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高木大、南、安在が2得点!!チームが待ち望む、もう一人のストライカー

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[8.8 J2第28節 横浜FC1-6東京V ニッパツ]

 緑の若武者が躍動した。FW高木大輔、MF南秀仁、DF安在和樹がそれぞれ2得点の活躍をみせた東京ヴェルディは横浜FCに6-1で勝利し、4年ぶりの5連勝。J1昇格圏の2位・磐田へ勝ち点2差に迫った。下部組織出身の選手が活躍をみせるなか、チームが覚醒のときを待ち望んでいるストライカーがいる。20歳のFW菅嶋弘希だ。

 この日の東京Vは開始49秒に高木大が先制点。同24分にも南との連動した動きから自らのシュートのこぼれに反応し、2-0に離すゴールを決めた。FWとして初先発した北九州戦(1-0)から5戦5発の活躍で5連勝の立役者となっている。

 殊勲のFWは「自分がFWで出るようになってから5連勝。自分でも点を取りすぎなくらい。何が調子を良くしているのかわからないですけど」と笑う。

 5戦5発の高木に注目が集まるが、今の東京Vの主役は一人じゃない。今季から冨樫剛一監督に「責任ある立場になってもらわないと」と期待を込めての11番を与えられた南は、高木大のゴールもお膳立てすると、前半36分には高木大、MF杉本竜士と連動して自らゴール。高木大の右クロスから中央へ走り込んだ杉本がシュートを打つかに思われたが、スルー。ファーサイドへ詰めた南が滑り込みながら決めた。

「竜士が打つかなとも思ったし、打っても良かったけど。多分流れてくるだろうなと走っていたから」と振り返った南は「届かないなと思って足を出したら、届いてラッキー」とゴールを喜んだ。

後半31分にもゴールを決めた南は、今季通算9得点と自身初のシーズン二桁も見据えている。高校2年生時に決めたデビュー戦での初ゴールから、早くも6年の時が経った。22歳のMFが苦節のときを経て、高校時代の輝きを取り戻している。

 そして鮮やかなミドルを含む2発を決めたのは、試合前日の7日に21歳の誕生日を迎えたばかりの安在だ。後半40分、PA手前左でパスを受けると、狙い済まして相手の股間を抜き、再び迫ってきたDFをかわす。左足シュートはネットを揺らした。さらにアディショナルタイム2分にはPA手前から強い弾道のシュートを突き刺した。前線のメンバーに負けじと、リオ五輪も見据えるDFが存在感をみせた。

 そして今、チーム全員が覚醒を待っている選手がいる。ユース出身で年代別代表にも選ばれてきた経歴を誇る菅嶋だ。20歳のFWは2014年3月2日の松本戦でJ初出場すると、ここまで通算27試合に出場。しかし無得点が続いている。この日は後半12分から3試合ぶりのピッチへ送られると、必死にゴールを目指した。

 後半25分にはMF高木善朗のシュートにわずかに触れて、ネットを揺らす。ゴール裏へ走り込んで喜ぶも、オフサイドの判定。大きく感情を表すことの少ないFWだが、悔しさを隠さなかった。同31分には南のパスに反応。決死の表情で前へ走りこむと、ゴールラインぎりぎりで後ろへパス。これが南の2点目につながった。全身で味方のゴールを喜んだ。

 後半34分に44歳のMF永井秀樹が投入されてからは、さらにボールへ触れる機会が増えた。永井はボールを持てば菅嶋の位置を確認し、しつこいほどにパスをつける。そこには「点を取れよ」と強い意志が見て取れた。

 東京Vの冨樫監督は「菅嶋に点を取らせてやりたいという思いがみんなの中にあった。チームのためにやっているけれど、弘希は本当は自分で点が取りたいと思っているはず。なるべく長い時間、試合に出して、チャンスがつくれればと思ったので」と起用の理由を明かす。

「永井くんもいろんなものを押し殺して、弘希にパスを出したのに(笑) さっきもロッカールームで怒られていましたよ」と笑って話した指揮官は「そういうことができているのが、すごくいいなと思います」と『フォア・ザ・チーム』が徹底しているチームの雰囲気の良さに微笑みながら、「ここで弘希が点を取れば、もう一つ前に進めるかな」と期待を寄せた。

 次節の徳島戦は高木大が累積警告で出場停止。5連勝の立役者を欠くことになる。この1週間の練習次第では、菅嶋にチャンスが回ってくる可能性も高い。

「今までは下を見てサッカーをしていたけれど、上を見てサッカーをできている。喜びを感じてサッカーをできるのはいいことだと思う」とはチームのベテランMF中後雅喜の言葉。チームの勝利を胸に、菅嶋は上を向いてプレーを続ける。その先に必ずや初ゴールのときは待っている。

(取材・文 片岡涼)

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