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中学時代から夢見てきた『100回大会』。市立船橋FW青垣翔は憧れの舞台で主役の座をさらう

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コンバートされたばかりの前線で躍動する市立船橋高FW青垣翔

[10.30 選手権千葉県予選準々決勝 習志野高 0-1 市立船橋高]

 自覚は出てきた。このチームのフォワードを任される意味も、少しずつ理解し始めている。すべてはあの時、心に決めた舞台で活躍するために。

「自分は『選手権が100回大会だったら絶対に活躍したいな』と思ったので、今になって出場機会がちょっとずつ増えてきていますし、もっと結果を残して、チームの勝利に貢献できるような選手になれたらいいなと思います」。市立船橋高で定位置を確保しつつあるニューカマー。FW青垣翔(2年=VIVAIO舩橋SC出身)は以前から、“100回大会”で主役をさらう自分の姿をイメージしてきた。

 見慣れない13番が名門の最前線を託されている。ただ、強い。ボールを収め、ボールを運ぶ。「前半はちょっとうまく収められなくて、あまり良くないなと思っていたんですけど、後半はタイミングよく裏に抜けたり、前で基点になるプレーもできていたので、そこにもっと磨きを掛けて、もっと良いパフォーマンスができたらいいなと思います」。そう自己分析を口にした青垣は、確かな存在感を放ち続ける。

 聞けばフォワードへとコンバートされたのはごく最近のこと。それでも高いポテンシャルは隠しようがない。「プレミアはここまで1試合だけ、開幕のFC東京(U-18)戦だけちょっと出ました。まずポジションが定まっていなくて、そもそも去年まではバックだったんです。FC東京戦は途中からウイングで出たんですけど、ウイングもやりながらのサイドバックみたいな感じでした。でも、1,2か月ぐらい前からフォワードをやるようになって、少しずつ自分の持ち味のドリブルを出せたり、最近は走って裏とかも抜けられるようになってきて、うまくフォワードにコンバートしてもらった感じです」。

 コンバートを決断した波多秀吾監督は「もともとパワーとフィジカル面で良さはあって、ヴィヴァイオさんから来たので足元も上手でした。ただ、その使い方や判断が悪かったり、いまひとつ本気になり切れない、ハードワークし切れない部分があったんですけれども、ここ最近はコンスタントに頑張り始めて、それこそ自分で取り組みを変えてきたところがあったので、前回の初戦でも起用して、チャンスもものにしていますし、点数も獲れているので、今日もその勢いのままやってもらおうとスタートに選びました」と、この日もスタメンとして青垣をピッチへ送り出す。

 後半3分。その13番が大きな仕事を果たす。「「最初はライン間で受けてからと思ったんですけど、スピードを持ってドリブルしてきたので、裏に抜けた方が良いなと思って走りました」。2トップでコンビを組むFW郡司璃来(1年)が巧みなドリブルからスルーパスを送ると、良いタイミングで走った青垣はペナルティエリア内でGKと接触。市立船橋にPKが与えられる。

「本当はワンタッチでシュートが打てればよかったんですけど、相手も寄せてきたので、かわそうと思ったらGKが足に来て、うまくPKをもらえたという感じです。『よし!』と思いました」。先輩のMF武藤寛(3年)が冷静に成功させたPKによる1点が、そのまま決勝点。青垣の積極性がチームに大きな勝利を呼び込む一因となった。

 その事実を知った時は、まだ中学生だったという。「自分は中学生の頃に、全国大会がそろそろ100回だということに気付いたんです。テレビで『第90何回高校選手権』とか言うじゃないですか。それで、『100回っていつだろう?』と思った時に、『ああ、自分が高2の時だ』って。ちょっと弱気なところもあって『高1で試合に出るのは難しいだろうな』と思ったんですけど(笑)、『高2では絶対出たいな』と思ってきました」。想定通り。2年生の高校選手権予選から、出場機会を掴み始めている。

 夢見てきた大舞台に辿り着くためには、あと2勝。自分にできることを、丁寧に、全力で。「前で収めるプレーは最近の自分の持ち味になってきているので、あとは自分が持っているドリブルとか、相手をかわす技術をもっと見せられたらと思いますし、得点力も次回に向けて改善したいなと思います」。

 千葉の名門に出現した、フォワードになりたての13番。青垣は目標に定めてきた“100回大会の主役”をさらっていくイメージを、以前よりはっきりと膨らませつつある。

(取材・文 土屋雅史)

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