beacon

公立の伝統校が私立勢の壁突破!浦和南が9年ぶりとなる全国へ!

このエントリーをはてなブックマークに追加

浦和南高が9年ぶりとなる全国へ

[6.23 総体埼玉県予選準決勝 浦和南高 1-0 立教新座高 埼玉スタジアム第2G]

 浦和南が9年ぶりに全国へ! 平成30年度全国高校総体「2018彩る感動 東海総体」サッカー競技(インターハイ、三重)埼玉県予選は23日、準決勝を行い、伝統校・浦和南高がMF狩集洸哉(3年)の決勝点によって、関東大会予選準優勝の立教新座高に1-0で勝利。9年ぶり12回目の全国大会出場を決めた浦和南は24日の決勝で昌平高と戦う。

 69年に史上初となる選手権、インターハイ、国体の高校3冠を達成している伝統校。選手として76年度の選手権優勝を経験している野崎正治監督の監督就任から6年目で、浦和南が全国舞台に“復帰”した。指揮官は「選手たちが良く頑張ってくれました。それだけですね」。雨が降る中、ピッチ、ベンチ、そして応援席の控え部員や応援に駆けつけた一般生徒たちが一丸になって掴んだ白星だった。

 試合は前半14分に浦和南が先制点を奪う。ゴール正面左寄りの位置でFKを獲得。これを「キックがあるから試合に出ているようなもの。キックはチームの中で一番自信がある。キックで結果出せなかったら出ていないのと一緒くらいな気持ちでやっている」という右SB田代幹人(3年)が右足を振り抜く。

 ボールはGKの手を弾いてクロスバーを直撃。ほぼ真下に落下したボールに「こぼれて来るといいなと思って信じて走り込みました」という狩集がDFよりも速く到達し、右足で先制点となるシュートを蹴り込んだ。

 だが、その後は初の全国出場を狙う立教新座が主導権を握る。MF中川大樹(2年)やMF小岩宥紀(3年)が左右にボールを動かし、SBの攻撃参加を交えて攻める立教新座は18分、MF渡邉佑(3年)がドリブルで中央突破。これをフォローしたMF新谷圭太(3年)の右足シュートがクロスバーを叩く。

 ボールを支配し、ハイサイドまで運んだ立教新座は小岩のロングスローやアーリークロス、CKからチャンス。そして後半開始から投入した10番FW稲垣輝一(3年)が推進力のあるドリブルで相手の守りを切り裂き、左足のプレースキックでゴールを狙う。

 浦和南は我慢の時間帯が続いたが、GK正野友稀(3年)が冷静なセービングでゴールを守る。また、CB相馬海音(3年)が迫力あるヘッドで相手の攻撃を跳ね返し、MF鹿又耕作(3年)が気迫十分の動きで相手の突破を次々と阻止。そして、FW佐藤智隆(2年)やゲーム主将のMF大坂悠力(3年)、MF中道麗心(2年)らが繰り出す前線からのプレッシングは、ボールを繋いで攻める立教新座に間を与えなかった。ボールホルダーとの距離を瞬時に詰めて足に当ててしまう浦和南の前に立教新座は攻撃が停滞。CB南口周矢(2年)を前線に上げて攻撃に高さを加えるが、それを活かしきれない。

 逆に浦和南は大坂やMF草野皓(3年)らがボールを保持して時間を進める。終盤へ向けて好プレーが続いた浦和南は、相手が前線やスペースに入れてくるボールを相馬や左SB大谷祐介(3年)、CB庄司千暁(2年)ら全員で跳ね返して試合終了。勝利の瞬間、伝統の赤いユニフォームが歓喜に舞った。

 埼玉は現在、私立全盛と言われるような時代。公立校の浦和南が対抗するのは簡単なことではない。決勝点を決めた狩集も守備の柱として奮闘した相馬も中体連出身で特別な実績の無かった選手たちだ。その選手たちが野崎監督から「オレが100回言うより、自分で1回動く方が良い」と自主性を求められ、試合、トレーニングで自分たちの意見を出し合いながら、地道に力を高めてきた。そして、「全員私立に負けたくないという気持ちでやっている」(大坂)という気持ちを表現した浦和南は今大会、私立勢4校を破って全国切符を勝ち取った。

 大坂は伝統を感じる部分について「声、気合。見てもらえれば分かると思うんですけれども、(ウォーミング)アップは凄いうるさいし、迫力ありますね」と説明する。先輩たちから受け継がれてきた姿勢、伝統の「赤」を大事にしながら、前に進んで一つ結果を残した。これから、野崎監督が「浦和南は強くないといけない。公立の雄でなければいけない」という姿へ。この日、控え部員たちが掲げた「新しい歴史を創ろうぜ」という横断幕の前で全国出場を喜んだ浦和南は、ここで満足することなく、プライドを持って24日の決勝、全国でも勝利を目指す。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2018

TOP