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選手権は「優勝しないといけない」。選手主体・ボール繋ぐ流経大柏が明秀日立との練習試合勝利

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1本目3分、流通経済大柏高FW森山一斗が右足で先制ゴール

[7.19 練習試合 流通経済大柏高 4-0 明秀日立高 流通経済大柏高G]

 19日、関東の強豪2校、流通経済大柏高(千葉)と明秀日立高(茨城)が練習試合(40分×4本)を行った。A戦となった1、2本目は日本高校選抜GK松原颯汰(3年)の活躍と、エースFW森山一斗(3年)の2ゴールなどによって流経大柏が4-0で勝利している。

 18年度の選手権準優勝時も主力だったU-18日本代表MF藤井海和主将(3年)と松原、森山ら攻守に好選手を擁し、前評判の非常に高い流経大柏と、3年連続選手権出場中で全国8強も経験している新鋭・明秀日立の練習試合。流経大柏は今週まで学年ごとに活動しているため、期待の大型アタッカーFW川畑優翔やDF田口空我、MF渋谷諒太という2年生の主力候補、またCB森駿斗(3年)が不在だった。一方の明秀日立は怪我明けの大黒柱・CB石橋衡(3年)が欠場。それでも、一週間前から対外試合を再開している両校は、寄せと球際の激しい中でショートパスを繋ぎながら相手の守りを攻略することにチャレンジし、攻め合った。

 スコアは開始直後に動いた。右の清宮優希(3年)、左の田村陸(3年)の攻撃力高い両SBにも注目の流経大柏が、右サイドからの攻撃で先制点を奪う。1本目3分、MF坂田康太郎(3年)とのコンビネーションで右サイドを突いた清宮が中央へ折り返す。これを胸コントロールした森山が右足シュートを左隅へねじ込んだ。

 流経大柏は畳み掛けようとするが、明秀日立は踏ん張って反撃に転じる。ナショナルGKキャンプ参加歴を持つ194cmの大器、2年生GK谷口璃成からこの日存在感のある動きを見せていたアンカー・MF長谷川皓哉(2年)やMF中熊岳琉主将(3年)、MF中沢駿斗(2年)を経由して前線までボールを繋ぎ、突破力秀でたFW海老原拓弥(3年)らがシュートへ持ち込む。

 12分には中沢のスルーパスから海老原が抜け出して右足シュート。18分には高精度キッカー・右SB箕輪竜馬(3年)の左足FKがゴール右上隅を捉えた。だが、流経大柏はいずれもGK松原が阻止。この日、リスクを負ったパス回しに取り組んだ流経大柏は3度、4度とピンチを迎えていたが、そのたびに松原がビッグセーブを見せて明秀日立の前に立ちはだかった。

 また、流経大柏は抜群の運動量でピッチの至るところに現れていた藤井が、相手を3度追い、4度追いしたり、狙い澄ましたインターセプトを見せたりするなどチームを牽引。また、森山とのコンビで右サイドを破って決定機を作り出していた。

 1本目は全体的に攻撃のテンポが悪い印象だったものの、2本目は交代出場のMF並木爽(3年)や藤井、坂田、田村らが相手の動きを見ながら1タッチ、2タッチでボールを繋いでDFを振り回すような攻撃も見せた。ミドルレンジのパスをピタリと通すGK松原のフィード力も活用した戦い。榎本雅大新監督は公式戦の厳しい戦いになった際でも、狭い局面を通せるという自信と精度を植え付けたい考えだが、2本目は内容面、得点数も向上した。

 明秀日立は大型GK谷口が安定したクロス対応を見せるなど1点差で食らいついたものの、2本目開始直後の決定機を相手GK松原に阻止されるなど同点に追いつくことができない。逆に流経大柏は2本目13分、相手のバックパスを狙っていた森山がインターセプトから2点目のゴール。20分には交代出場のFW新宮海渡(3年)が右サイドから左足ミドルを決めた。

 明秀日立は32分に再び決定機を迎え、シュートのこぼれ球にFW柴田翔(3年)が飛び込む。だが、流経大柏はCB根本泰志(3年)ら複数の選手が身体を投げ出してゴールを死守する。そして33分、流経大柏は左サイドから強引に攻め上がったCB岩崎隆成(3年)がDFラインも突破して左足で4点目。互いに個の力も見られた戦いは、注目タレントたちの活躍もあって流経大柏が決め切る・守り切る部分で差を示し、4-0で制した。
 
 榎本新監督の下で新たなスタートを切った流経大柏は今年、主体性向上を目指す取り組みを行っている。新型コロナウイルス感染拡大による自粛期間から全体練習が再開した6月には、半月間、1~3年生を縦割りに8チーム形成して練習。そこでリーダーを務めた清宮や並木、MF井上翔太(3年)が「自信をつけてきました」(榎本監督)。また、学年ごとの練習に切り替えた7月には3年生チームからバディ制度を採用。2人1組(バディ)で練習後にパートナーの良かった点や悪かった点を指摘し合うなど、それぞれが責任のある立場として日常を過ごし、人間としての成長も見せているという。
 
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で思うようにサッカーをすることができなかったが、その期間で得たこともある。藤井は「みんながサッカーできるありがたみとか感じたと思うし、先週の試合(再開初戦)でもやることの喜びとか、感謝とか、みんなが感じて、人としても成長できる時間になっていると思う」と説明する。インターハイ、プレミアリーグが中止となり、本気で目指していた3冠を達成することはできないが、サッカーへの感謝の気持ちと主体性を持った選手たちはブレることなく選手権へ向かい、結果を勝ち取る。

 藤井は「優勝しないといけないと思っているので、自分たちが優勝したいと思います」。名将・本田裕一郎監督(現国士舘高テクニカルアドバイザー)がチームを離れ、周囲から注目される中での一年。人間的にも成長を見せるタレントたちが「選手主体」の新生・流経大柏の強さを見せつけ、選手権タイトルを奪い返す。

(取材・文 吉田太郎)
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