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一度は折れかけた心…19歳安部を奮い立たせたファンの声と2年前の記憶

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最後まで走り抜いた鹿島MF安部裕葵

[12.19 クラブW杯準決勝 鹿島1-3R・マドリー アブダビ]

 一度は折れかけた心を立て直し、最後まで懸命に走った。レアル・マドリーに力の差を見せつけられての完敗。鹿島アントラーズのMF安部裕葵は試合後、溢れる感情を抑え切れず、ピッチ上で号泣した。

 序盤は鹿島のペースに見える時間帯もあった。それでも前半の30分過ぎにはいつもと明らかに違う疲労を感じていたという。「自分のコンディションは悪くなかったけど、息が上がっているのに気づいた。強度、パスのスピード、判断のスピードが速くて、その分、筋肉を使って、息をしていた。普通にやっているように見えて、いつもより強度が高かった」。時間が経つごとに強まるレアルの圧力。圧倒的な差を感じないわけにはいかなかった。

 前半終了間際に先制を許すと、後半立ち上がりにミスから追加点を許し、後半10分で0-3と点差を付けられた。「悔しいを超えて冷めた感じがあった」。試合中の心境を安部はそう打ち明ける。「相手の涼しそうな表情を見て、気持ちを折られるじゃないけど、自分たちと明らかに違うなと」。それでも、もう一度気持ちを奮い立たせることができたのは、ゴール裏から届いたサポーターの声援とともに、2年前の記憶が蘇ったからだった。

「0-3になっても僕の名前を呼んでくれているのは分かった。2年前、テレビで見ていたときにみんなが必死になって走っている姿が試合の途中で思い浮かんだ。自分も少しでもそういう姿を見せようと思った」。鹿島が延長戦の末、レアルに惜敗した2年前のクラブW杯決勝。当時まだ瀬戸内高3年だった安部は「高校の寮でみんなで見ていた」という。

「2年前、テレビで見ていて、僕はいろんなものを与えてもらった。高校生のときの僕みたいに(今回の試合を)見ている人にちょっとでもいいものを与えないといけないと思った。試合中にそういうことを考えるのは初めて。いつもは何も考えずにプレーしているけど、今日は初めて我に戻るじゃないけど、自分が2年前に見ていたものを思い出して、最後まで走ることができた」

 世界最高峰のレベルを肌で感じた19歳にとって、これ以上ない財産になったはず。それでも「悔しい思いをするのは好きじゃない。サッカー選手として必要かもしれないけど、僕は勝って成長したい」と、変わらない負けん気の強さを見せた。3日後の3位決定戦では南米王者のリバープレート(アルゼンチン)と対戦する。「これで3位決定戦を戦えないようなチームではビッグクラブになれない」。気落ちしている時間はない。悔し涙を出し切った安部は、もう前だけを見ていた。

(取材・文 西山紘平)

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