beacon

[選手権]修徳が根競べに勝つ!初出場の綾羽はFKに泣く

このエントリーをはてなブックマークに追加

[1.2 全国高校選手権2回戦 綾羽0-1修徳 駒沢]

 修徳(東京B)が試合終盤に得たFKから得点を挙げ、接戦を制した。今大会が初出場となる綾羽(滋賀)は、持ち前のハードワークで形を作る場面もあったが、一発に泣いた。修徳は1月3日の3回戦、駒沢陸上競技場で松商学園(長野)と対戦する。

「こういう試合展開になることは予想していた。綾羽は中盤のつぶしが早かった。うちもボールをつなぐチームではないし、なかなか前を向けなかった」と修徳の岩本慎二郎監督がいうとおり、お互いゴールが遠い拮抗した展開となった。

 選手の自主性に任せる綾羽は、一人ひとりがカバーしあう意識を高く見せ、ボールへの集散が早い。相手1人に対し、複数の人数で囲み修徳プレーヤーを自由にさせない。修徳の方針はシンプル。守備はセーフティーに、攻撃は前へ前へとボールを運ぶ。これを愚直なまでに貫く。前半はセカンドボールへの対応が早かったぶん、修徳がやや優勢な印象を残して折り返す。

 綾羽はこの日のスタメン平均身長が167.5センチと高いとは言えない。同じく修徳の平均身長は173.4センチ。綾羽の選手たちがハードワークを続けたことによる疲労、そして修徳が後半、風上にたつことを考えると、修徳のパワーがより際立つ展開が予想された。

 だが迎えた後半、綾羽はさらにギアを上げる。「後半に入って攻めている時間帯、ボールが地面を転がっている時間が長かった。地上戦でやりたい自分たちにとって、あの時間帯は自分たちのペースだった」とは綾羽の岸本幸二監督の言葉だ。

 綾羽のピッチサイドには監督でもなくコーチでもなく、赤のビブスを着た選手が立ってプレーをサポート。「31日の松商学園の試合を見ていた選手が『自分にもできることをやりたい』と言い出したんです」(岸本監督)。選手の自主性を前面に出す“ボトムアップ”型の方針は松商学園も敷いている。そのピッチサイドに選手が出ていたのを実際に見て、この試合で早速取り入れた。

 その効果もあったか、後半攻め込んだのは綾羽だった。特に右サイドのFW奥井良樹(3年)がサイドを突破。修徳サイドとしては、「14番の選手(奥井)がDFの背後を取りに来る。中盤から彼にボールを出させないように」(岩本監督)と注意していたポイントを抑えきれない。

 だが修徳も動じない。慌てず焦らず、耐えながら粛々と守備をしている印象だ。自分たちにできること以上のことはせず、きっちりとボールをタッチに蹴りだし相手の気勢をそらす。攻撃では後半からスピードのあるFW関秀太(3年)、後半30分からはFW雪江悠人(2年)とチームのオプションとなる選手を投入し打開をはかる。

 均衡し、我慢比べとなった試合展開。こういう場合、点が入るとしたら往々にして「ミスから」か「セットプレー」だ。この試合は後者だった。

 後半34分、修徳FW佐藤悠輝(3年)がドリブルで切れ込んだところを倒される。ペナルティエリア外やや左からの直接FK。これを「最初から狙おうと思っていた」MF田上真伍(3年)が、ゴール右隅へきれいな放物線を描くキックで入れる。「失点に関してはキッカーをほめるしかない。スピードもコースもよかった」と綾羽・岸本監督が脱帽すれば、「田上はいいプレスキックを持っている。にしても、あんないいキックは初めて見た」と修徳・岩本監督は苦笑いだ。結局この1点が決勝点となった。

「敗戦は私の責任。選手たちは胸を張ってほしい。全体的に粘るというスタイルは全国でもできた。そしてボトムアップという方針にして選手権出場という結果がひとつ、出ました。でもだからといって全てが正しいわけではない。この試合でメンバーに入った2年生13人がどう活かしてくれるか。そしてこの試合を戦った選手たちが5年後、どう話すのか」。岸本監督は“そこで真価が問われる”と言いたいのだろう。初出場が終着駅ではない。チームの成果はむしろ、今後の代、そして今度の選手たち自身の姿に出てくるはずだ。

 ともにタフなチーム同士の戦いだったこの試合。だがそのアプローチには、「自主性」と「愚直」という違いがあった。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 伊藤亮)

▼関連リンク
【特設】高校選手権2013

TOP