beacon

森保監督に見せたい成長…“理想的ゴール”で勢いに乗るMF川辺がA代表初合流「ベストなタイミングで選ばれた」

このエントリーをはてなブックマークに追加

日本代表初招集のMF川辺駿(広島)は前日に「飛び出し」から今季初ゴール

 かつてプロの世界の厳しさを突きつけられた恩師と、日本代表での再会を果たした。初招集のMF川辺駿(広島)は合流から一夜明けた22日のオンライン取材で「成長したからこそいまの自分がある」と自身の歩みを語った。

 広島ユース出身の川辺は2013年、高校3年生への進級とともにプロ契約。当時の指揮官がいまの日本代表を率いる森保一監督だった。

 川辺は同年3月30日、J1第4節・清水戦でJ1リーグデビューを果たすなど、早い段階から出場機会を得ていた。だが、序盤戦の出場はこの1試合のみ。その後はU-19日本代表の活動に招集されていたこともあり、半年ぶり復帰となった8月24日のJ1第22節・大分戦で45分間、第23節・甲府戦で54分間プレーしたのみで、徐々に出場機会を失っていった。

 高校を卒業して迎えた翌14年も状況は変わらず、J1リーグ戦でのプレータイムは2試合111分。前年までの2連覇から一転、中位で苦しむチームを助けることができなかった。そして15年からは当時もJ2在籍だったジュビロ磐田に期限付き移籍。3年間にわたって名波浩監督のもとで武者修行に励むことになった。

 川辺にとって、この挫折経験が大きな転機になった。合宿初回の取材対応を担当した川辺はこの日、冒頭で次のように語った。

「広島で森保さんが監督でトップに上げてもらったが、チャンスがもらえた中でうまく活かせず、自分の力が足りなかった。試合にもどんどん出られなくなっていったので、自分は環境を変えないといけないと思ってジュビロに行った。ジュビロで名波さんと一緒にやって成長できたし、それを広島でも続けてできたことがA代表につながった」。

 特に成長を実感しているのは、守備の意識だという。

「ジュビロにレンタルする前は守備の意識が相当薄かったし、攻撃に常に頭にいっていた。名波さんをはじめ、いろんな人に鍛えていただいたし、広島に帰ってきてからも意識していた。城福さんのもとでもまずは守備をしないと試合に出られないという約束事があるので、ウィークポイントをうまくストロングポイントに変えられたことが良かったと思う。バランスを考えながらやってきたことが成長につながった」。

 そうして掴んだ代表初招集。その成長を恩師に見せるチャンスがやってきた。川辺がこだわるのは「闘う」という気持ちの部分。その重要性は広島ユースで叩き込まれたものでもあり、代表チームを外から見ていて感じていたものでもある。

「代表に選ばれている選手、代表で試合に出ている選手を見ると、まずは闘うところが一番重要になる。それは代表じゃなくても重要だけど、より大事になってくる部分だし、自分もそこは成長した部分だと思っている。練習からしっかりアピールしないといけないけど、まずは自分の特長というより、ベースの闘う部分を出さないといけない」。

 とくに今回の活動では国際親善試合とはいえ、積年のライバル・韓国代表との一戦を控える。世代別代表での国際試合経験が豊富な川辺は「バトルの部分がより激しくなる相手だと思うし、そういう部分で負けたら試合に負けると言っても過言ではないくらいの戦いになる。相手の得意な部分で負けないことが結果を左右する」と熱く意気込みを語った。

 もっとも「闘う」ことだけが求められるのであれば、川辺以外にもふさわしい選手は多くいる。森保監督は代表監督就任以来、口癖のように「チームのコンセプトの中で、一人一人が持つスペシャルな武器を出してほしい」と語ってきたが、日本代表に定着するためには“川辺駿らしさ”も出していく必要がある。

 そうした要求は川辺自身も織り込み済みだ。「闘うという部分をベースにしつつ、僕の特長である飛び出し、前に出ていく姿勢を評価してもらって選ばれていると思うので、試合に出るからには特長を出したい。他の選手を見ても3列目からの飛び出しは自分にしかないものだと思っているので、しっかりアピールしたい」と闘志を燃やした。

 前日21日にはJ1第6節大分戦では、まさに「前に出ていく姿勢」が活きた理想的な形で今季初ゴールを奪っていた川辺。「自分の中では(代表に初招集されるまで)時間がかかったなと思っているけど、自分の中ではベストなタイミングで選ばれたと思っている。やってきたことを出すだけ」。勢いに乗っている25歳、A代表デビューの準備は万端だ。

(取材・文 竹内達也)
●カタールW杯アジア2次予選特集ページ

TOP