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3年前の“幻の初陣”を振り返った森保監督「北海道の地で祈りを捧げたい」

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2018年9月7日、紅白戦を行った日本代表森保一監督

 日本代表森保一監督が2日、U-24日本代表とのチャリティーマッチ(3日・札幌ド)の前日オンライン会見に出席し、3年前に同じ札幌で行われるはずだった“幻の初陣”を振り返った。

「長くなってもいいですか」。

 異例の対戦カードとなったチャリティーマッチの前日会見。冒頭で試合に臨む意気込みを問われた指揮官は自ら切り出した。

「過去を振り返ると、2018年9月に私の代表監督としての初戦となるチリ戦が行われる予定だったんですが、胆振東部地震で試合ができなくなりました」。

 2018年9月7日、五輪代表と兼任する形でA代表の指揮官に就任した森保監督は札幌ドームでキリンチャレンジカップのチリ戦を戦う予定だった。ところが前日6日未明、最大震度7を記録する北海道胆振東部地震が発生。大規模な土砂崩れがあった厚真町などで43人の死者が出たほか、札幌市でも震度5強〜6が観測され、電気やガス、水道などのライフラインがストップする被害もあった。

 それでも代表チームが宿泊するホテルは自家発電装置があったため、電気はすぐに回復。市街地では食料の流通が止まる混乱も見られたが、選手たちは食事を取ることもでき、試合開催予定日の7日には札幌市内で紅白戦を実施できた。その後、日本代表は大阪入りし、キリンチャレンジカップ・コスタリカ戦(○3-0)で4日遅れの初陣を飾った。

 そして2021年6月2日、オンラインでの記者会見に出席した森保監督は、当時サポートしてくれた人々への感謝を語った。

「地震があった当日から停電があったり、生活のインフラが止まってしまったりという環境の中で、われわれはホテルの中で何も不自由なく過ごさせてもらった。われわれが泊まったホテルは自家発電で電気を使わせていただき、ご飯も食べさせてもらって、生活に不自由するようなことはなく、手厚くサポートしてくれた。練習もさせてもらったし、地震後のホテルの従業員さん、北海道FAの皆さん、北海道民の皆さんに手厚くサポートしていただいたのが心に残っている」。

「またあらためて試合をする機会が札幌であれば、戻ってきてお礼や感謝を伝えたいと思っていた。サッカーを通じて恩返しができればと思っていた。地震があって、従業員の皆さんも、北海道FAも家族を心配しないといけないところだが、不安な顔は一切なくサポートしていただいたことを覚えている」。

 日本代表は今回、3年ぶりに札幌へと戻ってきたが、予定されていたキリンチャレンジカップ・ジャマイカ戦はまたしても開催できなかった。今度は世界中を襲った新型コロナウイルスの影響で渡航制限が敷かれている中、相手チームの出発前検査に不備があったことによるまさかの試合中止だった。

 それでも指揮官は中止決定を受け、自身が兼任監督を務めるU-24日本代表とのチャリティーマッチを開催することを提案。北海道での試合を行うことに決めた。この一戦では、3年前の出来事にも思いを馳せながら戦うつもりだという。

「多くの犠牲者の方も出たので、ここで改めて北海道の地でご冥福をお祈りしたい。被災した方々の傷はまだ癒えていないと思うので、札幌で祈りを捧げたいと思います」。

 そう語った森保監督は「いろんな地方都市で試合をさせてもらいながら、その土地で何が起きているのかを考える機会にさせていただいている。その土地で励ましのメッセージを受け取ってもらえるようにしていきたい」と心境を吐露。「手厚くサポートしていただいた2018年の北海道胆振東部地震で亡くなられた方に、北海道の地で祈りを捧げたい。心が傷ついている方々、暮らしが戻っていない方の生活が早く元通りになるようこの地で祈りを捧げる機会にしたい」と意気込みを語った。

(取材・文 竹内達也)
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