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[MOM3443]市立船橋FW松井達誠(3年)_走って、走って、貴重なゴール。ダイナモ系ストライカーの意地と矜持

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市立船橋高のFW松井達誠はピッチを走り続ける

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.2 プレミアリーグEAST第5節 横浜FMユース 1-2 市立船橋 保土ヶ谷]

 試合後に指揮官が語った言葉が、この日のパフォーマンスを何よりもよく現している。「決して上手い選手ではないので、泥臭く前から追い掛けてやるというのが彼の持ち味だと思いますし、それがしっかりと発揮できて、なおかつ点数も獲れて、凄く良い出来だったのではないかなと思います」。走って、走って、プレミア初ゴール。市立船橋高(千葉)のダイナモ系ストライカー、FW松井達誠(3年=アーセナルSS市川U-15出身)のプレーには、見る者の心に訴えかける何かがある。

 前半の一連に心残りがあった。4試合を終えて白星がなく、初勝利を目指して臨んだ横浜F・マリノスユース(神奈川)との一戦は、MF郡司璃来(1年)のゴールで11分に市立船橋が先制。さらに、33分には松井に決定的なチャンスが訪れる。武藤の完璧なパスにフリーで抜け出すも、「コースを狙い過ぎました」というシュートは弱く、相手GKが難なくキャッチ。絶好の追加点機を逃してしまう。

 後半は劣勢を強いられるが、「プレッシャーを掛けることと、前での運動量は自分のストロングポイントにしていかないといけない所なので、そこは外せないです」と自ら語る松井は、必死にピッチを駆け回り、味方を助け、相手を苦しめていく。

 40分。キャプテンのDF小笠原広将(3年)が懸命に蹴り出したクリアへ走ると、処理に手間取った相手選手からボールをかっさらい、そのままドリブル開始。40メートル近く運ぶと、「前半に1本外していて、あそこで決めないとチームに迷惑を掛けちゃうかなと思って、『ここは振り抜こう』と思って蹴りました」と右足でシュート。相手DFに当たった軌道は、GKの頭上をゆっくりと破り、ゴールの中へ飛び込んでいく。

「もう打って、当たって、結構高く上がって『ああ!』と思ったんですけど、入ってくれたので本当に嬉しかったです。Aチームの公式戦初ゴールだったので、もう頭が真っ白で。あそこで相手に当たったのは、運も良かったと思います」。85分間走り続けてきたご褒美のような、何とも泥臭いゴールには指揮官も「苦しい状況での得点で、なおかつあれだけ頑張っていた松井が獲ってくれたので、良かったなと思います」と称賛。フォワードとしての意地が、ゴールとチームの今季リーグ戦初勝利を力強く引き寄せた。

 もともと守備は苦手。前線で待って、ボールが来たら走るという選手だったと過去の自分を振り返るが、名門での立ち位置が意識を大きく変えるきっかけとなった。「2年生の新チームぐらいでトップチームに上がった時に、自分は足元の技術はそんなにないので、『ボールを待っているだけでは、他の選手からポジションを奪えないな』と思って、まずはがむしゃらに頑張る所を意識してやっていたら、走れるようになってきて、求められているプレーもちょっとずつわかってきて、今では走る所をストロングにしてやっています」。

 好きな選手は岡崎慎司とジェイミー・バーディー。「献身性があって、運動量もあって、走って、裏にも抜けられて、自分もこういうプレーをしなくてはいけないなと思って、見たりしています」。かつてレスターで2トップを組んだ両者を参考に、チームの中での立場を確立すべく、ピッチを走り続けていくつもりだ。

「チームとしては選手権、インターハイ、プレミアで全国制覇を目標にしていて、個人としては試合に出続けて、点を決めて、チームを勝たせられればいいなと思っています」。この日のように、走って、走って、ゴールを決める。シンプルでいて、誰もが真似できる訳ではないスタイルを、松井はこれから極めていく。

(取材・文 土屋雅史)
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