩きだした。東京Vは28分にもMF中野雅臣(1年)が左サイドから放った左足シュートがゴール右ポストを直撃。35分には中央のスペースを巧みに突いたMF三竿健斗(1年)のスルーパスによって中野がGKと1対1となる。だが町田は再三好守を見せていたGK朝日良(1年)がストップして追加点を許さない。

 全国トップクラスの強豪と渡り合っている自信か、時間が経過するに連れて町田には余裕が生まれてきていた。後半は、的確な対応を見せる石田仁志と宇田川輝(ともに1年)の両CBら守備陣が冷や汗をかかされるような場面は激減。また、相手の鋭いプレッシャーをDFが慌てることなく切り返しでかわすなど、落ち着いてボールをつないでいく。そして好守からショートカウンターでビッグチャンス。3分には攻撃参加した宇田川のスルーパスから辻川が決定的な右足シュートを放った。その後はゴール前で積極性を欠いてチャンスを逸する場面もあったが、高い位置でのインターセプトから相手ディフェンスラインのギャップを狙ったスルーパスや連動した崩しで東京Vにプレッシャーをかけていく。

 東京Vは澤井が「パス回しして、相手より動くというのが自分たちのサッカー。それが体力が低下して相手よりも動けなくなってしまって。ミスもあって、チャンスもつくれなかった。(運動量の低下が)苦しんだ原因ですね。今年では一番悪いですね」と振り返る内容。チーム全体の運動量が落ち、ビルドアップでのミスも増えた。ボールを失うことを嫌ってリスクの低いパスをつなぐことで、攻撃のリズムがまた悪くなった。28分には右サイドから山口の放った左足FKがクロスバーを直撃。29分には安在の右クロスに決定的な形で中野が飛び込んだが、これもゴールにつながらない。終盤はがむしゃらに攻めたが、最後まで追加点を奪うことはできなかった。対して交代出場の選手たちが動きまわる町田は後半37分に交代出場のFW齋藤信之(2年)のスルーパスからFW大谷昭太(1年)が決定的な右足シュート。だが、好セーブを連発した東京V・GK長谷川洸(2年)や「インターセプトとか縦のところは厳しく行ったつもりですし、そこのところを緩めたらダメだと思うので、真ん中のボランチとCBの4人はしっかり固めようと意識してやりました」と中盤、最終ラインで安定した守りを見せた三竿の好守の前に追いつくことができないまま試合終了を迎えてしまった。

 東京Vにとっては結果を残したものの、学ぶことの多かった一戦。冨樫監督は「去年も凄い差が他のチームとあったとは思わないです。ベースになるところで例えば走ることだとか、インサイドパスが15mブレなかったりだとかいうところで最終的なところで差が広がったと思う。今年はまだその部分で差を出しきれていない。(きょうは)局面で振り向く回数が極端に減って状況判断が悪くなった。体力の低下とともに思考も止まって、まだまだそういう部分で心の弱さも出てきちゃうし、体力面のベースが低いのかなと思う。鍛えている部分なので予測はあるんですけど、それ以上に悪いゲームになることも多いのでもう少し改善していきたい」と語った。まだシーズン本格開始前の段階。だが昨年逃した日本一、そしてひとりでも多くの選手がトップチームで羽ばたけるように妥協せずに課題を突き詰めていく。

(取材・文 吉田太郎)

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