[3.2 J1第1節 広島1-2浦和 Eスタ]

　これ以上の“お手本”はいなかった。今季、鹿島から浦和レッズに加入したFW興梠慎三。2月26日のACL広州恒大戦(0-3)は右太腿痛で欠場したが、この日、移籍後公式戦初出場初先発を飾った。

　ポジションは鹿島時代にもほとんど経験のない1トップ。新たな役割に順応しようと、キャンプから必死に取り組んできたが、この日の相手は、ペトロヴィッチ監督が2年前まで指揮していた広島。同じシステム、同じスタイルの相手の1トップを務めていたのが、昨季JリーグMVP&得点王のFW佐藤寿人だった。

「(佐藤)寿人さんがどう動き出しているかを確認しながら試合をやっていた」。試合後、そう明かした興梠は「寿人さんも去年、いっぱいゴールを取っているけど、試合をしながら見てみて、一つのチャンスをモノにするというか、そんなに多くのチャンスは来ない」と指摘。「僕も一つの場面で決められるようにがんばっていきたい。勉強になった試合だし、勝ち点3を取れたのはうれしい」と、あらためて1トップとしての“心得”を学んだようだ。

　ペトロヴィッチ監督はもちろん、チームメイトにもかつて広島でプレーしていたMF柏木陽介、DF槙野智章、DF森脇良太がいた。「広島でやっていた選手には、懸ける思いがあったと思う。勝利をプレゼントしたいとみんなで話していたし、プレゼントできてうれしい」。仲間を思って喜んだ興梠は「鹿島と対戦するときにお返しをもらいたいですね」と、自身の古巣との試合での“アシスト”を冗談交じりに期待していた。

(取材・文　西山紘平)