beacon

欧州では満員サポから大声援も…村井チェアマン「日本ではなかなか受け入れられるものではない」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)と日本野球機構(NPB)がつくる『新型コロナウイルス対策連絡会議』は23日、第37回会議をオンラインで開いた。東京五輪の閉幕後、初めての開催。終了後のメディアブリーフィングでは、専門家から「バブルと検査体制の充実が極めて重要だと実証された」(愛知医科大の三鴨廣繁教授)との振り返りがあった。

 Jリーグとプロ野球では昨年の公式戦再開以降、リーグ公式の定期検査を導入しているほか、外国籍選手の入国や国際試合のたびにバブル方式(関係者が一定期間にわたって外部と接しない隔離措置を取ること)を採用中。こうした取り組みが五輪にも活かされ、効果が認められた形だ。

 東邦大の舘田一博教授は「NPB、Jリーグの経験、知見がしっかり生かされて安全な五輪ができた。NPBもJリーグも大変な中でスタートしたが、そうした感染対策の文化がスポーツ界にも定着し始めているのは非常に大事な進歩だと思う」と手応えを語った。

 その一方、国内外では感染力の強いデルタ株の流行が進んでおり、対策のアップデートも迫られている。

 三鴨教授は「未曾有の危機、災害級の感染症に瀕している中、興行スポーツをやっていくことが重要。五輪はコロナはわれわれの心を分断した。五輪は心を一つにしてくれた。プロスポーツが心を一つにする契機になればと思っている」と競技の継続には理解を示しつつ、①検査頻度と②濃厚接触者のリストアップという2点について新たな提言を行った。

 まずは①検査頻度について。たとえばJリーグは現在、試合にエントリーする選手・スタッフを対象に2週間に一度の公式検査を実施。加えて陽性者や濃厚接触者が出た場合には、試合前に行う簡易的なオンサイト検査もたびたび実施している。それでもデルタ株に対しては、さらに検査頻度を上げていくことが重要になるという。

 三鴨教授は「基本的に五輪の経験が非常に重要だと思っている。五輪ではいわゆるバブルをしっかり作ること、検査体制をしっかり組むことが重要だった。喫緊の課題なので時間はない。いまの検査体制はかなりしっかりしているが、たとえば頻度はプロ野球とJリーグでほぼ決まっている。この頻度の見直しをまずは考えてほしいと申し上げた。頻度の見直しは今すぐにでもできること」と述べた。

 さらに②濃厚接触者のリストアップについては、現状保健所の調査に遅れが出ており、NPBやJリーグが独自で行っている状況。その際には保健所同様に「症状が出てから2日前」以降の行動を濃厚接触者の特定対象としているが、これを「症状が出てから3日前」にするよう提案した。「専門家チームでゲノム解析をしているが、3日前にするとかなり拾っていけて感染を防げるというデータも出ている」ことが根拠だという。

 こうした議論を受けて、Jリーグの村井満チェアマンも今後の方針を語った。

「今の状況では緊急事態宣言とまん防が29都道府県で出ていて、全国に感染拡大がある状況。Jリーグが57クラブが40都道府県に存在するので中央政府に何か方針を仰ぐというより、都道府県に感染状況や世論や、スポーツの価値観など多様なので、各都道府県と連携を取りながら進めていくことが軸になっていくと考えている。

 一つの考え方として、全てを行政や政府に依存するというより、より自主基準でたとえば発症前3日間を濃厚接触にするといったわれわれの独自基準を定めながら、政府に依存するというより自立した独自基準の色を強めていくだろうと考えている。

われわれはこれまでも自己責任の感覚を強く打ち出している。選手登録が13人用意できなければ0-3の敗退になるというのは、誰の責任でもなく自己責任で運用している証左。独自で何ができるかという自立したスタンスを持ちながら、地方行政と連携していくことが軸になると考えている」。

 村井チェアマンは合わせて、観客収容の見通しにも言及した。Jリーグでは現在、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の対象区域で上限5,000人(もしくは入場可能数の50%の少ないほう)、それ以外の地域では入場可能数の50%という制限を実施中。一方で欧州各国リーグではすでに制限が撤廃されたプレミアリーグを筆頭に、満員となったサポーターから大声援が送られる光景が見られるなど、緩和路線に舵が切られつつある。

 だが、村井チェアマンは慎重な構えを見せる。連絡会議ではEURO2020関連の感染状況も共有されたといい、「こうした状況が真実とすれば日本の中ではなかなか受け入れられるものではないだろうと思うし、一緒に歩みながらつくっているファン・サポーターの価値観とも随分違うという認識を持っている」と指摘。「欧州では感染状況はあるが、ワクチン接種が進んで重症化が少なくなり死亡率が減っているからお客さんを入れるという社会的コンセンサスがあると思う。日本はワクチン接種がオンゴーイングで、感染状況はヨーロッパに比べて今後を見通す時期にあるので、ヨーロッパが満員だからフルハウスでいくという認識までは日本はまだきていないと考えている」と述べた。

 それでも政府に対してはこれまでどおり、より科学的で実態に合ったガイドライン策定を求めていく方針だ。「一律5000人以下という基準は、現実にコントロールしていくために政府サイドもこれくらい抽象度を上げていかないと運用に乗らないということだろうと思うが、われわれサイドから見ると日産スタジアムで5000人となると93%くらいが空いている。J2基準の10,000人のスタジアムなら50%となる。人数基準にいかに根拠がなく、フェアではないかは自明の状況。われわれは一定の人と人との距離が空く収容率というところが重要な考え方ではないかとはずっと政府にも重ねて伝えているが、今後も丁寧に話し合いながら、実態として意味のある観戦キャパで運用していきたいと考えている」と話した。

(取材・文 竹内達也)
★日程や順位表、得点ランキングをチェック!!
●2021シーズンJリーグ特集ページ
●“初月無料”DAZNならJ1、J2、J3全試合をライブ配信!!

TOP