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[MOM3038]佐野日大FW若月尋(3年)_ルーツは中学時代。“守備破壊”の圧巻ドリブルショー

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ダイナミックなドリブルで切り裂くFW若月尋(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.4 高校選手権栃木県予選準決勝 栃木0-2佐野日大 栃木グ]

 凄まじい破壊力のドリブルショーだった。FW若月尋(3年)がダイナミックなドリブルで何度も相手の守備組織を打ち破り、圧巻の輝きを放った。「相手がどうこうというより、自分のメンタルでミスする以外はボールを取られる気はしない」という煌めく武器を生かし、佐野日大高(栃木)に勝利を呼び込んだ。

 縦へ縦へと目の前のスペースを持ち上がれば、サイドから鋭くカットインしてエリア内に侵入。1対1では止められない推進力を示すと、終盤は3人に囲まれるシーンもあったが、顔を上げて難なくキープ。鮮やかなタッチで守備網を切り裂き、マークを引き連れる形でするすると前進した。試合が進むにつれ、その切れ味はどんどん鋭くなっていった。

 10月29日の2回戦・文星芸大附戦で右腿を打撲し、2日の準々決勝・真岡戦は欠場。この日はベンチスタートとなり、前半は後手を踏む戦況を見守った。0-0の後半開始からFW田中丈流(3年)とともにピッチに送り込まれると、2トップで流れを一変させた。

「セカンドボールを拾って自分が前を向くことで、流れはこっちに向くと思っていた」。その言葉通り、前線でボールをおさめて攻撃の起点となると、スピードに乗った切れ味抜群のドリブルでDFラインを押し下げ、完全に流れを引き寄せた。

 迎えた後半25分、チームはセットプレーから先制に成功。すると、1-0で迎えたアディショナルタイムにも見せ場が待っていた。「自分がドリブルをすると相手が中央に固まるのが見えていた」と冷静に判断。ドリブル突破で複数人を引き付けることでサイドにスペースを生み、2点目をもたらした。

 ボールを受けて縦に持ち上がると、FW清水丈(3年)が右サイドを上がるのを待ち、タメをつくって絶妙なタイミングでスルーパスを供給。「(田中)丈流はヘディングが強いので、中に入ったのを見てからサイドに散らした」。自身が起点になってサイドから崩す、狙い通りの形で田中のヘディング弾を演出した。

 そんな魅惑のドリブラーの源流は中学時代にあった。神奈川県出身の若月はFW小林悠(川崎F)、FW大前元紀(大宮)ら多くのJリーガーを輩出した町田JFCの出身。「パス練習もほとんどせず、ずっとドリブルをしていた」という“ドリブル軍団”で礎を築いた。現在も自らのドリブル映像を見て追究し、さらに磨きをかけている。

 親元を離れ、栃木県の強豪校のサッカー部に入部した。ドリブルという武器を提げて堅守速攻のチームに加わったが、1年生の頃は「うまくいかなかった」。それでも守備とハードワークを鍛え、佐野日大のスタイルに溶け込んでいく。2年生から徐々に出場機会をつかみ、チームカラーに持ち味を融合させた。

 佐野日大が選手権を沸かせたのは16年度大会。当時、中学3年生だった若月はスタジアムに足を運び、初のベスト4という歴史をつくった「偉大なる先輩」の活躍を目の当たりにした。選手権への憧れは強く、「いつか、ああいう舞台に立ちたいと思っていました」。

 先輩と同じ夢舞台に立つまで、あと一勝。9日に行われる決勝戦は3年連続で矢板中央と激突する。直近2大会は全国切符を譲ってきたが、ラストチャンスでライバルを打ち破り、全国で“桜色旋風”を再び。「チャンピオンに勝って出ることに価値がある」と気合十分なドリブラーが、3度目の正直で栃木制覇に挑む。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

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