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「日本代表を目指したい」。プレー経験は実質1年のブラサカ日本代表GK佐々木の挑戦  

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佐々木智昭は大きな声で指示を出した

 ブラインドサッカーの日本代表合宿が12日、千葉県内でスタートした。GK佐々木智昭は11日に発表された日本代表強化指定選手に初選出。記念すべき初日を終えた佐々木はこう振り返る。

「このジャージーを着るのが今日が初めて。JAPANという文字を見て、今まで以上にもっともっとやらなきゃ、という自覚が芽生えました。代表に入ってきているのはGKの中で僕が一番遅いのでチャレンジャー精神で頑張りたい」

 小学校からGKだった佐々木は26歳までサッカー選手。中学では香川真司が所属したFCみやぎバルセロナ、高校2年から仙台育英高でプレー。東北学院大では2年から全国大会のピッチに立ち、大学卒業後は宮城県社会人リーグの塩釜FCヴィーゼと宮城サッカーの名門を渡り歩いた。

「大学では、流通経済大で関東選抜に選ばれた林彰洋福岡大で九州選抜に入っていた永井謙佑(ともにFC東京)と試合したことがあります。相手はのちにみんなJリーガーになるような選手ばかりでした」

 その後、フットサルのFリーグ・ヴォスクオーレ仙台で4年プレーしたが、「思い描くようにはいかなかった」。競技引退も考えていた2017年11月に知人の紹介で初めてブラサカの試合を観戦したことが転機となった。視覚障がいのある選手たちにGKが声で指示を出しながら背後から統制していく姿を見て、感銘を受けた。

「見えていないのに、サッカーやフットサルの選手と同じようなプレーをすることが衝撃でした。僕自身選手としてもっとうまくなりたかった。日本代表も目指したかったんです」。同年11月にチームを退団。その後、コルジャ仙台ブラインドサッカークラブに所属し、スポーツ用品メーカー「ファイテン」で働きながら本格的にブラサカのプレーをはじめた。昨年4月から毎月、日本代表候補合宿に呼ばれ、同6月の全日本選手権でコルジャ仙台の初の4強入りに貢献し、ベストGK賞も受賞。本格的にプレーをはじめてまだ1年だが、実力を見せてきた。

スローイングの練習を繰り返す

 12日の午後、ゴール裏に立って佐々木らGKの動きも見ていた高田敏志監督は「GKを本番で選べるのは2人。でも負傷があったときに3番手が重要で、1、2番手と同じ力がないといけない。フットサルの癖が抜けない動きもありますが、彼はサイズ(1m82)もあるし、そこはやりながら改善していければ」と今後の成長に期待を寄せる。

「選手たちに先手先手のコーチングをするためにも、ブラインドサッカーの戦術を早く完璧に覚えたい。みんなと違う特徴を持っていればチームにもプラスになると思っています。フットサルでは至近距離からのシュートストップが多かったので、そこで得た反射神経で勝負したい」

 東京五輪での日本代表入選出を目指し、まず最初の関門となるのは3月のワールドグランプリでの代表入り。1年前に行われた同大会の映像を毎日見て戦術の勉強を繰り返す。競技は若干違えど、かつては遠い存在だった林や永井と同じ日の丸の舞台に立つことは、決して夢物語ではない。

(取材・文 林健太郎)

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