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部室には代表復帰の先輩が記した「浦東魂ここにあり」の文字。関東予選準Vの浦和東はインハイ予選で激戦区・埼玉制覇へ

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浦和東高は14年以来となるインターハイ出場に挑戦する。

「浦東魂ここにあり」。令和元年度全国高校総体(インターハイ)「感動は無限大 南部九州総体2019」サッカー競技(沖縄)埼玉県予選の組み合わせが28日に決まった。加盟校が170を超える埼玉県は昨年まで2校が全国大会に出場していたが、インターハイの大会規模縮小のために今年から出場枠が1に。全国屈指の激戦区の戦いが6月8日から23日の決勝まで行われる。

 前回大会全国3位の昌平高と13年大会全国3位の正智深谷高が2回戦で激突する可能性がある組み合わせ。同ブロックは前回大会で全国復帰を果たした名門・浦和南高や、ともに全国出場10回の西武台高と市立浦和高、昨年県4強の立教新座高、浦和学院高などが集まる“死のブロック”となった。その他、今年の関東大会予選優勝校の武南高や同準優勝の浦和東高、昨年埼玉2冠の成徳深谷高、聖望学園高、埼玉栄高などが代表1枠を争う。

 公立校の浦和東は関東大会予選で花咲徳栄高、成徳深谷、正智深谷、西武台と私学勢を連破。決勝で武南に延長戦の末に敗れたが、躍進を遂げた。平尾信之監督は「ピッチの中でも、ピッチの外でも隙なく、マジメにやろうと言ってきました。自分たちが信じてやってきたことで結果が出たことで自信になったと思う」と分析する。

 チームの柱である186cmの大型CB松本ケンチザンガ(3年)とCB安食龍成(3年)は埼玉トップクラスのDFコンビ。また、関東大会予選では、計7本のPKを止めている2年生GK川村龍世の存在も大きかった。加えて、MF加藤清登(3年)が「学校生活でも細かいところに気づいたり。試合中でも誰かのマークが外れたことに気がついたらすぐ言って、ゴールカバーとか粘り強くやれたと思います」と説明したように、隙を見せず、MF仲野海斗(3年)とMF増田乃亜(3年)のダブルボランチなどがマジメに戦い抜いたことが個の強い私学勢撃破に繋がった。

 関東大会予選では左SB本間大翔(3年)のロングスローやMF伊藤大賀(3年)のプレースキックから2年生エースのFW古澤将吾や松本、大型DF池田晴紀(3年)が貴重なゴール。FW佐合陸哉(3年)のキープ力や、右SB吉田勇輝(3年)やMF坪内祐輔(3年)、MF大澤遥基(3年)のスピードも活きていた。同大会では堅守からセットプレーやカウンター中心の戦いだったが、平尾監督は同じ戦いではインターハイ予選や選手権予選を勝ち抜くことはできないと考えている。

 28日の練習でも崩しのバリエーション増加にチャレンジ。いざとなれば、ベースにある堅守速攻にいつでも戻ることができるだけに、関東大会を挟んでインターハイ予選まで意欲的に成長することを求めていく。主将のMF金子将也(3年)は「(平尾)監督から言われたのが相手を見て、蹴るサッカーもできるし、繋ぐサッカーもできる。それにどっちも対応できるチームになろうとしていて、人間的にも自分たちでミーティングしたり、日に日に成長している部分がある。強みにしてやっていきたい」と意気込んだ。

 OBの川島永嗣がキリンチャレンジカップ、コパ・アメリカで日本代表復帰。 川村が「(改めて)今までの経験だったり、日々のトレーニングに対する姿勢、そういうところはプロフェッショナルだなと凄く思いました」と語っていたが、川島の代表復帰に選手たちは新たなエネルギーを得ている。

 浦和東のサッカー部室の壁には、川島が高校を卒業する際に記された「浦東魂ここにあり 平成13年3月8日 川島永嗣」という文字が残されている。浦和東では練習開始、練習後にトップもサテライト(Bチーム)もユース(1年生チーム)も先輩たちが作り上げた伝統に感謝し、「浦東魂、ここにあり」と発しながら挨拶することが伝統行事。本間は「浦東魂、ここにあり。スイッチになります。(ピッチに入る前に)その言葉を発することで気持ちが切り替わります」とその言葉がオンオフの切り替えに繋がっていることを説明していた。「浦東魂」を持って日々の成長と勝利を目指す。

 古澤やMF佐藤翼丞(3年)が怪我から復調して迎えるインターハイ予選の目標は「優勝です」(金子)。平尾監督は「(春の段階では)浦和東はノーマークだったと思う。今回、少なからず浦和東のブロックに入りたくないなと思ってもらえれば成長したかなと思います」。より隙なく、より色々なサッカーに対応できるチームに。そして、より相手に嫌がられるチームになって、公立勢の浦和東は埼玉制覇に挑戦する。



(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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