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横浜FC対鹿島の“疑惑ゴール”にJFA審判委員会が結論「ハンドとすべき」

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JFA審判委員会トップレフェリーグループマネジャーの扇谷健司氏(オンライン会議アプリ『Zoom』のスクリーンショット)

 日本サッカー協会(JFA)は3日、報道陣向けのレフェリーブリーフィングを開催し、J1第11節の横浜FC鹿島アントラーズ戦で物議を醸したゴール判定について説明した。元主審で現JFA審判委員会トップレフェリーグループマネジャーの扇谷健司氏が「ハンドとすべきだと考えている」と述べ、ゴールは認められるべきではなかったという見解を示した。

 物議を醸したのは前半25分に生まれた横浜FCの先制ゴール。左サイドからの折り返しをFW一美和成が収めようとするも、鹿島DF町田浩樹がブロックしたボールが一美の手に直撃。その後、こぼれたボールをMF松尾佑介がつなぎ、最後はFW皆川佑介が押し込んだ。直後、鹿島の選手たちは一美のハンドを主張し、上田益也主審に詰め寄っていたが、ゴールは認められた。





 ここで「ハンドがあったか、なかったか」を判断する争点は主に2つ。一美の行為が「手や腕を用いて意図的にボールに触れる」ものであったか(①)、あるいはこの事象が「偶発的であっても、ボールが自分や味方競技者の手や腕に触れた直後に相手競技者のゴールに得点するか、得点の機会を作り出す」ものであったかどうか(②)だ。いずれかの要件を満たす場合、ハンドが認められてノーゴールとなる。

 JFAが今回作成した資料によると、①の要件については「ボールは後方から来ており、横浜FCの9番(一美)も予期できないものなので、偶発的に当たったと考えることができる」と“意図”を否定。一方で②の要件については「ハンドが起こってからゴールまでにボールが動く距離も短く、ハンドのあと2人の選手が関わってはいるものの、ゴールまでの時間も短いため『直後』と考えることができる」とし、ハンドにあたると判断した。

 つまり、本来であれば横浜FCの得点は認められるべきでなかったということになる。

◆混乱の背景は…
 もっともJリーグファンの間では、すでに「ハンドなし」が正しい判定だったという見解が広く共有されていることだろう。Jリーグ公式チャンネルで公開されている「Jリーグジャッジリプレイ2020」の第14回放送で、東京都審判委員長が「直後というところの解釈が難しいところ。得点の場面では『直後』ではない」「2プレー後なので得点でも良いと考えている」と見解を述べていたためだ。
https://youtu.be/J74xamEM0ys

 この食い違いはなぜ起きているのか。混乱の背景には、近年立て続けに行われてきたルール改正の影響がある。

 世界中のサッカー大会は国際サッカー評議会(IFAB)が制定する統一ルールである「競技規則」(英語では“Law of the Game”)をもとに運営されているが、IFABは2019年春、19-20シーズンに向けてハンドに関する大幅なルール改正を行った。「手や腕から相手チームのゴールに直接得点する」という事象に関し、無条件でハンドの反則を取ることで、「手や腕を用いて得点することは受け入れられない」というサッカーの競技理念を強調した形だ。

 またこれに加えて、手や腕にボールが触れた後に得点や、得点の機会が生まれた場合に関してもハンドの反則が取られる形となった。この「触れた後」にまつわる変更点が今回の混乱につながった主な要因だ。競技規則の文言は以下のとおりとなっている。

<2019-20シーズン競技規則>
ボールが手や腕に触れた後にボールを保持して、またはコントロールして、次のことを行う。
・相手競技者のゴールに得点する。
・得点の機会を作り出す。

 ところが新ルールが国内外で大きな混乱をもたらした。手や腕にボールが当たった後、どの程度の時間的・距離的を経た場合にハンドでなくなるのかが明確でなかったためだ。その結果、IFABが想定していたよりも広い範囲で「後」の文言が解釈され、ゴールからはるか遠い場所で行われた行為でも得点が取り消される事象が多発。これを重く見たIFABは今年春、再度ルール改正に踏み切った。

<2020-21シーズン競技規則>
偶発的であっても、ボールが自分や味方競技者の手や腕に触れた直後に
・相手競技者のゴールに得点する。
・得点の機会を作り出す。

 競技規則の本文上では「ボールを保持して、またはコントロールして、次のことを行う」という文言が削除され、「後」を「直後」(原文ではimmediatelyという文言が追加)に変更。さらにIFABは解説文を添えている。それが次の2点だ。

<ハンド反則の解釈の明確化>
・ボールが偶発的に攻撃側競技者の手や腕に触れた後、ボールが他の攻撃側競技者にわたり、直後に攻撃側チームが得点をした場合は、ハンドの反則となる。
・ボールが偶発的に攻撃側競技者の手や腕に触れ、得点や得点の機会を得る前に、(パスやドリブルで)ボールがある程度の距離を移動した場合、またはいくつかのパスが交換された場合は、反則とならない。

 ここでの要点は「ボールがある程度の距離を移動した場合、またはいくつかのパスが交換された場合は、反則とならない」という文言だ。これにより、ゴールから遠く離れた場所で偶発的に手や腕にボールが当たったとしても、無条件にハンドが取られることはなくなった。

 もっとも、新たなルールにおいても具体的に「何メートルボールが動いたか」「何秒経過したか」が定められているわけではなく、依然としてグレーゾーンは存在する。すなわち、審判員の中でも意見が食い違っているのはある意味で仕方がない。むしろ、今回JFAが一定の見解を示したことで、これが今後の基準として確立されることが期待される。

◆JFA扇谷氏の見解は…
 扇谷氏はレフェリーブリーフィングの場で「実際には2人のプレーヤーがボールに触れている。移動したのは5mほど。約4秒間の間に5m移動して、ハンドの後に得点が生まれた」と状況を描写し、「競技規則上、正確に何秒、何メートルとは記載されていない」としつつ次のように見解を示した。

「われわれとしてはゴール前でこのようなことが起こったこと。短い距離の中でゴールが入ったことを考えると、ハンドと考えないと難しい状況が生まれてくる。ゴールに近いところで手に当たったものが得点になってしまうというのは、サッカーというスポーツの中ではなかなか受け入れられないものではないかと思う」。

 その一方で「レフェリーにとってもこの改正は難しいもの」と述べ、競技規則上の“グレーゾーン”と肉眼であらゆる事象をチェックすることの難しさに理解を求めた。

「この場面でレフェリーはディフェンスのハンドを見に行く。DFの手に当たればPKの決断をしないといけないわけなので、なかなかFWのハンドには目が行かない。レフェリーは今までそうしたものを中心にペナルティエリア内のジャッジをしてきた。ただ、今回の改正でFWのハンドで得点が生まれた場合にもハンドとなる。ここの見極めも意識を変えないとだいぶ難しいものだと認識を持っている。ゴールに近づくとDFのハンドに目が行くのが審判員の習性だが、意識を変えていかないといけないと痛感している」。

 また審判員の中でも意見が食い違っていることにも言及し、「白と黒とが分かれるジャッジばかりではないが、いろんな見解が述べられることは日本だけでなく世界でも起きる。われわれとしてはこのほうが好ましいということを伝えさせていただく」と説明。「いろんな意見があるという認識はしているが、その中でJFA審判委員会としてどういうふうに考えていくかとなるとやはりハンドになる」と結論づけた。

(取材・文 竹内達也)
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