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[MOM3639]帝京五MF長谷川大珠(3年)_競技生活は高校まで。横浜から愛媛を選んだ主将が覚悟の逆転2G1A

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帝京五高を選んだMF長谷川大珠主将(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.3 高校選手権愛媛県予選準決勝 済美高 1-5 帝京五高 北条球技]

 覚悟を持って四国・愛媛の新興校・帝京五高を選んだMF長谷川大珠主将(3年)が2ゴール1アシストの大活躍を見せ、悲願の全国初出場まであと1勝に導いた。試合後には「決勝で勝つか負けるかで今後の人生も変わってくる」と力を込め、10日後に控える決戦に目を向けた。

 全国出場経験を持つ済美高との県予選準決勝、帝京五は苦しい立ち上がりを迎えていた。前半6分、相手の素早いカウンターから右サイドを崩されると、最終ラインがボールウォッチャーになったことでクロスを押し込まれて失点。準々決勝の松山工高戦に続き、ビハインドからのスタートとなった。

 それでもチームは崩れなかった。準々決勝の松山工戦でも2点ビハインドから延長戦の末に逆転勝利。「インターハイでも失点した後にガクンと落ちてしまったので、失点した後の改善の仕方をみんなで意識していた」(長谷川)。夏の反省を活かし、選手たちはすぐに集まって問題点を確認。ゲームプランにあったパワフルなロングボール攻勢で反撃に出た。

 そんな猛攻を牽引したのが主将の長谷川だった。「準々決勝で僕自身は何もできなかったので、キャプテンとして責任を感じていた。今回は結果を残しに行こうと思っていた」。まずは前半27分、ペナルティエリア内で巧みなボールコントロールを見せ、相手のファウルを誘発。ここで得たPKを見事に沈め、同点に追いついた。

「僕が蹴るのは決まっていて、心の準備ができていたので落ち着いて蹴ることができた」。主将がもたらした同点ゴールにリズムを取り戻したチームは前半31分、MF武田健汰(2年)の完璧なボレーシュートで逆転。「帝京はビハインドでも1点取ればいい波に乗れる」(長谷川)という勢いを見せつけた。

 さらに前半37分には、右サイドで武田が得たFKを長谷川がゴール前に送り込むと、MF梅澤玄季(2年)がダイビングヘッド。「CKもほとんどの選手はふんわりしたボールが主流だけど、速いボールを蹴るのが得意なので、GKが出ようとしても出られない、出てもキャッチできないようなボールを狙っている。そういうボールをFKでも蹴れて、いい形で決めてくれた」(長谷川)。3-1でハーフタイムに持ち込んだ。

 後半も「始まる時から次に点を取れば決まるぞと話していた。守備に引いてもしょうがないし、帝京は取れるだけ取りに行くスタンスなので」と勢いを失わず、15分にはセットプレーの波状攻撃から4点目。そして同16分には相手の落胆につけ込み、敵陣でボールを奪った長谷川がミドルレンジからスペシャルなミドルシュートを突き刺した。

「左ハーフになってからずっと練習していた形だったのでやっと結果が出て安心している」。高校入学後は昨季までボランチを担っていたが、選手権直前に任された左サイドハーフのポジション。「チームとしても僕にシュートを打たせて決めさせようというのが戦術としてある」という武器を準決勝という大舞台で見事に披露してみせた。

 終わってみれば長谷川は2ゴール1アシストで3得点に絡む大活躍。全国未経験の帝京五を6年ぶり2度目の決勝舞台に導いた。

 神奈川県横浜市からスカウトの誘いで越境入学してきた長谷川にとって、全国大会は悲願の夢舞台。親元を遠く離れてまで選んだ愛媛の地で、必ず成し遂げると誓った目標でもある。

「来るかどうかは迷ったけど、もともと神奈川の高校に行くというのをそんなに望んでいなくて、県外に行きたいという思いがあった。監督が厳しいと聞いたのと、いままで一度も全国に出ていないというのを聞いて、自分たちの代で出られたらいいなというのを目標に来た」。

 中学時代はエスペランサSC、横浜GSFCでプレー。首都圏の高校に入るという選択肢もあったが、あえてこの場所を選んできたのだ。

「前橋育英とか帝京第三とか桐生第一とかいろいろ行ったけど、大人数というのもあったし、どこもすでに全国に絡むチームだったので、それだと出ても当たり前という感じになる。環境的にも大洲は田舎で、親元からも遠いし、自分を厳しい場に置いて全国に出るほうが価値があるのかなと思ってこっちに来た」。

 全国大会に出れば、神奈川の仲間たちとも再会できる。また前橋育英高でV・ファーレン長崎加入が内定しているMF笠柳翼は小学時代のチームメート。「全国の舞台で対戦したい」という野望もある。

 その夢を叶えるためには、是が非でも成し遂げたいあと一勝だ。

 長谷川はスポーツ専門のアスレティックトレーナーになるため、大学進学後はサッカー競技の第一線から退く予定。「だからこそ絶対に勝ちたい」。そう意気込む主将は、メンバーの大半を占める首都圏からやってきた仲間の思いも胸に「勝つか負けるかで今後の人生も変わってくると思うので、決勝までの期間チームで話し合って、チーム一丸となって戦っていきたい」と決意を語った。

(取材・文 竹内達也)
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