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全勝鳥栖U-18をストップ!! 2点差逆転の大宮ユースが「黒川くんたち」以来の4強へ

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勝利が決まって喜び合う大宮アルディージャユースの選手たち

[7.28 日本クラブユース選手権U-18大会準々決勝 大宮ユース 3-2 鳥栖U-18 前橋フA]

 第42回日本クラブユース選手権(U-18)大会は28日、準々決勝を前橋フットボールセンターで実施した。プレミアリーグEAST首位の鹿島ユースを破って勝ち残っていた大宮アルディージャユースは、ここまで今季公式戦全勝と破竹の勢いで進撃してきたサガン鳥栖U-18と対戦。早々に2点を奪われる苦しい展開となるも、粘り強い戦いぶりで3-2の逆転勝利を飾った。

「正直、嫌な感じは試合が始まる前というか、朝食のときからしていたんです」

 大宮・丹野友輔監督はそう振り返る。鹿島ユースという強敵を倒して突破したことに加え、もともと大会前に設定していた目標が「ベスト8」だったことも大きかった。

「何か達成感というか、そういう“空気”が漂ってしまっていた」。開始5分にして鳥栖MF山口隆希(3年)のクロスからオウンゴールで早くも失点を喫すると、13分にもMF兵働透生(3年)のシュートをGK村田耀(3年)が防いだこぼれ球をFW三好辰典(3年)に押し込まれてしまい、大敗の予感すら感じさせる最悪の流れにハマってしまった。

 ただ、丹野監督は2失点後の様子を観ながらポジティブな感触を得ていたという。「むしろ『まだひっくり返せそうだな』と思って観ていた」。以前は「失点すると、すぐにシュンとしてしまうチームだった」と言うが、大会直前のプリンスリーグ関東でも横浜FMユース相手にタフな逆転勝ちを見せるなど「確実に逞しくなってきていた」という手ごたえがあったからだ。

 それは選手たちも同じで、FW高田颯也(2年)は「前の自分たちだったら厳しかったと思うけれど、いまはリードされても焦らないでやれるようになっている」と振り返る。逆に鳥栖・金明輝監督はここからの時間帯を悔やんだ。「隙があったと言うしかない。まだまだ力不足なところが出てしまった」。

 崩れず持ちこたえた大宮は得意のポゼッションプレーから相手を動かして流れを引き寄せる時間帯も作り、34分にはCKからエースFW吉永昇偉(3年)がヘディングシュートを突き刺し、1点差に。

「0-2になってもいけると思っていたし、あの吉永選手のゴールで(精神的に)楽になった」(MF渡辺俊介、3年)大宮に対し、「(鳥栖は)ちょっと慌てているように見えた」(丹野監督)。4分後の38分、鳥栖守備陣のミスが重なる中で得たPKを吉永が再び突き刺して2-2の同点に追い付き、ハーフタイム直前で試合は振り出しに戻った。

 もっとも、今季公式戦全勝の鳥栖も、これで簡単に折れるようなチームではない。雨脚も弱まった後半は両者が積極的なプレーを見せ合う激しい攻防の連続となった。だが、後半9分に鳥栖にアクシデントが発生する。守備の中軸であるCB平瀬大(3年)が負傷交代を余儀なくされたのだ。

 左SBのDF野村佳楠(2年)がCBにスライドし、代わって左SBにDF中村斗輝(3年)が投入された。その後は両者ともに奮戦を見せたのだが、攻守の空中戦の要でもある平瀬の不在は小さからぬ影響があった。

 このあと鳥栖側が立て続けに攻撃のカードを切る中で、大宮が相手の隙を突く。後半22分、左サイドで高田が起点となって吉永へ預けると、吉永からゴール前で「どフリーだった」渡辺へ。「どのコースかは決め打ちで」と、堅実なシュートを選択したことが奏功し、見事にゴールネットが揺れる。「(自分のシュートより)チームとして良いゴールだった」(渡辺)という一発が試合の流れを決定付けた。

 鳥栖はこの失点時にDF久保勇晴(3年)が負傷してしまって交代を余儀なくされ、これでCBの2枚がどちらも負傷でいなくなるという非常事態に。ボランチのMF松岡大起(2年)を最終ラインへ下げて対応し、大きな破綻は起きなかったが、反撃の起点となるべき中盤の主軸を後ろに下げざるを得なかったこと自体がダメージだった。

 ここからはリスク覚悟で攻める鳥栖と、何とか逃げ切りたい大宮の戦い。少々強引に攻める鳥栖は後半34分にFW石井快征(3年)のパスから兵働が決定的なクロスを送り、交代出場のFW打越隼(3年)が合わせる決定機も、これは枠外。さらに37分にはロングスローと見せかけてのショートスローから、松岡のクロスに打越が頭で合わせるシーンもあったが、このシュートも枠外へ逸れていった。

 そして最後は鳥栖の迫力ある攻撃にもよく耐えた大宮に軍配が上がる。「ウチのDFたちは、去年『競り合いに弱い』と言われ、練習終わった後にヘディング練習をしてきたのも観てきていた。絶対に守り切ってくれると思っていた」(吉永)。

 3-2のスコアは動かず、試合終了。鳥栖に今季初めて土をつけた大宮が3年ぶりの4強進出。ここから狙うのは、「(3年前の)黒川淳史くん(現・水戸ホーリーホック)たちの代がした準優勝を超えること」(渡辺)となる。

(取材・文 川端暁彦)
●第42回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会特集ページ

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